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鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

高月「国宝十一面観音」と長浜「焼鯖そうめん」と「まるい食パン」の旅 01

2017年の黄金週間

今年は多い人で9連休

一般的には5連休だ

そして今日は5月5日こどもの日であり自転車の日でもある

天気もいい

こんな日は幸之助号に乗ってダラダラと1日中走りたい気分だが、俺は首と肩を痛めている為に自転車には乗れない

そしてちまきを食べながら背を比べる為に柱に傷をつけてくれた親父ももういない

なので家にいても仕方が無いのである

以前にも書いた通り俺の黄金週間の予算は5000円だ

これは先月の仕事の入金がまだだった為である

そして来たるべく自動車税の支払いの為に現金を残しておかなければならない

国は恐ろしい

督促状を送ってきやがる

しかも赤い紙で「差し押さえるぞこの野郎!」と

俺は以前、あまりにも高すぎる日本の車に関する税金への抗議のために、あえて支払いを送らせていたのだが

結局は俺の小さな小さな抵抗は何の力にも慣れなかったので最近は素直に払う事にしている

そんな俺は5000円札を財布の中に押し込んだ

小銭をかき集めれば1000円ぐらいはありそうだな

そして予備の為のお金を1万円カメラバックの中に仕込んだ

俺は旅に出る時にはリスク回避の為に緊急用のお金を分散して持ち歩くのだ

財布を落とす事もあるだろう

親父狩りにあって「ジャンプしてみろよハゲ」なんて言われる事もあるかも知れない

そんな時のために俺は帰れるだけの金を分けて持ち歩く事にしている

これはあえて緊急用であり決して旅のお金では無い

このために俺のカバンからは仕込んだまま忘れていたお金がざくざく出て来る事がたまにある

そんな時は非常に得した気分になる

愛用のドンケの中にカメラ二台と御朱印帖と文庫本に朝食用のリンゴタルトと水を詰め込んで一人、家を飛び出したのだ

俺は東海道線に飛び乗った

東海道線は誰も乗り降りしないような駅まで各駅停車しながら米原を目指した

車内は比較的空いている

俺はカバンの中から前日に買っておいたリンゴタルトを取り出して食べた

そして水を飲んだ

事前に見切り品を買っておく事で多少は節約になる

60円の朝食を済ませると電車は醒ケ井に到着、米原まではもうすぐだ

 

俺の旅はまず予算から決める

予算が決まるとその予算内で行ける場所を検討する

日帰りなのか?一泊なのか?2泊なのか?

最近では植物の世話があるので1泊が限界ではあるが

場所が決まると今度は何を食べるかである

食べたい物を決めて店を決める

それから観光する場所を決めて行く

あくまで「食」が中心なのである

そして最後に持って行く文庫本を決めるのだ

これは結構重要だ

一人旅にはかかせないアイテムである

現代ならスマホがあるじゃないかと思われるだろうが、やはり旅には紙の方が良い

なんかそんな気がするのだ

そして今回の俺がセレクトした本は内田百閒の「第一阿房列車」である

 

第一阿房列車 (新潮文庫)

第一阿房列車 (新潮文庫)

 

 師匠である夏目漱石が大好きで、親友は芥川龍之介

猫好きで元祖乗り鉄でもある偏屈な親父

森見登美彦氏にも多大な影響を与えた作家なのだ

この本は目的もなしにただ列車に乗って旅をするだけの話

この本なら一人電車にゆられていても退屈はしないであろうと言うのが、今回俺のセレクトの理由であった

前日に久しぶりに本棚から出して来て読んでみた

やはり面白く読みふけってしまった

そしてこの日も電車の中で俺を飽きさせることなく楽しませていてくれたのである

 

米原に到着すると今度は北陸本線へと乗る変えることになる

そこから琵琶湖の右側を北上するのだ

この辺りは戦国マニアにはたまらない場所でもある

車窓から見えるのは山と田園風景

立ち並ぶ住宅はどれも立派な日本家屋である

昔からつづく風景がこの辺りには残っているのだ

やがて電車は目的地の高月へと到着

俺は2年ぶりに高月の町に降り立った

今まで数回訪れているがいつもは車なのだ

駅には無料の大型駐車場が完備されているので車で来るには非常に便利である

しかし今回の俺は酒をのみたいので電車でやってきたのだ

GWのまっただ中

天気も快晴

しかしほとんど人はいない

ベンチに腰掛けてる若者が自撮り棒で何か話ながらGoProで撮影しているだけだ

俺はさっそく目的地へ向けて歩き出した

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左に見えるのが無料の大駐車場

GWでもガラガラである

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駅前の一等地なのに土地は余りまくっている

そして静かだ

ここで何故俺がはるばる滋賀県長浜市高月までやってきたのか?

実は滋賀県と言うのは京都奈良に匹敵する「仏ゾーン」なのである

しかも観音様の宝庫

仏像ワンダーランドと呼ばれているのだ

そしてここ高月には「国宝」がおられるのである

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このように駅からは道標が建てられている

きれいに舗装された道と道標を目印に歩けば自然と国宝へと辿り着けるのである

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ようやく一人発見

地元の人と思われる

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道沿いにはキレイな花がいっぱいで園芸おじさんを楽しませてくれる

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「左観音堂」と書かれた道標が見えて来た

あそこを曲がれば

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突然現れる

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「国宝観世音」の石碑高々と

ここが向源寺(渡岸寺観音堂)なのだ

右手には神社の鳥居が見えるように同じ敷地内に神社もある

この辺りは神仏習合時代の名残が強いみたいである

そしてあいかわらず人は、ほとんどいない

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公園まで完備されている

今も昔も子供達は観音様の側で遊ぶのだろう

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拝観料500円を払い本堂へ

本堂のみの拝観は無料である

まずは本堂で参拝

そいていよいよ国宝「十一面観音」とご対面である

中には7〜8人ほど人がいた

ここはタイミング的には国宝とマンツーマンになることも多い

なんか凄く贅沢な体験ができるのである

十一面観音様は平安時代の生まれである

深い慈悲をたたえた表情

これはインドや西域の作風を伝えており、我々を魅了する腰を少し左にひねった官能的なプロポーションに大きく作られた頭上面とその配置

耳には「じとう」と呼ばれるイヤリングなど数々の十一面観音の特徴を備えている

小柄ながら王朝時代の装飾美をよく表現した観音像で着衣には切金で美しい文様が繊細華麗に施されている

伏し目がちの穏やかな表情や両頬の豊かな丸い相好に細身でなで肩の穏やかなスタイルなどに平安時代末期・十二世紀の特徴がよく表れていて「もっとも美しい十一面観音像」との呼び声も高いのである

十一面観音には後頭部にもう一つの顔がある

これを暴悪大笑面というのだが

ここの十一面観音様は裏からの鑑賞もできるので、ちゃんとこの暴悪大笑面が見られるのである

「暴悪大笑面」

煩悩だらけの人間を笑い飛ばす顔である

これは必見だ、笑ってはいるが・・・とても・・・怖い・・・

そしてお隣には大日如来が鎮座されておる

このかたも平安時代のお生まれだそうだ

大日如来には「金剛界」「胎蔵界」と異なる2種類の大日如来がおられる

「印」と呼ばれる手の形で見分けがつくのだがここの大日如来胎蔵界大日如来である

法界定印を結ぶ大日如来像は、優しくまとまりの良い穏やかな相好やふくよかな丸いお顔になで肩である。蓮のような衣文に包まれた両膝など、藤原仏の典型的な様式をよく示していてこれもまた素晴らしい大日如来なのだ

俺的にはもはや国宝なのだ

つまり「俺宝」

ちなみに金剛界大日如来は智拳印を結んでおり、忍者はこれを真似したんじゃないかとも言われている

このお寺は浄土真宗大谷派

浄土真宗のお寺に大日如来が奉られているのは非常に珍しいが、やはり滋賀と言えば比叡山最澄天台宗と言う事で昔は天台の縄張りだったんだろうな

でも親鸞の教え的に大日如来は当てはまらないと思うのだが

この辺りは仏教の矛盾でもある

そしてこのとき俺のポケットではある異変が起きていた

さきほどからマナーモードにしてあるスマホが「ブーンブーン」と雄叫びをあげている

これは明らかに誰かが俺に電話をかけて来ている

流石にお堂内では電話に出られない

俺は「また来ます」と外へ出た

 

外へ出て履歴からかけ直すとそれは仕事の入金の電話だった

これで旅の予算が増えた

これも仏様達のおかげかもしれない

「ありがとうございます」俺は本堂へ向かって深々と頭を下げたのだった

その後で俺は御朱印を頂いた

既にここの御朱印は頂いたことがあるが、やはり少しでもお寺に寄付をしたい

こんな田舎の小さなお寺で国宝を維持するのは大変であろう

300円払い俺は御朱印を頂いた

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俺はお寺を後にした

もう一つだけこの辺りで行かなければならない場所がある

徒歩1分程度だが

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このケヤキの御神木は「野神さん」と地元では呼ばれている

村の出入り口を守る神様だそうだ

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到着、高月観音の里「歴史民俗資料館」だ

入場料は300円だが先ほどの向源寺のチケットを見せれば割引になる

しかし俺はあえて割引は受けない

少しでも運営の役に立てて欲しいからだ

展示品はわずかだが、とても素晴らしい展示品が多い

決して国宝でも重文でもない

しかしそれぞれの仏像にこの土地で暮らして来た人々の思いが宿っているのである

戦国時代に戦火から逃れる為に土の中に埋めて仏像は守られたのだ

そして時に観音様は子供と一緒に川に入り遊んで来たという

そんなボロボロの姿になられた観音様達がここには展示されているのだ

俺はのんびりと鑑賞した

この日は富岡鉄斎の絵も展示されていた

 

もう少し離れた場所にも素晴らしい仏像達がおられる仏像ワンダーランドだが、ここから先は駅でレンタルサイクルを借りるか車での移動じゃないと無理だ

正直ママチャリでは厳しい坂もある

なので今日の俺はここで長浜へと向かう事にする

ここで注意が必要なのは高月駅から出る電車は1時間に1本ペースである

正直この辺りはお寺以外何も無い

時間をチェックしながら回られた方が無駄な時間を過ごさなくて住むのである

そして早く駅に着き過ぎた俺はベンチに座り第一阿房列車を読みふけるのであった

 

つづく