鯖棒亭日乗(下)

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2020年 奈良・京都の旅 03

2020年奈良と京都の旅03

 

唐招提寺をあとにした俺はバスに乗り近鉄奈良駅で下車した

商店街を歩きながら土産物屋を冷やかす

和菓子などちょいとつまみたいものだが

今回の旅は予算的な余裕が無い

かなり細かく予算配分をした

その上で予算が余れば3日目に散財予定

ぼちぼちと歩きながらホテルを目指す

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ちょうどチェックインの時間だ

初日のホテルはホテルフジタ奈良

以前にも二度ほど宿泊したことがある

その時は夜もここで食べたのだが

今回は素泊まり

そこはやはり予算的なこと

ホテル内のレストランはコスパのいい店ではあるが

やはり最低3500円からとなってしまう

コースとなると5000円程度

プラス酒代

「無理だな」

なので今回は外へ食べに出ることにした

奈良は日が暮れると一瞬にして観光客がいなくなる

みんなホテルに戻るわけでは無い

みんな他県へと移動してしまうのである

そのために人気店でも夜なら空いている可能性は高い

そこで俺は考えた

「今回は釜飯だな」

部屋に入る

俺は部屋に入ると服を脱ぐ

暖房の温度を上げて上下ヒートテック姿になる

これでリラックスできる

どうせ部屋に誰かくるわけでも無いしな

1時間半ほど休憩をする

早速iPadを取り出し無料Wi-Fiを繋ぐ

おめあての店「志津香」を検索

メニューを見る

「さてどうするか?」

「定食もいいが・・・」

この店は注文を受けてから炊き上げてくれる

つまり時間がかかるということ

その間に一品つまんで酒だな

俺は一品料理をチェックする

「つまみはそうだな・・・」

大和肉鶏の天ぷらもいいが

「ここは・・焼き鳥だな」

明日天ぷらそばを食べるかもしれないし天ぷら被りは胃に優しくない

一品料理は焼き鳥に決定

次は釜飯メニュー

単品でも味噌汁と漬物はついてくる

定食になると焚き合わせ、フルーツがプラス

「フルーツはいらないし」

「焚き合わせは食べたいが・・」

俺の夕食の予算は酒も含めて3000円

単品で既に900円の出費

となると釜飯は単品だな

単品でもウナギ、カキは予算オーバー

一番人気は奈良七種釜飯

海老、カニ穴子、若鶏、ごぼう、人参、竹の子、椎茸、三つ葉

まさにアベンジャーズ

これが1250円とコスパ抜群

それでも100円、200円が命取りとなる今回の旅

そんな俺の目に飛び込んできた文字が

「お店のイチオシ」

つまり店が一番食べて欲しいと思っている自信作

そしてこの釜飯を食べることで通ぶれるという特典付き

あえてコスパの良い一番人気でないメニューを頼む行為

「決まりだな」

それが「山菜風しめじ釜飯」1050円

しめじ、こんにゃく、薄揚げ、若鶏、ごぼう、人参、竹の子、三つ葉

「基本だな」

しかも最安値の1050円

メインの釜飯も決定

残るは酒である

日本酒のメニューを見る

春鹿」の文字が飛び混んでくる

噂では聞いている

決定

春鹿 超辛口 純米酒」大900円

これで予算内に収まる

正式には消費税の中から135円オーバー

消費増税が痛い

 

 

ホテルで5時半まで過ごした俺は部屋を出る決断を下す

店の場所は東大寺の近く

のんびり歩いて6時少し前に到着

そこで数分待って入店

注文してから炊きあがりまでに最低30分かな

そんな計算で5時半となった

実際に釜飯を食べるのは6時半だな

俺はフロントに鍵を預けて部屋を出た

外は既に暗い

昼間はあれだけ外人がウロウロしてたのに人がいない

鹿もすでに帰宅した

人も鹿もいない真っ暗な道を歩いていく

鹿の糞を踏まないように願いながら

俺は何回も来てるのでこの辺りの道は知り尽くしているが

やはり真っ暗だと雰囲気が違う

前から若い女の子が一人歩いてくる

女の子だと恐怖を感じるかもしれないな

時間はまだ6時前なのに

車もそこそこのスピードで真っ暗な道を走り抜ける

雨降りなら跳ね飛ばされてもおかしくはない

奈良市も夜に宿泊して欲しいのならこの辺り改善したほうが良いのでは?

さすがに暗すぎる

 

ほとんどの店はしまっている

その中で一軒だけ明かりがついている

到着

釜飯「志津香」

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ちゃんと営業中だ

 

店の中に入る

待ち客はいないが「少しお待ちくださいと」

どうやら今すれ違った人のテーブルを片付けてる最中

1分ほどで案内される

店は満員

隣のおばさん二人組など食べ終わってるのに延々と喋ってる

俺は注文した

あらかじめ決めてあったメニュー

 

焼き鳥

しめじ釜飯単品

春鹿

 

「完璧だな」

なかなか常連ぽいセレクト

俺は自己満足した

 

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春鹿 超辛口 純米酒

 

俺は一口飲んでみた

「おおお、うまいぞコレ」

超辛口と名乗ってるのが気にはなっていたが

ちゃんとまろやかな香りと旨味がある酒だ

俺が今まで飲んできた超辛口の酒が不味いってことなんだろうな

ちゃんと醸せば美味いのだ

で、超辛口らしくキレも抜群

そして純米酒

やはり米は美味い

「全てのバランスが抜群なんだよな」

「このままでは焼き鳥が来る前に呑んじゃうぞ」

俺は我慢した

耐えに耐えた

暴発しないように

正直この酒を呑むために奈良に来ても良いぐらいだな

 

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焼き鳥 900円

大和肉鷄と名乗ってないだけに多分若鶏

値段的にもそうだろうな

想像以上にボリュームがある

そして野菜の付け合わせが嬉しい

旅に出て外食ばかりだとどうしても野菜が不足してしまう

俺はまず嫌いなトマトから食べた

そんなトマト嫌いな俺でも美味しいと思うトマト

最近のトマトは美味い

要するに給食に出てたトマトが不味かっただけなんだよな

それで俺はすっかりトマト嫌いになった

野菜を平らげ体への糖の吸収も抑えた俺

「準備万端」

俺は春鹿を一口含み口の中に基礎を作る

そして焼き鳥だ

一個一個が大きいが丸ごと口の中に放り込む

「こんな大きいのお口の中に入らなぁ〜い」

などと心の中でつぶやく

焼き鳥は非常に濃い味付けだ

しかしその味にも負けないぐらいに鳥の旨味もある

弾力も良い

「美味いなコレ」

そして春鹿

「ちゃんと受け止めてくれるよ」

これもまた若林くんだな

決してペナルティエリア外からのシュートは決めさせない

がっちりキャッチ

 

ダメだ・・・

酒が酒がススム君

俺はすっかり命のありがたみを忘れて焼き鳥に酔いしれた

まだまだ煩悩全開だ

でも幸せだな

気がつくと他の客がどんどん店を出て行く

一気にガラガラ

どうやら公園店はラストオーダーが19時

炊きあがりまで時間がかかるのもあるが

この日は6時入店の俺が最後の客になりそうだな

そしてまだ隣のおばさん二人組はお茶をお代わりしながら喋り続けている

一体何をそんなに喋ることがあるのか?

聞いていると大抵は誰かの悪口なんだよな

 

 さぁ釜飯の登場だ

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しめじ釜飯 単品1050円

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蓋を開ける

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お店推奨の食べ方の通りにまずは真ん中の部分を少し茶碗によそい

しゃもじを取り出し直ぐに蓋をした

こうすることでおこげが美味くなるという

「もう少し蒸らせ」ってことだな

その前に一口

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俺は茶碗の中の一番釜飯を食べた

アッツアツ

「フーフーフーフー」

そして口の中へ

「な、な、な、なんて優しい・・・」

すかさず春鹿

「うわぁすごいよ」

こんな優しい味でも若林君だよ

これ超辛口だからだろうな

決して辛いだけじゃなく旨味のある酒だからこそできる芸当なんだろうな

それにしても・・・

「正解だな。しめじで正解だ」

しめじこそが一番釜飯の旨味がわかる気がする

関西らしく薄味なんだがちゃんと良い出汁が効いてるからこそのしめじ

動物系の旨味では出汁に若干勝ち過ぎる感があるかもしれない

でもそこはメニューに名を連ねるだけに美味いのは美味いのだろう

ただ俺が住んでる地域の人には勧められないな

多分「薄い」と文句言って醤油をかけまわす

味の好みは地域によって様々だけど

旅した時ぐらいはその土地土地の味を楽しめよといつも思う

なんせあの人たちは素材の味を殺すぐらい勢いのある調味料の味が大好きだからな

そんな俺も大人になりようやく関西の味に馴染んだわけだし

 

さぁ蒸し加減も良い塩梅になったところで

本格的なディナーの始まりだ

 

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よく撹拌してと

やはりさっきより旨味が増したな

でも京都の割烹でも一切蒸らさない状態でご飯出す店があったよな

味の違いを楽しむのもまた面白い

どうやら出汁のベースは昆布と鶏ガラ

京都中華もこの組み合わせ

俺も家でよくこの組み合わせで優しい味の焼きそばを作る

「でも幸せだなぁ」

こんなに美味いのに客は俺と食べ終わってるおばさん二人組だけ

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おこげ

 

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釜飯の〆といえば「おこげ」

良い塩梅に焦げてるよ

これのために春鹿も残しておいた

俺はおこげを食べた

「香ばしくてパリパリもちもちで最高だな」

これにだし汁かけても美味いだろうなぁ

刻んだ奈良漬けトッピングでサラサラと行きたいな

 

そして最後の春鹿を呑み干す

 

「嗚呼、うまい」

 

まさに〆だな

これ以上何もいらない

目の前に揉み放題のおっぱいがあっても拒否するぐらい完璧だな

 

「ごちそうさまでした」

 

 

 

 俺は会計を済ませて店を出た

外を歩くものは誰もいない

時間は夜7時

結局おばさん二人組は俺が店を出る直前まで喋り続けていた

少なくとも食べ終わってから1時間おばさんたちは喋り続けていた

「すごいな」

俺は感心した

さすがにあんな図々しいことはできない

 

奈良公園の横を歩く

地下道に入る

聞こえてくるのは外人の言葉ばかり

ちょっとドキドキ

やはり女性には奈良の夜は怖いだろうな

車はそこそこ走ってるが奈良公園に連れ込まれるだけで車からは見えなくなる

 

帰り道いろんな店を見るとどの店も営業中なのに客がいない

流石にこれでは入りにくさ100パーセント

おしゃれな店ほど薄暗いしな

結局客が入ってる店は全国チェーンの店ばかりだった

 

途中でコンビニによる

キリンラガーを購入

ホテルへ戻る

ビール飲みながら明日の計画の再確認

ホテルではフロントの人以外顔を合わせていない

誰かが廊下を歩く気配もないしドアの開閉の音もしない

「もしかしてこのホテル俺だけ?」

なんて気がしてくる

やたら静かすぎると逆に怖いな

 

そして俺は眠りについた

 

午後9時のことだった

 

 

04へ続く