鬼平犯科帳がアニメ化された
第一話 血頭の丹兵衛
とりあえず見てみた
鬼平は既に漫画化はされている読んだ事は無いが絵は見た事がある
俺はてっきり漫画のアニメ化かと思っていたのだが・・・
なんだこれは？
ヒドイなんてもんじゃない
平蔵が若くてひょろひょろだ
そして無駄にイケメン
しかも髪型がちょんまげですらない
イケメンなのはキャラ全般で密偵になる小房の粂八までイケメン
これはたぶんアニメ好きな女子の人気を稼ぐため
プロデューサーの人は大の池波正太郎ファンだと言うが
果たして本当なのだろうか？
池波先生も草葉の陰から泣いてるのではなく怒っている
それも激怒であろう
「俺が死んだと思って勝手にこんなもの作りやがって！！」と
平蔵のかっこよさは男気である
これは「男はつらいよ」の寅さんも同じだが
男のかっこよさとは決してビジュアルではないのだ
逆に見た目が良すぎると
顔の作りにだけ目が言って本当のかっこよさがぼやけてしまう
平蔵は本来少し太っている設定である
そのほうが貫禄が出るからだが
基本的にはニコニコしてとても優しい平蔵
とてもお殿様には見えない
だが外道を前にした時には鬼になる
このギャップが平蔵の魅力であり部下達が慕う理由でもある
平蔵はお殿様であるが決して裕福ではない
しかし私財を投げ打ってまで火付盗賊改方のために尽くしているのだ
アニメ版のあのひょろひょろのチンピラ若造みたいな平蔵に果たして部下が命をかけてまでも従うような威厳があるのだろうか？
粂八にしてもそうだ
彼が今まで背負って来た人生がまったくでていない
無駄にイケメンすぎるために何苦労することなく生きてきたかのように見えてしまうのだ
かろうじて忠吾は面白系キャラ風には書いてあるが
息子の辰蔵は平蔵と親子関係に見えない
まるで兄弟に見えてしまう
なにからなにまでヒドイ
これをアニメ単体として考えれば良く出来ていると思う
時代劇エンターテイメントとして
しかし鬼平犯科帳は単なる時代劇ではない
ましてや水戸黄門など勧善懲悪のエンターテイメントでもない
義理と人情をベースとした人間ドラマ
これが鬼平犯科帳である
アニメでは粂八ですら超人的な強さを見せてしまっている
平蔵を始めとした火盗改めの殺陣もアニメらしく凄い
しかし鬼平で殺陣を全面に出しすぎると肝心の人間ドラマの部分がぼやけてしまう
あくまで話の中の一場面として描かないと殺陣がクライマックスとなり、ありきたりのアクション時代劇に成り下がってしまうのだ
もちろん平蔵の殺陣は見所の一つである
しかしそれは小説による言葉での表現あってのこと
ドラマ版では中村吉右衛門をはじめとする名優達のおかげですばらしい鬼平の世界を作り上げてくれていた
しかしアニメでは喜怒哀楽を示す肝心な表情などがどうしても乏しくなってしまう
これでは見る側に、その場面場面それぞれのキャラの心理描写がはっきりと伝わらないのだ
とくに密偵
彼らはかつての親分や仲間と平蔵との板挟みになる事が多い
そんな複雑な心境を果たしてアニメで
そしてあのキャラ達で表現出来るのか？
それができなければそれはもはや鬼平ではないし池波作品ではないのだ
鬼平の面白さはやはり活字でこそ生きる
ドラマ版は名優達により小説の世界を池波先生の世界を可能な限り再現することができたまれに見る名作
なによりあの頃はまだ先生も生きていて自分の目でちゃんと出来を確かめている
そして今回のアニメ化
果たして池波正太郎が生きていたらOKを出したのだろうか？
たぶん断っていたと思う
それはアニメであの世界を表現するのはやはり難しいからだ
すでに鬼平を知っている人が見る分には構わないが
あのアニメで初めて鬼平を知る人がいるかと思うと残念でならない
あれが、あんなイケメンチャンバラアニメが鬼平犯科帳だとは思って欲しく無い
次は本所桜屋敷
平蔵の初恋を描いた名作だ
なんかもう一刻も早く打ち切りにして欲しい
これ以上おかしな鬼平の世界を世に出さないで欲しい
「鬼平の名前だけ使ってオリジナルでシナリオを作るような、さもしいことだけはしてくれるな」
これはかつてドラマ化される時の池波先生との約束である
今回のアニメの場合はシナリオは原作通りでも実際の中身は「鬼平の名前を使ったアクションエンターテイメント時代劇」
本当によくこんな物が作れたな
様々な大人の事情が絡んでるんだろうが
おそらくキャラのイケメン化は絶対条件だったような気がする
俺の予想が正しければ池波先生が一番嫌うようなことだよなぁ
もうこれ以上鬼平を池波作品を汚すのは辞めて欲しい
