鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

ロレックスを売却してパナチタンを購入

今日の俺はウキウキである

やたらと蒸し暑いがウキウキである

しかしこんな事ってあるもんなんだな

俺は若かりし頃、とても時計が好きだった

安いのからそこそこ高いのまで数十個所有してた

しかし高いと言ってもロレックスのスポーツモデル程度

20年ほど前は30万程度で買えたからな

それが今じゃ80万以上

この20年給料など上がってないのにな

なんで物価だけこんなに高くなるのか?

正直20年前の30万はちょっと頑張れば簡単に稼げた金額である

ロレックスといえども頑張った自分へのご褒美程度だった

それが今では1万円でもあぶく銭が出来ようものなら歓喜する俺である

 

いつからだろうか?

ふと気がつくと随分と時計の値段が上がっている

正直機械式時計などこの数十年での性能差は無いに等しい

それなのに二倍以上の値段・・・

一体何が起きたのか?

そこそこ高級なイメージのロレックスさえ手が出ないようになっていた

バブルの頃なんて高校生でもはめてたぐらいなのに

とは言ってもロレックスは目立つ

取引先から常に言われる

「ロレックス買えるぐらい儲けてるのなら負けてくれと」

「あんたらだってパチンコさえやらなければ買えてたでしょ」

30万を何に使うかは人それぞれ

みんなが遊びに使うお金を俺は時計につぎ込んだまでのことである

決して儲けてるわけでは無い

しかしやたらと羽振りがよく見える時計でもある

いつしか俺はロレックスをはめなくなった

あのごっつい大きさが邪魔臭く感じたのだ

そんな俺は北欧デザインのスカーゲンを麻生政権の時のエコポイントで購入

やがて電池切れで放置

そしてスマホの台頭

俺はすっかり時計をはめなくなった

 

 

そんな俺がアップルウォッチを衝動買いした

アップルウォッチはとても良い製品

健康面とスポーツ関係に特化して俺はすっかり気に入ってしまった

かなり安っぽいデザインも高感度大だ

正直時計は高級には見えない方がいい

今の時代高級時計なんかはめていたら腕ごと切り落とされて盗まれるからだ

ロレックスをはめてる時なんか常に公衆トイレでドキドキしていた

俺以外イラン人やブラジル人だけだと心臓ばくばくである

正直小便の最中に後ろからどつかれたら何もできない

 

時計に興味がなくなるとロレックスを所有していたことすら忘れてしまう

盗難を恐れてどこかにしまい込んだのもある

そんな俺はふと思い出した

ロレックスの存在を

「どうせはめないし売っちゃおうか?」

このまま持っていても油ぎれで壊れるだけである

「早いとこ売った方がいいな」

前回オーバーホールしてからも随分と年数は立っている

とは言っても空き箱を探すことすらめんどくさく放置していた俺である

そんな俺が数日前からやる気を出した

部屋中を探し回りロレックスの空き箱を発見

中を確認すると付属品全て揃っている

「売るなら今しかねえ」

俺はどこに売却するか検討に入った

今の時代基本的な売却価格はそれほど変わらないだろう

あとはその店の販売力で多少変わる程度か

特にロレックス

昔から安定しているしな

 

一番近い買取店はリサイクルショップ

果たしてこんなガラクタ屋でロレックスを買う奴がいるのか?

俺はとある老舗質屋に狙いを絞り情報を集めた

 

「20万で売れたら今の自転車のパーツを交換して先日のガーミン代も出るな」

 

俺は最低売却額を20万と設定した

それ以下なら捨て台詞を吐いて店を出るのだ

 

店のホムペには最近の売却情報が出ている

やはりロレックスは多い

30年前のオイスターデイトが15万で買取

俺のロレックスは20年前の「16700」

いわゆるGMTマスター1の黒ベゼルという奴だ

20年前に35万で購入して随分とブイブイ言わせた

しかし当時でもロレックスは逆効果で婚活パーティーでは「金遣いが荒らそう」と誤解を受けることもしばしばだった

やはり日本では成金のイメージが根強い

しかしロレックス

時計としては非常に優れている

いわば高級なGショック

とても丈夫な時計なのである

そんなロレックスは昔から高価で取引されてきた

その時代その時代に流行りのモデルが出現

売り時さえ間違えなければ買った値段より高く売れる可能性は十分にある時計なのだ

そんなことを俺は必死に力説してきたが

基本的に俺の言うことは誰も信じない

「そんなことあるわけないだろ」

俺は常に笑い者扱いである

そしてそう言う奴らは皆ロレックスをバカにする

 

「バカっていう奴がバカなんですぅ」

 

こんな子供の決め台詞が当てはまるのもロレックスである

 

 

俺はふと気になり今の相場を調べた

な、なんと100万以上で取引されてるではないか・・・

中古だぞ?

みんなバカなのか?

たかが30万程度の時計だぞ?

俺は何回も目をゴシゴシしごいたが何回見ても100万円の値段がついていた

とは言っても売値が100万円で買取が100万円ではない

俺はあまり期待を持ちすぎないように自分を戒めた

でもちょっとだけ欲を出す

「もし40万で売れたら・・・」

「夢のチタンバイク・・・」

そんな俺は朝一番で質屋に行った

売却する前に最後にはめて見たがすっかり俺はロレックスに興味を無くしている

正直どうでもいい

やたらと重たいしな

俺にとって心拍数すら測れない時計に価値などないのだ

店に入る

査定が始まる

ドキドキである

もし今この瞬間にゼンマイが切れたら・・・

 

どうやら査定は無事終了

「おいくらぐらいをお考えで?」

「全く想像がつきません」

そこで店から提示された金額が、な、な、なんと予想をはるかに超える金額

「80万円・・・」

俺は思わず聞き返した

やはり80万円で間違いないようだ

俺は動揺した

しかし冷静になり80万で取引成立

お互いにウインウインである

 

「貴殿とは今後もいい取引ができそうだ」

 

俺は心の中で店主と握手を交わし

書類にサインした

お金はすぐに現金で渡される

さすがに80万円もあると数えるのが・・大変である

なんとか数え終えて封筒にしまい

カバンの中に厳重に保管して俺は緊張しながら店の外へ出た

周りに誰もいないことを確認して

手にはダミーの空の封筒をもち

気持ち早歩きで車まで歩いた

鍵でロックを外すも再びロックしてしまう

ガチャガチャガチャガチャ

明らかに緊張している

頭の中では目出し帽の集団に囲まれる想像しかできない

なんとか車のロックを解除して乗り込み

ロックをしてカバンを隠して俺は車を走らせた

バックミラーを確認

「誰もつけてないな・・・」

「それにしても80万とは」

ようやく実感が湧いてきた

俺は今80万円を手にしてるんだと

俺は一人首を左右に振る

「信じられないよ・・・」

その存在すら忘れていた時計が80万円になった

正直傷もついていた

しかも購入したのは20年前である

いってみれば「あぶく銭」

しかしこれこそがロレックスである

売り時さえ間違えなければ買った時の二倍以上で売れるのだ

たとえ20年経過していようとも

 

 

さすが俺

若い頃から良い買い物をする

まだ家には6万円で購入した6694が

でもなんとなく売りたくないな

まだ今は売り時ではない

すでに買った時ですらアンティー

今更焦る必要もない

 

 

運転しながら俺はふと思う

「おいおいパーツ交換どころかパナチタンが買えるぞ」

しかもレース用の奴が

でもさすがにおっさんにはオーバースペック

そして80万の自転車など乗っていられないのだ

数秒目を離すだけでも厳重に鍵をかけてしまいそうだ

やはりそこそこで良い

そして今回はあぶく銭

なんせ買った値段の倍以上で売れた

今ここで半分使っても惜しくはない

もともと存在してなかった金だしな

俺は決めた

俺はそのままの足で自転車屋へと向かった

 

 

「すみません」

パナチタンください」

「お金ならあります」

「ほらここに80万あります」

「でも予算は40万で」

カタログを眺める

だいたい目星はつけてある

俺は一番安いチタンのロードバイクを選択した

それでも37万円

どうやら商品が届くのが10月以降なので消費税は10パーになるという

どうせあぶく銭

俺は快く承諾した

シンゾーよ俺の2パーセント思う存分使うが良い

 

サイズはクロモリと同じ

色はチタンのそのものの色

今回はフレームに名前も入れた

なんとなく盗まれにくいかな?と思ったからだ

おそらく俺の最後のバイク

俺は考えた

「あと何年自転車で走れるのだろうか?」

ママチャリとは違うロードバイクである

しかも今あるクロモリもまだまだ乗りたい

将来的にはギア比を変えて2台体制で行く

そう考えるとやはり最後の自転車だな

しかもチタンは錆びない

車に踏んづけられない限り一生ものである

それだけに40万円出す価値は十分あるのだ

 

とりあえず完成車で注文

手付け1万円をはらい

帰宅

 

今ワクワクしながら追加パーツをアマゾンで物色している

まさか俺がチタン乗りになるとは

これも全ては20年前の俺のおかげである

よくぞあの時ロレックス16700を買っておいてくれたな

俺は過去の自分に感謝した

そしてまだ俺には40万の大金が残されている

なので今日の俺はウキウキなのである

多分しばらくはウキウキなのである

 

 

 

 

 

cycle.panasonic.jp

 

 

パナ曰く

「まるで女性の手でやさしく押されているような、すうっと滑らかな加速感に誰もが驚くだろう。2、3回のペダリングで気付いた時には高速域に達するほどだ」

 

 

すごいな、パナチタン

女性の手で優しく押され・・・

 

ああ早く押されてみたい

2、3回の刺激で気が付いた時には絶頂に達したい

 

早すぎだがな