鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

名駅「和食、竜むら」銀だらの幽庵焼き御膳 錦 2000円

今日は休みだ

完全にやりきれない量の仕事を抱えているが

「休むのも仕事のうち」と自分に言い聞かせて休みにした

先週は右手が上がらないほど肩こりが酷かった

なので今日は体のメンテ日である

早朝5時に起きて台風で生き残った植物共に水を与える

ベランダはまだ荒れたままだ

俺はバスに乗り駅へ向かった

駅ではいつものように朝食と時間つぶしを兼ねてドトールへ入る

俺が乗るべき電車までまだ30分あるからだ

スタバと違ってドトールの注文は楽でいい

「Aセットをホットで」

これだけでちゃんと意思は伝わるのだ

店員さんはちゃんと空気を読んでくれる

ミラノサンドかモーニングかは聞かれるが

これがスタバだとえらいことになる

大勢の前で徹底的に注文方法を指導される

コーヒーの味もスタバよりはマシなドトール

モーニングのサンドイッチはそこそこ美味い

「どっこいしょ」

俺はカウンタータイプの席に腰掛けてすりガラス風のカッティングシートが貼られたガラスの隙間から下界を眺めつつハムタマゴサンドを食べた

「C、B、C、D、C、ん〜Dかな」

「おおぉ E以上」などと心の中でつぶやきながら人間観察をする

いつもと変わらない休日の風景だ

俺はのんびりとドトールで過ごした

俺のApple Watchがわずかに振動する

「早く出ろハゲ」

あらかじめ設定してあったリマインダーが作動してメッセージが表示された

俺はドトールを後にしてトイレに駆け込んだ後でゆっくりとホームへと向かった

ちょうど俺が乗るべき電車がホームに滑り込んできたところだ

俺は真ん中あたりの車両に意気揚々と乗り込んだ

おばちゃん達が車内清掃をしている

どうやら一升瓶が転がってることもあるそうだ

俺はおもむろに京都の某お家騒動のあった帆布屋のカバンの中から文庫本を取り出した

 

 蘇る鬼平犯科帳

鬼平の設定そのままに現代作家さん達が書いた本

池波先生リスペクト

鬼平はみんなの心の中で生きているのだ

読んでみると歴史上の人物である長谷川平蔵以外はオリジナルな登場人物達

やはり違和感は拭えない

密偵の名前がどうも馴染めない

そして舞台は江戸の鬼平の世界であってもやはり池波正太郎とは文体が違う

設定は鬼平でもまるで別物の話のように感じてしまうのは仕方がないのかもしれないな

それでも新たな鬼平に出会えるのは嬉しい

ただ池波先生がどう思うのかは知らない

ドラマでは「勝手に話を作るんじゃない」という約束だったが

葵小僧の話も出てきた

ただ平蔵が浮気しちゃうのは個人的にどうも許せないな

久栄一筋の平蔵であってほしい

電車の中で本を読みながら俺は目的地を目指した

今日は運が悪く俺の前におばさんの集団が陣を構えた

なんで中国人とおばさんはしゃべりぱなしなのか?

バスの中では中国語が行き交い

電車の中ではおばさんの声が行き交っていた

京都の話をしている

旦那の悪口を言っている

どうしても頭の中に飛び込んできてしまい本に集中できない

貴重な読書時間なのに残念だ

 

それでもなんとかんとか俺は目的地の駅にたどり着いた

そして体のメンテを行い

再び名駅目指して電車に飛び乗った

さて今日は何を食べよう?

昨日で仕事が一つ終わった

「今日はプチ打ち上げだな」

俺の心の中は決まった

俺が自分へのご褒美として訪れる店

「和食、竜むら」だ

以前にもブログには書いたがあまり人には教えたくない店でもある

静かにのんびりと食事ができる割烹スタイルの和食屋

夜はそれなりの値段がするがランチは庶民でも食べられる価格設定

それでもひつまぶしは人気を博している

ネットで検索するとオススメ店として出てくるからだろうが

まずこの店では「銀だら」を食べてほしい

俺が独断と偏見で選んだ「三大これだけは食べておけ」の中の一つである

ちなみに残りの二つはともに京都

いづ重の「いなり寿司」

志る幸の「利休弁当」

そしてこの「三大これだけ食べておけ」はその日の気分によってコロコロ変わる

時にはペヤングになることもあるので注意が必要だ

まぁとにかく今日は銀だらな気分なのである

「今年は初めてだな」

俺は地下街をわたり歩き店へと向かった

店の前にはおばさんだけの行列ができている

「ここでもおばさんか・・・」

「まぁ俺はおっさんなんだが」

先客は2組

ともにテーブル席希望みたいだ

俺は受付用紙に名前と人数と希望する席を記入した

席は「どこでもいい」

これだとひとり客の場合はすぐに案内される場合が多い

カウンターさえ空いていれば即ご案内となる

当然先客のおばさんたちの了解を得てのことだが

さすがにおばさんを怒らせるとあとが厄介だ

俺は恐縮するフリをして店内へと入った

帽子を脱ぎハゲ頭を晒して椅子に座る

「どっこいしょ」

俺の心の中はすでに決まっていたが一応メニューを確認した

うな重もあるんだな。3200円か」

「今時にしてはリーズナブルだが」

「おそらくうなぎはひつまぶし用のうなぎだろうし」

気にはなったが俺は予定通り銀だらにした

今日は珍しく銀だらを食べてる人が多い

考えられることは観光客ではなく地元民

やはり銀だらだよな

そして3種類ある銀だらの幽庵焼き御膳

その中で今日は一番高価な「錦」にした

これにはノーマル御膳に刺身と茶碗蒸しがプラスされる

お値段は650円アップの2000円

天然魚の刺身3種盛りと茶碗蒸しがつくならお得なものである

俺は生ビールも注文した

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秋とは言ってもまだまだ歩いてると汗をかく

さすがメタボなことだけはある

俺はビールで喉を潤した

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これが「銀だらの幽庵焼き御膳 錦」である

 

銀だらの幽庵焼き

本日の天然魚のお造り

野菜の炊き合わせ

甘エビの茶碗蒸し

もずく酢

季節の豆腐

ご飯

香の物

 

さぁ宴の始まりである

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銀だらは香り豊かな醤油に三日間漬けこんで一つ一つを香ばしく焼き上げてある

創業35年以来変わらぬ味である

とは言っても俺は35年前のことは知らない

銀だらは二切れある

一つはアテとして

一つはご飯のお供として

いつもと変わらない俺の作戦である

焦るな焦るな

まずはもずくで日々の疲れを取る作戦に出た

「いつもと変わらない味だな」

スーパーで売られているもずくとは全く別物だな

やはりちゃんとしたもずくはうまい

そして酢が疲労した体に染み渡る

やはり体が欲している

俺の体が酢を欲しているのだ

俺は我慢できずに銀だらを一口食べた

「あぁこれだ、これだ」

「今日もいつもと変わらず美味い!!」

脂が口の中でとろけてしまう

俺の心もとろけそうだ

ダメだ・・我慢できない・・・

俺は白飯をガツガツ食べた

俺は全精力を振り絞り白飯を食べる衝動を抑えた

「いかんいかん」

「まだ早いぞまだ早い」

俺は冷静になり甘エビの茶碗蒸しに手をつけた

HPのメニューにはズワイガニの茶碗蒸しとなっているが今回は甘エビの茶碗蒸しである

きっと良い甘エビでも入手できたのかもしれないな

俺は見た目プリンのような甘エビの茶碗蒸しを一口食べた

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食べた瞬間に口の中に広がるエビエビエビエビ

「美味いぞこれ!」

ただ残念なのは冷め気味なこと

作り置きランチの宿命だな

熱々をハフハフして日本酒をクイッと行きたいな

俺は青森の田酒を追加した

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田酒の特別純米酒

純米大好きな俺である

相変わらず美味いなこの酒は

先日のたん熊北店では売り切れてたからな

ここは九平次も獺祭も置いてあるが俺は田酒だな

900円だしな

銀だらのパワフルな味をしっかり受け止めるには大吟醸ではなく純米だな

ピカピカに磨いた米でなく原石の素朴さを残した米が良い

俺は田酒に酔いしれた

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次は刺身に手をつける

全て天然魚だ

今日は鯛とマグロとハマチ系だな

多分

まずは鯛

ワサビは決して醤油に溶いてはいけない

男の作法

池波先生に怒られるからだ

ワサビをちょこんと乗せて・・

「おぉ もちっプリっ」

名古屋で食べるにしては最高だぞ

熟成具合が・・ちょうど良い・・・

30代前半と言ったところか

ハリを残しつつも柔らかさを増した年頃

まさに食べごろだな

マグロは安定のうまさ

ハマチ系と思われる刺身は細かく包丁で切れ目が入れてある

この一手間がアイラブユー

口の中に入れた瞬間とろけるのにクドさがなく旨味だけが口の中に残るではないか

俺は細工してある細切りの人参までおいしくいただいた

そして酒が進む進む

黄色く四角いのは季節の豆腐

今回は南瓜だな

ハロウィンだけに

ここの季節ごとのオリジナルな豆腐は美味い

俺はワサビを乗せて食べてみた

「正解だな」

ワサビの香りと辛みが南瓜の甘さを引き立てる

お互いがお互いを高め合う

お互いがお互いを求め合う

ラブラブだな

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さぁ野菜の炊き合わせで心を落ち着かせよう

激しく求め合うのも良いが

あっさり系が欲しくなった

名古屋にしては珍しくとても優しい炊き合わせ

他の店など醤油で真っ黒に日焼けしてる店も多いのにな

ここの炊き合わせはスキンケアが万全である

そして見た目同様とても清楚で上品な味がする

「落ち着くなぁ」

「安心感抜群だ」

「嫁にするならこんな炊き合わせだよな」

さぁラストスパートだ

ツールの21ステージならジャンヌダルク像を過ぎたところ

遊園地を抜けてからの連続するコーナーだな

ヒンカピーがうまいことガーミンを邪魔するんだよな

俺は最後の最後までとっておいたもう一切れの銀だらを口の中に投入した

大事に大事に運ばれてきたエーススプリンターが俺の口の中に旨味を爆発させる

もう良いんだ

もう我慢しなくて良い

全てを出して良いんだ

俺は白飯をワシワシした

これでもかとワシワシした

そして最後、わずかに残った銀ダラの身を銀ダラの皮で包んで・・・

「あぁあああああああああぁぁぁ・・・」

俺は最後の最後まで余韻を楽しんだ

銀だらの旨味の余韻を

「なんて幸せなんだ俺は・・・」

まるで世界中の幸せを独り占めしたかのような俺は味噌汁を飲んだ

日本に生まれて、日本人でよかったと思える瞬間である

味噌汁

簡単なようで奥が深い

最後の最後まで俺を楽しませてくれる

そして漬物で締めとした

漬物も手抜きはない

 

また頑張った時に来よう

自分へのご褒美に

そんな俺のとっておきの店である

 

 

そして俺はゲートタワーへと向かった

ビックカメラまで上り詰めた俺は

そよ風の扇風機で話題となったバルミューダ電気ケトルを購入した

ポイントを目一杯使ってだ

 

 コーヒーのドリップポットとしても対応できる奴

これでハンドドリップも楽になる

いちいち台所まで行かなくて済む

カップヌードルも思いのまま

最高だな

電気ケトル