鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

2020年 奈良・京都の旅 07

2020年奈良と京都旅

 

浄瑠璃寺から戻ってきた俺は近鉄奈良駅でコインロッカーから荷物を取り出した

「今のうちに土産でも買っておくか」

買える時に買っておく

これが俺のマイルール

明日になるとバタバタになる可能性も無きにしも非ず

いつもの葛餅GET

葛湯は昨日唐招提寺の近くで買ってある

日本酒が気になるが予算的な問題と荷物的な問題と糖尿的な問題と肝臓的な問題がある

幸いなのは年末の血液検査の結果がまだ出ていないということ

正確にはまだ医者に結果を聞きに行ってないと言う事

検査結果を知らなければ飲み放題

でも酒は重いし一旦保留だな

 

「うまいコーヒーが飲みたいな」

コーヒーが飲みたくなった俺は珈琲屋を目指して歩いた

その珈琲屋は基本持ち帰り専門

一応店の前に椅子はあるが

場所は寂れた市場の中

ほとんどの店は空き家になり見た目は廃墟

そんな細長い市場の中を歩いていくと真ん中あたりに珈琲屋はあるのだ

TABI Coffee Roaster

ハンドドリップで淹れてくれる珈琲屋である

廃墟の中に突如と姿を表す小さな小さなお店

とてもおしゃれな外観である

焙煎機もある

先客がいたので俺は一旦通り過ぎて時間を潰す

「そろそろだな」

俺は再び市場の中を歩く

実はこの場所奈良市で一番古い商店街だという

椿井市場

正式な読み方はわからない

珈琲屋の前には人気な町中華の店もある

ほとんどは廃墟であるが数店は営業してるみたい

店が小さいのですぐに店の人と目が合う

こうなったら買わないわけには行かないので注意が必要だ

メニューを見るブレンドが3種類

違いがわからない

その他何種類かあるが聞いたこともない名前が並ぶ

正直コロンビアだのブラジルだのグアテマラだの産地しかわからない

農園の名前出されてもわからない

優柔不断な俺は迷いに迷う

小さなお店

迷えば迷うほど焦り出す

基本はブレンド

でもなんか特徴のある物を呑んでみたい気がする

しかし名前以外なんの情報もないので検討のしようがない

店の人に尋ねられるほど俺は豆に関して蘊蓄もない

「困った」

焦った俺はNEWと書かれた物を注文

名前は覚えられないほど複雑だった

カウンターの上にはハリオのドリップスケールが二つ

カウンターの中で豆を挽いてるみたいだ

ちらっとミルのカップが見えた

「俺と同じマシーンだな」

おそらくカリタ

サーバーもカリタだがドリッパーはコーノぽい

この辺り豆によって使い分ける可能性もある

チラチラと横目でドリップ作業を見る

実は一番みたかったのがこれである

俺は自分でハンドドリップしてるが

プロのやり方をちゃんと見たことがないのだ

やはり慣れた手つき

そこがどこか分かるかのようだ

緊張でプルプル震える俺とは違うな

タイマー押して

焦って

最初の一投目でたまに「うわっ」ってなるもんな

結構素早くのの字を書く

俺はいつも2杯分入れるが店は一杯分でドリップ

豆が少ないとちょっとしたことで溢れて土手が決壊するような気がするが

やはり上手だな

当たり前だが

間も無くドリップ終了

「しまった、時間も図るべきだったな」

紙コップに入れられて完成だ

俺はコーヒーを受け取り日向に出て一口飲んだ

色はかなり薄い

ミディアムローストかな?

酸味のある俺好みの味

非常にさっぱりして飲みやすいが確かなコク、甘みが余韻を残す

「うまいなぁ」

豆もその日の焙煎だろうし

やっぱりカルディで割れまくった豆を買ってくるのとは違うよな

なんかもうしみじみとうまい

地元にあったら通っちゃうだろうな

この味で400円だしな

 

適当に散歩をする

なんとなく興福寺にやってくる

さっきまでいた岩船寺は元々興福寺傘下だった

昔はかなりの勢力を誇ってたからな

だから明治政府に目をつけられたんだろうが

予算の都合上拝観料のかかるお堂には入れない

なので南円堂など参拝

しばし再建された中金堂を眺める

 

「さて、そろそろ行くか」

 

俺は今晩の宿「奈良ホテル」へ向かった

すでに勝手知ったる道

猿沢池を抜け、とらやを左に曲がってまっすぐ歩けば奈良ホテルの裏口だ

ここから階段を登りフロントへ

奈良ホテルは高台に立っているために最上階がフロントとなる

これは新館から見た場合だが

旧館からだと普通に一階だな

まず玄関に立ってた人から「お帰りなさい」と挨拶をされる

その際にこれからチェックインだと伝える

名前を聞かれて中に入るとすかさず別の案内の人が

「〇〇さんですね。お待ちしてました」

なんて素晴らしい連携プレー

ただいまフロントが混み合ってますのでもう少しお持ちくださいとのこと

まぁこれはいつものことだな

俺はソファーに座る

すると何やら赤いものがある

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牛乳石鹸奈良ホテル110周年コラボ

今年で奈良ホテルは110周年

そしてあの牛乳石鹸も110周年

「同じ110周年コラボしちゃおうぜ」って感じなんだろうな

なかなかいいアイデアだな

展示の仕方もまるでアンディ・ウォーホルだな

俺は壁にかけられた絵画を見てまわる

奈良ホテルはちょっとした美術館

しばし鑑賞

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アインシュタインの弾いたピアノまである

皇室御用達だし

俺のような人間が宿泊して良いものなか?

毎年のことながら申し訳ない気持ちになる

チェックインの順番が来た

色々説明を受ける

奈良ホテル110周年記念ステッカーをもらう

なかなか良いデザインだ

しかしもったいなくて張れないな

夕食ビュッフェの20パーオフ券

次回の宿泊半額券

そして朝食半額券をもらう

この朝食半額券は夜にビュッフェを利用する条件付きだが

俺はあいにく日本料理「花菊」を予約済み

まぁ流石にその辺りは配慮してくれるだろう

俺の方が金を使うわけだしな

「お荷物をお持ちします」

ご好意は非常にありがたいのだが

俺の辞書には女性に荷物を持たせるという言葉はない

なので今回も丁重にお断りをした

部屋へ案内される

くつろぎタイムだ

去年は同じ料金で広いツインに変更してくれたが

今年は普通のダブルだな

多分宿泊者が多いのだろう

女子大生ぐらいの女の子3人組もキャッキャしながら手続きしてたしな

そう言う俺も高校生の時にバイト代を注ぎ込み

東京の新宿中央公園

当時のセンチュリーハイアットに宿泊

15000円のフランス料理を食べたことを思い出した

いまだにあれ以上のホテルには止まっていない

朝食の時にやたらと外人さんのウエイトレスがパンを勧めてきた

見たこともない黒いカッチカチのパンが珍しく

俺たちは食べまくった

すっかり無料だと思っていた

だがしっかり会計時に請求された

俺たちは小遣いの大半をパンで失った

そんなことを思い出した俺である

若気の至り

無知は怖い

 

 

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去年まではコーヒーは有料だった

散々俺がブログに書いてきたおかげかな?

今年はコーヒーが無料である

まぁ多分誰も利用してなかったんだろうな

お金持ちは喫茶コーナーへ行くだろうし

貧乏人は缶コーヒーだ

 

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ステッカーが逆さまだった事に今気づく

まぁいい

コラボ石鹸がサービスで一個もらえた

これは嬉しい

良い記念になるな

俺は今月で生誕49年になる

奈良ホテルは110周年か

俺なんかまだひよっ子だな

 

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宿泊半額券は期限付き

でも使わないと損だよな

スタンダートツインしかダメなのかな?

となると厳しいかな

一人でツインは無駄すぎる

朝食半額券は予想通り貰えた

明日の朝はビュッフェだな

 

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こんな注意書き去年はなかった気がするが?

どうやら窓を開けておくと奈良公園の元気な生き物が部屋に入ってくるらしい

多分奴らだな

煎餅を食べてはところ構わず糞をする奴ら

そして奈良ホテルも某アジア系観光客が増えたのかもしれないな

すると突然廊下から大きな声の中国語が聞こえてくる

「やっぱりな・・・」

いつもは非常に静かな奈良ホテル

このためにお金を払ってる部分もあるしな

唯一うるさいのは鹿の鳴き声ぐらい

しかし今年はそれ以外で悩まされそうだな

文化の違いとはいえ

なんとかならないものなのか?

 

夕食まではまだ時間がある

今日はそこそこ歩いて汗もかいたのでシャワーを浴びた

そして時間まで本を読んだ

 

さて6時25分

そろそろだな

俺はエレベーターに乗りロビー階を目指す

エレベーターを降りたら目の前が花菊だ

今ちょうど洋食レストランが改装中

なので洋食はビュッフェ形式となっている

おそらくほとんどの人はビュッフェを利用

20パーオフ券もあるしな

しかし俺は箸で食べたい派

洋食は大好きだが

ナイフとフォークで食べることがどうしても許せないのだ

オレ流のテーブルマナーに反するのである

なので今年も和食

白鳳懐石 9000円プラス税なのだ

 

「〇〇です」

 

「お待ちしておりましたこちらへどうぞ」

 

いつもように夜景が見える窓際の席へ案内される

しかし毎年のことながら奈良の夜は真っ暗だ

まずは酒のメニューを見る

去年呑んだ祝いがなくて残念

「さてどうすっかな?」

 

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「おっ、風の森がある」

決まりだな

まずは純米大吟醸から

奈良でのみ生産される酒米なんだな

奈良ならではだな

露葉風か覚えておこう

 

 

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本日のお品書き

先付けが違うぐらいでだいたい毎年同じ

あとは若干仕入れの関係で素材が違う程度

それだけに安心感はある

他の季節に来られればまた違うのだろうが

 

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まずは酒が来た

風の森 露葉風 純米大吟醸 1300円

 

早速一口

「美味い!」

説明書きの通りまろやかな甘みが絶妙だな

若干シュワシュワ

これこそが風の森

爽やかだな

昨日の春鹿の超辛口も良いが

やはり懐石には純米大吟醸だね

ハレの日の酒

なんか特別感が出る

そして名の知れた酒ならまず外さない安定感

磨きまくってるしな

もったいないぐらい米の一粒一粒が小さくなっちゃうしな

雑味も消えるってもんさ

 

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先付 フォアグラとビーツの二色羹 絹莢 くこの実

 

さすが五感で楽しませてくれる

まるでケーキだね

で、器が紅白の椿

フォアグラが白でビーツが赤

クコの実も赤

絹さやが葉っぱの緑だな

ちゃんと料理と器を合わせてあるのが良くわかる

 

食べてみる

俺ねフォアグラの味ってよくわかんないんだけど

ビーツも同様

でもねとにかく美味いのよ

美味しければ全てOK

多分ビーツは色付けだろうしな

そうかビーツってボルシチに使うんだな

これをあえて日本料理に持ってくるとは・・・

いいね

 

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猪口 紅白膾 塩麹 虹鱒 色三つ葉 ゆず

 

これはおなじみ

既に美味いのは知っている

猪口でちょこっと出てくるところが良いんだよな

俺も家で塩辛とか入れて真似しちゃうしね

相変わらず膾が美味いなぁ

ニジマスは昔よく釣ってその場で塩焼きにして食べてたけど

こんなおしゃれな料理にもなっちゃうんだよな

臭みも全然ないし

塩麹の力かな

ちゃんとゆずも効いてるし

アヤパンも納得だな

 

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お店の人が気を利かせてボトルを持ってきてくれた

「よかったらお撮りください」

最近はSNS推奨でどんどん宣伝してくださいってスタンスだからな

果たして俺のブログにどれだけ宣伝力があるかはわからないが

久しぶりにインスタにも投稿しようかな

 

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吸物 清汁仕立 ふぐ新蒸 焼餅 大根 人参 茄子 水菜 ゆず

 

来ました

日本料理の真髄 吸い物

お吸い物はちゃんとした店じゃないと全然美味しくないからな

京都のいづ重なんかはコスパ抜群の美味い吸い物が飲めるのでおすすめだが

当然奈良ホテルも美味い

しかも豪華な具材

ふぐ新蒸

旨味がぎゅっと凝縮されて本当に美味いなぁ

焼き餅もすげえ美味い

良い米使ってるんだろうな

やはり米だな

大根人参茄子水菜そしてゆず

芸術だね

こんなにペラペラな野菜が一般家庭で出てきたら

「うちって貧乏なんだな・・・」って思うだろうが

ちゃんと見た目を楽しませてくれた上で美味い

ここでもちゃんと五感で楽しませてくれる

そして何と言っても出汁と言う基礎がしっかりしてるからだろうな

これは本当に美味い

サーモスの2リットルの水筒に入れて持ち歩きたいほど美味い

 

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造里 お造り三種盛り 芽物一式

 

カンパチ、タイ、マグロ

これもいつものトリオ

流通のおかげだよな

奈良でも本気出せばちゃんと美味い刺身は食べられる

同じことが飛騨高山でも言えることで

あっちは北陸が近いから良い魚が入ってくるんだよな

今年も美味いよ

トリプルエース

カンパチの脂がちゃんと旨味になってるし全然口説くない

タイはもうモチプリだし

マグロも脂が絶妙だね旨味がすごいことになってる

なんだろう?

なんでこんなに美味いんだろう?

まぁ良いや

次行こう

 

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焼物 あわび鱈の白子風味焼き 金柑 はじかみ

 

これも毎年おなじみ

とにかく美味い

コリコリアワビの食感と確かな旨味

グラタンかと思うようなクリーミーな鱈の白子風味焼き

で、アワビが動かないように下に大根が置いてあるんだけど

貧乏性な俺は大根まで食べちゃったわけで

大根自体味付けはしてないんだけど

ちゃんと美味い大根だったね

でも厨房でどう思われたかは考えないようにしたけどね

 

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蒸物 慈姑饅頭 干し柿 松の実 銀餡 とき山葵

 

俺の大好きな慈姑饅頭

器も良いね

蓋を開ける

「これだね」

知らない人が見たらたこ焼きの上にわさびが乗ってるかと思うだろうが

これが慈姑饅頭

慈姑は縁起物

中には干し柿、松の実

これが味に深みを出す

そして餡がまた美味い

パンで拭って食べたいね

そしてだんだんと慈姑饅頭がおっぱいに見えてくるからね

 

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酒を追加

ここらで追加しとかないと直ぐに止め腕が出てくる

これが懐石の辛いところ

のんびり飲めない

2杯目も風の森

今度はちょっと珍しい奴

風の噂には聞いていた

風の森だけにな

ALPHA  TYPE1 1200円

これを初めて飲むと全ての人が驚くだろうな

まず「これ日本酒なのか?」と思うぐらいシュワシュワ

アルコール度数は低めの14度

でもちゃんと旨味があり酸味も良い感じ

基本爽やかすぎるぐらい爽やかで俺とは正反対のキャラなんだけど

優しくてボリュームある果実味が楽しめる

世界へ向けて発信したいとの思いがこもった酒

これ安いし

日本酒が苦手な人にもおすすめだな

本当に驚くから

そして美味い

でも入手困難だろうな

確かプレミア付いてた気がするな

 

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小鉢 大和伝統野菜大和まなのお浸し ゆず

 

おひたし

「大和まな」と言われてもよく分からないが

これもね美味い!

美味すぎるぐらい美味い

見た目もゆずの黄色が効いてるね

慈姑饅頭がどっしり系だからここで爽やか系はありがたい

これつまみながらチビチビ飲みたいけど料理は待ってくれないんだよな

ここから結構ハイペースで飲むことになる

 

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煮物 金目鯛の煮付け 大根 青味 木の芽

 

去年は糸よりの煮付けだったが今年は金目鯛

ブリ大根同様魚と大根って相性抜群

この煮付けがまた美味い!!

京都の某料亭よりこっちの味付けの方が好きだな

俺の地元ではまずこんな美味い煮付けは食べられない

とにかく醤油ドカーンになっちゃうからな

大根も絶妙な食感

おでんなんかクタクタに煮込む店が多いが大根って食感残すべきだよな

本当に美味いよコレ

 

で、この日俺の隣のテーブルでは孫を連れた高齢のご夫婦が食事してたのだが

聞くつもりなくても会話が聞こえてくるわけで

どうやら一番高いスイートに宿泊とのこと

で、俺は一番安い部屋なわけで

奇しくも一番高い部屋と一番安い部屋の住人が隣り合わせ

「すごいな」

「こんなことってあるんだな」

多分一泊ってわけじゃないだろうし

スイート連泊なんだろうな

俺なんか一泊はフジタで予算抑えたのに・・・

多分相当なお金持ち

その人が「ここの和食は美味いよ」って言ってたからね

俺も同感だな

泊まってる部屋は一番安い部屋だけどね

 

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酢物 湯引き帆立のマリネ ぼたん海老霜振り 酢蓮根 菜種
   奈良県産緑茶風味の酢

 

そろそろクライマックス

煮付けの後はさっぱり酢の物

しかし酢の物と侮るなかれ

ホタテにボタンエビ

「ホタテをなめるなよ」

酢も奈良県産緑茶風味だからね

最後まで彩りも美しい

ボタンエビなんか普段食べる機会ないし

しかも霜降

一体何が霜降りなのかよく分からないが

でも深い味なんだよな

酢の物がメインに昇格するぐらいに

なんか日本人でよかったよ

 

 

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留椀 味噌仕立
御飯 奈良県産ひのひかり 香の物

 

ついにこの時が来てしまった・・・

1年間頑張った自分へのご褒美が終わりを迎えようとしている

なんか永ちゃんの「A DAY」が心の中に流れてくる


A DAY(E・Yazawa)

 

でも実はこれが一番贅沢な料理なんだよな

本当に美味いご飯

本当に美味い味噌汁

本当に美味い香の物

これ以上いったい何が必要だと言うのだろうか?

俺は一粒一粒噛みしめるようにご飯を食べる

このご飯がまた信じられないぐらい甘い

見た目でわかるが完璧な炊き加減

ご飯がこれだけ甘いと何もいらない

ただ味噌汁と漬物

本当にそうだよなあ

最後がこれって本当に贅沢だよな

 

ちなみに梅干しに見えるのは赤こんにゃく

そんな遊び心も嬉しい

 

 

とは言っても本当の締めはデザート

ライブで言えばアンコールだな

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宝石 デザート

 

毎年思うが奈良ホテルのケーキも最高に美味い

もっともっと食べたいなと思いつつも

名残惜しいからこそ

また来年となる

また1年頑張って奈良ホテルへ泊まれるようにと

俺、奈良ホテルにメロンメロンだな

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

「今年も大変美味しかったです」

 

 

 

俺は会計を済ませて部屋へと戻っった

誰も待つことのない部屋に

 

 

廊下を歩く

「ここか」

直ぐに分かる例の中国人の部屋

俺の部屋から相当な距離離れている

「これならなんとかなりそうだな」

俺は安堵した

 部屋に戻り明日の計画を練る

どうやら午後からは雨

と、なると午前中が勝負

予算は予定通り

明日はプランFだな

しかし2杯目をハイペースで呑んだために結構酔っている

お腹は満腹

この後で恒例のバーに繰り出したいがもう少し酔い冷ましだな

俺はベッドに寝転んだ

枕は二つあるのに

俺以外誰もいない

 

すると突然大きな声で中国語が飛び交う

「ここまで聞こえてくるよ・・・」

やはり広大な大陸に住んでると声も大きくなるんだろうな

夜9時半

「そろそろだな」

今日は酔ってるので一杯だけにしておこう

俺はバーへ向かった

普段夜遊びはしない俺

こんな時でないとバーにはいかない

でもバーは大好きだ

カウンターに座る

今日は外人さんも呑んでいる

今日のバーテンさんは女性だ

確か去年助手的なことやってた気がする

今年はキレッキレな動きをするバーテンさんには会えない

「さて何にするかな?」

俺は毎年奈良のお茶を使ったカクテル「奈良ミュール」を飲むのだが

どうやらカクテルのメニューがない

カクテルフェアが終わったからなのか?

作れる人がいないのか?

残念だ

「そうなると・・・」

いつもならターキーだが

この時はヴィンテージウイスキーフェア開催中

せっかくなのでウイスキーにするか

正直俺は高価なウイスキーは呑んだことがない

名前も知らないし知識もない

普段はブラックニッカ専門だ

一応俺は迷うふりをした

メニューを眺めたところで何が何だかさっぱりわからない

仕方がないので一番安いやつ

1800円

Dewar’s 25 YEARS OLD 

デュワーズ 25年である

四半世紀か・・・

流石にこんなの呑んだことがない

旅の思い出だしな

俺は奮発した

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デュワーズ25年

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ストレートである

俺は家では氷を入れるのがめんどくさいしお金がかかるのでいつもストレートで飲む

飲み放題のキャバクラなどでは飲みすぎてボトルを隠されてしまう

自分の手酌でグイグイ行くからね

キャバクラは嫌いだ

何を話して良いかわからない

付き合いで行ってたがもう行くことはないだろう

でもあんな飲み方はもうできないな

俺も49年のヴィンテージものだしな

そう考えるとデュワーズ25年が若造に見えてくる

俺はグラスをグイングイン回して香りを嗅いだ

「いい香りだ」

さすがスコッチ

でも他のスコッチを俺は知らない

そして一口

口の中に含み転がすようにして飲み込む

「おおおおおお、な、なんて・・・まろやかな・・・」

俺は驚いた

相当うまい

そして飲みやすい

「深い味だなぁ」

やはり25年は伊達じゃないな

ブラックニッカと比較するのが申し訳ないぐらいだ

俺はスマホで明日の下調べをしながらちびちび呑んだ

時折チェイサーを飲む

水もまた美味い

正直1リットルぐらい飲みたい

でもそんなかっこ悪いことはできない

30分ぐらいかけてデュワーズを飲み干した俺はバーを千鳥足で出た

結構酔っているので会計は部屋につけてもらった

正直バーで酔うのは恥ずかしい

俺も老化したな

昔みたいに店の人から「お酒強いですね」なんて言われることもなくなった

もっと飲みたいのになぁ

悔しい

 

 

 

部屋に戻る

服を脱ぎ捨てそのままベッドに倒れこむ

 

俺は直ぐに眠りについた

 

夢の中で阿弥陀様が・・・呼んでいる・・・

 

 

 

08へ続く