鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

家紋を知らない人が増えている

家紋

まぁ知らないだろうな

うちは落ちぶれた旧家の家系なんで一応本家の方から額装された家紋が渡され家に置いてあるので知ってるが

正直家紋が必要になった場面は親の葬式の時ぐらいか

葬儀屋さんから聞かれ

看板のまるまる家の上の部分に入ってたが

あれも別に必要ないんじゃないかな

あとは紋付袴などに入ってる場合が多いが

俺なんかは一度も着たことないし所有もしていない

 

家紋というのは平安後期に始まったとされるが

もともと公家や武家などの上流階級だけだったのが一般人へと広まったそうだ

庶民がどういう経緯で家紋を決めて使い始めたのか?

実際の所当時の人に聞いてみないとわからない

葬儀屋さんなんかはうちの名字から家紋を言い当ててたが

ある程度は名字でも決まってるみたいである

うちの本家には確か家系図が残ってるとか聞いたことはある

昔は相当な家柄だったとも

しかし長い年月で底辺にまで落ちぶれた

今は本家の住所だけが当時の名残を残している

家紋からも武士の家系のような気もするが

おそらく江戸時代には既に刀を捨て農民だったんだろうな

土地も自前ではなく大地主から借りていた小作人

あの農地改革の時に俺の祖父が頑固すぎて

「人様の土地をタダ同然でもらうわけにはいかぬ」と断ったそうだが

畑を失い農業は廃業

次に始めたのが馬で物を運ぶ運送業だったみたいである

本当の所は家系図とか調べてみないとわからんが

うちの本家もそのうち取り壊され他人に売り渡されることだろう

長い歴史を生きてきた旧家も令和で終わりを迎える

 

結局は子供達が地方を離れ都会へと出てしまう

いつまでも地方に残るのは俺のような頭の悪い奴ばかり

結果としてどんどん地方は衰退していく

若者がいなくなり残った高齢者も減少していく

親から子へと伝わることも無くなり

氏神様を守る氏子すら高齢化で大幅減

あと10年もしたら各地にある小さな神社もどうなることやら

まぁお寺も同じだがな

ただお寺の場合は坊さんへの不信感から来るお寺離れ

神道の場合は日本人自体がよく知らない

氏神様の存在すら知らない人がほとんどだろう

 

結局は家紋も同じ

子供は高校を卒業と同時に家を出る

みんな子供に伝えない伝わらない

親戚付き合いも少ない

昭和までだろうな

平成、令和となりみんな自分の家の家紋を忘れてしまった

大人になって実家に残ってると

「子供部屋おじさん」とのレッテルを貼られダメ人間認定される時代

しかし長男ぐらいは実家に残らないと地方は壊滅する

一度都会に出てしまえばよほどのことがない限り戻ってはこない

昔から伝わってきた祭りなんかも無くなっていくんだろうな

すでに全国的に墓じまいが始まってる

もはや誰も先祖が住んだ土地には残らない

足すら踏み入れないのである

 

そうやって家紋も家のルーツも忘れられていく