東京の話04
俺は魚が好きである
しかし俺の地元ではなかなか美味い魚が食べれない
スーパーで買ってくる魚
飲食店で食べる魚
どれもいまいち
俺の親戚は地元の市場で仲卸店を営んでいた
地元の料亭を相手に商売をしていた
子供の頃によく親戚のおじさんが
「ここが一番美味いんだぞ」
とマグロの中落ちをスプーンですくっては食べさせてくれていた
確かに最高にうまかった
そのおかげで俺は一般的に流通してる魚では満足出来ない体になってしまった
そのために若い頃は魚より肉に俺の心は揺らいでいた
しかし今では俺も立派なおっさん
肉の脂がかなりクドく感じられるお年頃なのである
若い頃と違って食べたら食べただけ即太る
少量でも高カロリーな肉を俺は次第に敬遠して食べなくなってしまった
そのおかげで肝臓の数値は正常値になったのだが
そして親戚のおじさんも極楽浄土へと旅立ってしまった
やがて俺は美味い魚を探し求めて瀬戸内海へ通うようになったのだ
尾道へ
瀬戸内海の魚は美味い
俺は改めて白身の魚の美味さを実感することとなる
でも俺の心の中にはずっと子供の頃に食べたマグロの中落ちの味がいつまでもいつまでも思いでの味として残っているのである
そんな俺は東京へ旅に出た時に築地に行く事にした
豊洲への移転問題で大変なことになっている築地である
この当時の俺は移転するなんて全く知らなかった
俺は市場が好きだ
活気にあふれていていろんな魚が売っていて
全部うまそうで
そんな築地には朝の散歩と朝食を食べに訪れたのだ
始めての築地
人の多さにワクワクする
乾物系の店を見てるだけでも楽しい
すしざんまい
TVで見た事がある店だ
メニューを見て見る。結構気になり思わず店内へ入りそうになるが思いとどまる
でもせっかく築地まで来たのだから場外市場で食べたい
そして優柔不断な俺はいつものように迷いまくる事を想定してあらかじめ入る店を決めておいたのだ
知り合いが以前食べて美味しかったと言っていた店である
俺はとにかくマグロが食べたかったのだ
俺の中でマグロは築地である
築地にこそ全国の良いマグロが集まってくると信じていたのだ
俺はさっそく築地の中を歩いて場外市場を目指した
俺が目指すべき場外市場がどこなのかさっぱり分からない
どこまで立ち入っていいのかも分からない
そんな中で俺は外人の団体に遭遇した
そしてガイドさんに案内されている外人の団体さんのあとをつけたのだ
あった!
ここだ。このあたり一帯が場外市場だ
俺はワクワクしながら一件一件見て回った
だめだ
どの店も入りたい食べたい
しかしこの時の俺はぶれる事無く先を目指した
その店はあった
仲家である
メニューがいっぱい写真付きで張ってある
値段を確認
安いぞ
そして俺はなかおち丼の存在を確認して店内へと入った
店内は外人が多かった
みんな不器用に箸を使いながらおいしそうに食べていた
俺はトロが嫌いなのだ
大トロの炙った奴は好きだが。値段が高くて一生に何回も食べれるような代物ではない
やはり赤身
俺は「なかおち」が大好きなのだ
普段は捨てられてしまうなかおち
庶民のごちそう「なかおち」
俺に「ここが一番美味いんだぞ」と教えてくれた親戚のおじさんありがとう
なかおちは安い
とにかく安い
そして通ぶれる。「この兄ちゃん分かってんなぁ」みたいな
そこがまたいいのだ
俺は当然のごとくマグロのなかおち丼を注文して食べた
うまかったぁ
思いでの味が蘇って来るようだった
これこそがなかおちだ!
味噌汁も魚の出汁が効いていてうまい!
大満足で俺は店を後にした
俺が東京に住んでたら毎週のように築地に通い
全ての店を食べ歩く事であろう
そして俺は再び築地散歩をすることにした
この築地独特の風景はもうすぐ見れなくなるのであろうか?
豊洲へは移転することになるのか?
はたまた築地を改修することになるのか?
豊洲問題についてはまた別の機会にでも書こうと思うが
とにかく俺はうまい魚が食べたいのだ
だから東京都よ頼む
ちゃんとしてくれ
俺より頭がいい人が揃ってるんだから
安全でうまい魚を俺に食べさせてくれ