鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

2019ツール・ド・フランス第10ステージ

2019年ツール第10ステージ

休息日前のスプリントステージ

通常なら月曜日が休息日となるが今年は火曜日

日本の3連休に配慮してのことならありがたいが

そんなわけもなく

日本では海の日だというのに梅雨も開けず

街に出ればやたらと咳き込む人がいて直ぐに逃げ帰ってきた

さすがに今はツール期間中

選手同様に観戦する我々の体調管理も大事だ

 

 

サン・フルール〜アルビ
距離217・5キロで獲得標高2900メートル

カテゴリー的には中級山岳か

コース全体に3級4級の山が詰め込まれている

ぞれでも最後の3級超えてからゴールまでは平坦

多分スプリントステージ

でも逃げ切りもあるかもステージ

しかし毎回のことながらレースは蓋を開けてみないとわからない

 

 

翌日は念願の休息日

前日に休めただけにこの日はちょっとだけ頑張るステージ

この日に頑張って足を使っても1日休めるのだ

 

この日の逃げは6名

 

ナトナエル・ベルハネ(エリトリアコフィディス
マッズウルス・シュミット(デンマーク、カチューシャ・アルペシン)
トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)
ミヒャエル・シェアー(スイス、CCCチーム)
オドクリスティアン・エイキング(ノルウェー、ワンティ・グループゴベール)
アントニー・テュルジス(フランス、トタルディレクトエネルジー

 

ギャロパンがようやく逃げに乗ってきた

かつて表彰台のお姉さんをナンパして嫁にまでしてしまったギャロパンである

ベルハネ、シェアーなどお馴染みの逃げメンバー

しかし集団とのタイム差は3分

完全にコントロール下に置かれた逃げである

もはや夢も希望も何もない逃げ

ただひたすらカメラに映るだけである

 

さすがにスプリントステージとなると集団を牽引するチームが多い

その日のステージを狙いたいチームが多ければ多いほど逃げは難しくなる

逃げがほぼ潰された以上はスプリントステージ

こんな日は残り10キロからで十分だ

 

などと集中を欠いていると選手も見てる方もえらい目にあう

残り80キロ地点

突然チームイネオスがペースアップを始める

スプリンターを抱えていないイネオス

クワイトコウスキーで狙えないこともないが彼はツールではアシストに徹する

「一体何が起きた?」

こんな時はとりあえず観客などの旗を確認

「あぁ横風だよ・・・」

自転車はとにかく横風に弱い

ハンドルはとられまくりバランスを崩す

こんな時はエシュロンと呼ばれる斜めに隊列を作り風除けをする

道幅いっぱいに斜めになり走る

そしてこの隊列に入れなかった選手は風を受けて一気に集団から引き離されていく

今回の風向きは前方右

真横でないのでそこまで斜めな隊列にはならないが

とにかくイネオスがガンガン弾けば集団は破壊される

後に取り残された集団はどんどん引き離されていくのみである

通称「横風分断作戦」

退屈な平坦ステージで何かが起きるとしたらこれである

最初に仕掛けたイネオスは事前にチームスタッフがコースを風力計で風向きと風力をチェックして監督に報告

監督から選手に指令が出る

「まるまるキロ地点で曲がったら作戦決行。全力で踏め!」と

イネオスに続きユンボ、EFも協力

ライバル選手を蹴落としたいチームが作戦に協力してくれるのだ

 

しかし最初の横風分断作戦は決定的なダメージを与えることはできなかった

ペースアップでかなり縮まった逃げとの差も再び広がり始める

そして再び事件は起こる

残り35キロ

周りは田園地帯で風除けになるものが何もない

こんな時に横風が吹いたら?

「GO GO GO GO GO!!」

再び横風分断作戦が決行された

今度はドゥクーニンクが仕掛けた

先頭をマイヨジョーヌのアラフィリップがガンガン引いている

そしてまたお仲間が参戦

一時的な三国同盟

イネオスとEFが先頭交代に加わりペースアップ

やがて集団は破壊された

 

集団が破壊されるとまず誰が後方に遅れたかチェックが入る

ここでライバルチームのエースが遅れていれば作戦成功でさらに踏み込む

ライバルがへばりついていれば一旦振り出しに戻す

見たところメイン集団は3つに破壊された

「誰がいない?」

「誰が遅れた?」

どうやら分断した後方の集団に取り残されたのが

ピノフグルサング、リッチー・ポート、ウラン、チッコーネ、

さらに後ろの集団に現在総合4位のジョージ・ベネットだ

ウランは自分のチームの攻撃の犠牲になった

幸い各チームアシストも残っている

後方に残された各チームのアシストがガンガン弾いてなんとかエースを引き戻そうとする

タイム差20秒

ここが踏ん張りどころだ

 

 

分断したメイン集団の先頭はペースアップにより逃げ集団も吸収

さらに攻撃を続ける

こうなると細かな作戦など何もない

前も後ろもとにかく全力で踏むだけだ

退屈なレースも一気に激しくなる

とにかく全力で走りに抜けていく

そんな中で前の集団内にいたランダがバルギルに弾き出される形で落車

後方集団へと落ちていった

テレビでは確認できなかったおそらくバルベルデが前に出てきた時

前に出てペースを落とそうとしたんじゃないだろうか?

キンタナが前方で残っていることだけが救いなモビスターであった

 

一向にペースは落ちない

先頭集団とピノ、リッチーの第2集団との差はどんどん開いていく

もはやアシストも体力の限界で前を引けなくなったのだろう

こうなるとどうにもならない

追いつくのは不可能

あとはできる限りタイム差を広げないでゴールするかであるが

残り5キロ

タイム差はついに1分を超えた・・・

 

 

各チーム有力スプリンターとパンチャーはしっかり前方に残っている

彼らはご自慢のスプリント力で集団破壊にも対処できる

ただ破壊された時に前方の集団へ復帰するのにフルスプリント状態になる

そこでどこまで足を削られているか?が勝敗を分けるカギとなる

そして途中からのハイペースなレース展開

さらに勾配4パーセントほどのゴール前

残り1キロ

サンウェブが人数を揃えて完璧なトレインを形成している

マシューズの番手にはユアン

その後ろにコロブレッリ、そしてサガン、ヴィヴィアーニ

残り300

後方からトレンティンがロングスプリント開始

これを皮切りに各スプリンターもスプリントに入る

しかし発射台をしたがえたマシューズだけが一瞬遅れた

ユアンサガン、ヴィヴィアーニ、他多数

上り勾配で限界に近い足

もはやスプリント力など関係ない

根性と根性の戦い

ほぼ横一線

ヴィヴィーアニが一歩前に出る

するとまたしても横からユンボの選手が

「誰だ、誰だ、誰だ」

ファンアールトだ!

ハンドルを投げ合うヴィヴィアーニとファンアールト・・・

 

 

お互いに勝利を確信できない

判定は写真判定

 

勝者「ファンアールト!」

 

雄叫びとともにチームメイトと抱き合うファンアールト

圧倒的な強さを誇った元シクロクロス世界チャンピオンもツール初勝利の勝利インタビューでは涙を抑えることができなかった

 

 

後方に取り残されたピノ集団は結局1分40秒遅れでゴール

なんでもない休息日前のステージ

一瞬の判断ミスで彼らは1分40秒ものタイムを失った

まだツールは半分

しかしこのあとに控えるTTでもピノはGトーマスからタイムを失うだろう

ただピレネーとアルプスが控えていることが幸いである

ここで勝負をかけるしかないピノであった

 

リッチーは9ステージを乗り切った安心感からか

やはり今年もダメなのか?

こういったところが勝ちきれないピノとリッチー

そして完璧なまでのリスクマネジメントなイネオス

 

結局はスタッフも含めたチーム力なのかもしれない

 

 

 

今日は休息日

ここでリズムが変わることから体調を崩す選手も多い

そして観戦する我々もしっかり休んで体調を整えなければならない

まだまだツールは折り返し地点である

 

 

明日の第11ステージ予想

前半に3級4級とあるがほぼ平坦ステージ

これは休息日に体調を崩した総合エースにはありがたい配慮

やはりガチガチの勝負が見たいしな

コースは完璧なスプリントステージか

またまたユンボだな

今度はフルーネウェーフェン

ドゥクーニンクがしっかりトレインを作ってくるだろうが

力でねじ伏せられちゃうな

第11ステージ予想はフルーネウェーフェンで