鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

2020年 奈良・京都の旅 02

2020年奈良、京都の旅02

 

今回のテーマ「初奈良、初京都」

まずは唐招提寺からである

近鉄奈良駅のバス乗り場から唐招提寺へと向かった俺

間違えて北口で降りてしまったのはご愛嬌

しかしこの唐招提寺

帰りのバス停は北口からしか乗れないのである

なのであらかじめ帰りのバス停チェックしておいたと思えば今回のミスは相殺される

とは言ってもこのままでは同じバスに乗ってた人から

「あのおっさん降りるバス停を間違えた人だぜ」

なんて思われかねないので風景を楽しむふりで鉢合わせしないように時間稼ぎをする俺である

f:id:sababou:20200108141743j:plain

田園地帯に突如と広がる森

あの場所こそが俺が目指す場所、初めて訪れる場所

唐招提寺

話せば長くなるが簡潔に話すと

聖武天皇のラブコールを受けて日本を目指した鑑真さん

唐の高僧である

彼は何度も日本を目指したが当時の船旅は非常に危険な旅

半分以上の人が命を落とすような旅である

彼も何回も何回も渡航を失敗する

その数5回

そして彼は視力までも失ってしまう

それでも日本を目指してくれた鑑真さん

全ては仏教のため

日本のためである

そのおかげで仏教国となった日本人は人への思いやりの心を手に入れた

 

当時日本には正式な僧侶が存在していなかった

いわゆる「自称僧侶」

正式な僧侶になるためには授戒を受ける必要がある

しかしその授戒を授けることができる高僧が日本にはいなかったのだ

そのために聖武天皇からの熱烈なラブコールを受け鑑真さんは視力を失いながらも日本にきてくれたのだ

俺はこの話を小学生の時に知り

「な、なんて素晴らしいお坊さんなんだ」と非常に感心したのを覚えているがクラスの中では鑑真とガンジーの区別が付いてない人も多かった

ようやく来日した鑑真さん

日本に戒律を持ち込んだ人

「戒律」

自分で自分に誓うのが「戒」

集団内での規則的なことが「律」

合わせて「戒律」

「私は規則を守ります」宣言だな

甲子園での宣誓みたいなものかな

子供の頃によく真似をした

授業中に立ち上がり手を挙げる

「宣誓!おしっこ」

これでクラスは大爆笑

先生は大激怒

ちなみに授戒とは一切関係ない

授戒とはつまりこの戒律を守る宣言をするための儀式

そしてこの儀式を行うには「戒壇」と呼ばれる場所が必要

鑑真さんはまず東大寺大仏殿に戒壇を作った

これにより日本でも授戒が行われ正式な僧侶が誕生したのだ

のちに東大寺では戒壇堂を建立

今では俺が参拝前に御朱印帳を差し出さなかったばかりにネチネチと嫌味を言われた場所である

ちなみに御朱印は参拝後に頂くのが正式な作法である

つまり俺の方が正しいのだ

 

そんな鑑真さんが建立した唐招提寺

半世紀近く生きてきてようやく俺は訪れることができたのである

f:id:sababou:20200108144554j:plain

唐招提寺の前にはこんな素敵な自転車道がある

「いつか走ってみたいな」

ロードだと早すぎるのでママチャリがいいな

f:id:sababou:20200108144723j:plain

門前には食事もできる土産店が

f:id:sababou:20200108144752j:plain

ちゃんと監視カメラ付き

でもその割には商品にはかなりの埃が・・・

最近売れた形跡は無い

 

f:id:sababou:20200108144920j:plain

ちなみにここから薬師寺まで歩いて行ける距離

薬師寺もまだ訪れてない場所

当初は今回の旅で唐招提寺と絡める予定だったが

検討に検討を重ねた結果

時間と予算の都合上割愛させて頂くことにした

薬師寺の拝観料が俺には高すぎた・・・

でも同時に回られる人がほとんどだろう

 

f:id:sababou:20200108145236j:plain

これが唐招提寺の門

南大門になるのかな

結構交通量があるので注意しないと轢き殺される

あんなに苦労して鑑真さんが来日

そして正式な坊さんを誕生させてくれたのに

今では戒律は守られていない場合が多い

神道を推奨する明治政府の陰謀により

坊さん、妻帯OK、子作りOK

焼肉でビールを飲み日本酒を飲む

車は高級車

時計は金無垢ロレックス

堕落する仏教

仏教に対する不信感

今では駅で自殺した人の遺体をスマホで撮影しまくるほど日本人はモラルを無くした

f:id:sababou:20200108145343j:plain

 

南大門を入ると目の前に現れる国宝「金堂」

いわゆる本堂

お寺では基本的にまず本堂でお参りをする

俺は本堂へ向かった

お賽銭専用ガマグチからお賽銭を取り出し

仏たちに感謝の気持ちを伝え

世界平和を願った

奇しくも数日前からアメリカとイランの対立が激化

中国とロシアはイラン指示

シンゾーは立場上何も言えない

世界中で第3次世界大戦が噂される中

日本ではムックに興味津々でネットの話題トップに

平和ボケした日本人

平和な宗教「仏教」

こんなところでのみかろうじて仏教的精神は残されているのかも知れない

何事も「問答で解決」できると

 

 

f:id:sababou:20200108150820j:plain金堂のご本尊は「盧遮那仏」

あの東大寺の大仏と同じ仏様で「盧遮那仏」「毘盧遮那仏」と呼ばれる

これらは各宗派によって名称が異なるみたいだが同じ仏様である

仏の中の仏

キングオブホトケ

あのお釈迦様を超えた存在「宇宙仏」

宇宙の真理を全ての人に照らすことから空海さん率いる密教真言宗」では大日如来と同一として考えられてるそうだ

これはある意味「天照大神」にも通じるな

ちなみに天平時代の脱乾漆像である

確か麻を貼り漆をぬりぬり

それを何層にも重ねるんだったかな?

とにかく手間とお金がかかる

なので平安時代以降はほとんど作られていないとか

現存してる仏像も他には東大寺法華堂や興福寺などわずかである

当然この盧遮那仏も国宝だ

 

中央の盧遮那仏の両脇には大きな仏が

向かって左にはひときわ大きく目立つ「十一面千手観音」これもまた国宝

とにかく「圧倒」される

身長5・36メートルとかなりの高身長

他の千手観音は手の数が省略さており前方で組んだ2本の手以外は一本あたり25本相当となるがここの十一面千手観音さんは小さな手が無数にあり実際に当時1000本あったのでは?と言われている

ちなみに現存してる手は953本だ

向かって右には「薬師如来

立っておられるので薬師如来立像だな

当然これも国宝

身長3・36メートル

ちなみに薬師如来さんは昔のお医者さんみたいな存在

見分け方として左手に小さな壺を持っている

これが「薬壺」

この中にありとあらゆる病気を治すお薬が入っているのである

しかし唐招提寺のお薬師さんは薬壺を持たれていない

これは古いタイプだという

おそらく薬などに頼らなくても直せちゃうんだろうな

普段は東方浄土にお住まいだ

 

で、この3人がメインとなる三尊

その護衛として4人いる

持国天増長天広目天多聞天

いわゆる四天王

当然この方達も国宝

それぞれ護衛を担当する方角が違う

東の持国天

南の増長天

西の広目天

北の多聞天

 

さらにお二人

本来は盧遮那仏の脇侍

「脇侍」近年では「with B」と称した方がわかりやすい

メインとなる人の両脇に従えてる人たちだな

このお二人が梵天帝釈天

あの寅さんでも有名な帝釈天

名前に「天」とつく人はもともとインドの神様

そんな中でも帝釈天は最強

あの阿修羅さえも倒してしまうほど強い

阿修羅には美しい娘がおり

「いずれは帝釈天の嫁に・・・」と常日頃から考えていたのだが

そんなこととは露知らず帝釈天は阿修羅の娘を誘拐してレイプ

激怒した阿修羅は帝釈天と戦いを繰り広げることに

この戦いの中で帝釈天は蟻を踏みつぶさないようにしたとかのエピソードが有名だが

俺は正直なところ帝釈天を見るたびに良い人なのか悪い人なのか分からなくなる

まぁレイプされた阿修羅の娘は後に正式な帝釈天の嫁となるのではあるが

普段帝釈天は須弥山と呼ばれる甘露の雨が降り注ぐ山にお住まい

なので仏教で天国と聞くと須弥山を彷彿させるが須弥山は極楽では無い

 

 

f:id:sababou:20200108160514j:plain

「生と死」を撮ってみた

 

f:id:sababou:20200108160558j:plain

ここは蓮池

今は何も無いがシーズンになれば綺麗な花を咲かせることだろう

f:id:sababou:20200108160700j:plain

f:id:sababou:20200108160711j:plain

ここが戒壇
例の授戒の儀式を行う場所

3段の石段のみ鎌倉時代となっている

上のドームは昭和53年にインドを真似て作られたそうだ

残念ながらこの場所は皆一目見ただけで興味なさそうに帰っていく

しかし何故鑑真が日本へ来たのか?

その意味を知ればとても重要な場所である

そして俺はいつもように妄想する

ここで授戒が行われていた妄想を

 

 

そんな妄想ばかりしてるから一つのお寺で長居してしまう

でもこの妄想が楽しくてしかたが無い

これが奈良旅の面白さでもある

 

f:id:sababou:20200108161140j:plain

除夜の鐘すらうるさいとクレームをつける日本人

本当に残念でならない

 

f:id:sababou:20200108161300j:plain

これは講堂

この建物も国宝

平城宮の東朝集殿(ひがしちょうしゅうでん)を移築・改造したもの

この事実を知るとワクワクが止まらない

そして再び妄想の世界へ

この中にも当然仏様が

ご本尊は弥勒如来坐像で重文

通常は弥勒菩薩としてのお姿が多い

菩薩とはまだ修行中の身

なのでアクセサリーもジャラジャラとゴージャスなお姿

しかし修行に修行を重ね

やがて如来に昇進

最高位の如来になると悟った状態であるために着飾る必要はなく

実に質素なお姿となる

これが菩薩と如来の基本的な見分け方

大日如来という例外もあるが

現在過去未来

過去は釈迦如来が守り

現在は地蔵菩薩が担当

そして56億7千万年後の未来を担当するのがこの弥勒如来

この時に高野山では空海さんが案内をすることになっている

「こちらが壇上伽藍です」

他には持国天増長天もおられる

ともに国宝

 

 

f:id:sababou:20200108162407j:plain

鼓楼

これもまた国宝

この中には鑑真さんの骨が

いわゆる仏舎利

なので舎利殿とも呼ばれる

 

f:id:sababou:20200108162554j:plain

この細長い建物は礼堂、東室で重文

この建物は昔のお坊さんの寮

なので中は細かい部屋に区切られている

現在では鼓楼の仏舎利を拝むための礼拝堂で中には釈迦如来などが安置されている

 

f:id:sababou:20200108162953j:plain

宝蔵と経蔵で国宝

教科書で習った校倉作り

よくこんな設計を思いつくものだな

機能性はもちろんデザインとしても非常に美しい

 

f:id:sababou:20200108163212j:plain

崩れかけた土塀に美を感じてしまう日本人

これが侘び寂び

でも実際は修繕する予算が無いのかもしれない

 

f:id:sababou:20200108163404j:plain

礎石がある

礎石とは柱の基礎

この石の上に柱が立ち

建物があったと想像できる

多分ここは食堂跡地

 

f:id:sababou:20200108163533j:plain

ここにも礎石が

多分ここで保管してあるのだろう

 

f:id:sababou:20200108163627j:plain

井戸である

重要な儀式の時に使用されるみたいだ

 

f:id:sababou:20200108163655j:plain

f:id:sababou:20200108163711j:plain

雰囲気のある道を抜けると小さな門がある

その中に入ると

f:id:sababou:20200108163752j:plain

f:id:sababou:20200108163807j:plain

途端に雰囲気が変わる

ここは開山御廟

鑑真さんのお墓だ

f:id:sababou:20200108163910j:plain

俺は改めて鑑真さんに感謝の気持ちを伝えた

f:id:sababou:20200108163955j:plain

戻ってきた

例の元坊さん寮

マジで長い

 

f:id:sababou:20200108164043j:plain

f:id:sababou:20200108164108j:plain

他には御影堂や開山堂がある

御影堂には東山魁夷の襖絵があるそうだ

 

f:id:sababou:20200108172238j:plain

f:id:sababou:20200108172253j:plain

f:id:sababou:20200108172317j:plain

唐招提寺はこの場所から参拝するのが一番だとされている
ちょうど三体の仏像がバランスよく見える位置

それがこの灯篭からなのだ

そしてこの位置は盧遮那仏から見るとかなり下がった位置となる

そのために盧遮那仏と視線が合うという

とは言っても普段は垂れ幕が下がってるために近くまで行かないとお姿は見えない

 

俺は御朱印帳を預け

その間に30分ほどのビデオ鑑賞をした

十一面千手観音のお守りと唐招提寺トートを購入して御朱印帳を受け取った

俺はお寺トートコレクターでもあるのだ

 

「さて帰るか」

 

金堂の方に振り返り合唱、礼拝

 

「ありがとうございました」

 

改めて鑑真さんと素晴らしい仏たちに感謝の気持ちを伝えお寺を後にした

結局3時間弱も滞在してしまった

 

f:id:sababou:20200108173210j:plain

 

南大門の壁は落書きだらけ

おそらく修学旅行生

この赤い手形はどうやってつけているのか?

いろいろと収入面での事情があるのだろうが

正直学生ではお寺の良さはわからない

修学旅行生など奈良ドリームランドで遊ばせておけばいいのだ

と思ったら既に閉園になっていた

 

 

俺は間違えて降車した唐招提寺北口バス乗り場へと向かう

財布の中から270円を取り出す

「また来よう」

俺はバスに乗り近鉄奈良駅を目指した

 

 

03へ続く