鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

2019ツール・ド・フランス第9ステージ

2019年ツール第9ステージ

バルデの実家付近にゴールするバルデコース

最後に登場する3級山岳はまさにバルデが子供の頃に走った峠

そしてここにはボーナスポイントが

 

サン・テティエンヌ〜ブリウド
距離は170・5キロで獲得標高2900メートル

スタート直後に1級山岳が登場するのでそこそこ獲得標高がある

しかし1週目の序盤に登場する1級山岳はみんな仲良くのんびりと登る傾向が強い

そしてこういったコースは逃げができやすいコースでもある

頑張って1級さえ越えてしまえばあとは真ん中あたりで3級、そしてゴール前にバルデ峠があるだけだ

おそらくバルデ峠までは確実に逃がしてもらえるはず

そして展開次第では

「どうぞ逃げちゃってください」

「僕たちは僕たちで別のレースをしますんで」

となるのだ

 

レースはどうやら激しいアタック合戦が繰り広げられていたそうだ

逃がしていい選手、逃がしてはダメな選手を選別

総合タイムが上位の選手はドゥクーニンクやイネオスが許さない

そんなこんなで15キロまでアタック合戦は続き

15名の逃げが形成された

 

イバン・ガルシア(スペイン、バーレーンメリダ
ヤン・トラトニク(スロベニアバーレーンメリダ
ルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
マルク・ソレル(スペイン、モビスター)
オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)
トニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィズマ)
サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)
ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)
ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード
ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ)
ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル)
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
ロメン・シカール(フランス、トタルディレクトエネルジー
アントニー・ドゥラプラス(フランス、アルケア・サムシック)
ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス

 

かなり豪華な名前がずらりと並ぶ

登れる選手、スプリントできる選手、独走力ある選手入り乱れての逃げ集団

とりあえずはみんなで協力して逃げる

メイン集団からお許しが出るまではチームを超えた仲間なのだ

 

そしてこの序盤のアタック合戦でデマルキが落車リタイア

顔からの出血が心配されたがどうやら怪我は思ったよりひどくない模様で一安心

番組中に情報が入ってこないのはいろいろ勘ぐってしまうからな

マジでヤバイときはチームも公表を控える

 

放送が始まると

ルイコスタがメイン集団から飛び出して逃げに乗ろうとしている

おそらくこれが最終便

逃げ集団まであと25秒

突然横に並ぶチームカー

なにやら監督と話をするルイコスタ

そして右手を上げてご立腹ポーズ

監督命令でルイコスタはメイン集団まで戻ることとなった

あと25秒まで迫っていたのに

これがどう影響するのか?

 

逃げとメイン集団のタイム差は7分を超えている

残り距離から考えるとまだまだ逃げを捕まえれるタイム差ではあるが

一向にタイム差は縮まらない

それどころか少しづつ開いていく

集団の牽引はドゥクーニンクだけ

すぐ後ろにはイネオスが睨みを利かせる

「ダメだ・・今日のメイン集団は明らかにやる気がない」

コース的に考えられるのはサガン、マシューズなどのパンチャー系のステージ勝利

そして逃げ切り勝利だ

昨日のレースが厳しかっただけに総合はお休み気味

やる気を出すのはバルデだけ

しかしこのままではバルデ峠までに逃げを捕まえるのは無理

正直AG2Rのコントロールだけでは逃げは捕まえられない

ボーラ、サンウェブ、バーレーン、ミッチェルトンあたりも協力しれくれないと厳しい

でもみんなやる気がない

それもそのはず

今日は大人数の逃げ

基本的に逃げに選手を送り込んでいるチームは集団の先頭を引かない

せっかく逃げに乗せた自分のチームの選手をわざわざ自分のチームの力を使い吸収することになるからだ

そう考えるとバーレーン、ボーラ、サンウェブ、トレック、AG2R、ロット、モビスター、ユンボ、EF、ミッチェルトン、ディメンションデータ、トタルディレクトエナジー、アルケアサムシック、コフィディス

ほとんどのチームは集団の先頭を引かない

そしてイネオスやFDJ、アスタナなど総合を狙うチームも引く理由がない

なぜなら彼らは別に先頭に追いつく必要もない

この日は彼らが勝負するステージではないからだ

結果的にマイヨジョーヌを持つドゥクーニンク・クイックステップののんびりコントロールとなる

そしてタイム差はどんどん広がっていく

 

 

正直放送開始時点で逃げは容認されたような状態

なんせバルデのチームまで逃げに選手を送り込んでいる

前待ち作戦と言うには平坦すぎるコース

普通に逃げで勝負を狙いに行っている

こんな日は逃げ集団だけ見ていればいい

 

逃げも逃げだが仕掛けどころがないために

最後のバルデ峠までは誰も動かない

ここでスプリント力のない選手は抜け出そうとアタックを仕掛ける

一方スプリント力ある選手はなんとかくらいつき下りで追いつけばいい

 

逃げ集団も逃げ集団で細かなアタックが出るが決まらない

さすがに残り距離が40キロ以上あるような場所で動いても最後まで逃げ切るのは難しい

全盛期のトニー・マルティンなら単独逃げの可能性もあるが

さすがに今のマルティンでは厳しい

そしてペストルベルガーがアタック

これには数人が反応

逃げ集団が割れた

ペストルベルガー単独先頭

ベノート、トラトニク、ナーセン、ストゥイヴェン、ソレル、インピーの追走集団

ペストルベルがーは追走に15秒差で最後の3級山岳サンジュスト峠に入る

そしてメイン集団とは13分差である

 

ここで追走集団が先頭に追いつき8名の逃げ集団に

勾配のきついポイントでロッシュとベノートが抜け出した

おしゃれとの評判の高いロッシュ

パリへ向かう飛行機では新調したスーツをビシッと着こなすという

この辺りキングカズに通じるものがあるな

そしてこの二人にインピーが合流して逃げは3人に

「嫌な奴が来たな・・・」

スプリントのあるインピーの合流

完全に勝ちパターンに持ち込んだインピーであった

 

なんとかしてインピーを引き剝がしたい

しかし引きはがせないまま3名で最後のバルデ峠を登る

正式名称はサンジュスト

最初にロッシュが遅れた

先頭はベノートとインピーに絞られる

山頂を超えて下りに入る

ロッシュが合流した追走も迫り来るが

完全に勝ちパターンなインピー

ベノートは先頭交代を拒み最後の力を溜め込む

こうなったらインピーは引くしかない

自分が引かなければ追走に追いつかれてしまう

もはや力でねじ伏せるしかないのだ

全く牽制することもなくガンガン先頭を引くインピー

残り200

一か八かでベノートが早掛けのスプリント開始

彼が勝つにはこれしかない

しかしスプリンターにも分類される南アフリカチャンピオンのインピー

あれだけ先頭を引いても足はまだ残っていた

完全にスプリント力で相手をねじ伏せて

嬉しい嬉しいツール初勝利

 

ゴール後には涙が止まらなかったインピーだった

 

 

一方メイン集団もバルデ峠に突入

ここでアシストにギャロパンを従えてついにバルデが動いた

バルデ渾身の故郷アタック!

反応したのはすっかり影の薄いリッチー

彼にとってもこの9ステージは特別な思いがある

2年連続第9ステージで落車リタイア

そんな嫌なジンクスをうち破るためにもここで仕掛けなければならないのだ

メイン集団はイネオスが牽引して静観

おそらく山頂までに追いつくペース配分

そして一応バルデに花をもたせたのかもしれないな

さすがにここでバルデをあっさり吸収してしまうと地元民の精神的ショックは計り知れない

あくまで差し障りのないようなペース配分でイネオスはバルデたちを捕まえた

そしてバルデをチラ見するクワイトコウスキー

「これで満足かな?」

メイン集団は下りに入る

おそらく全世界の人が祈ったことだろう

「リッチーが落車しませんように・・・」

 

 

無事下りきるリッチー

これで一安心

あとは集団で仲良くゴールすればいい

そして第9ステージを乗り切ったリッチー・ポート

今年は何かやってくれるのかもしれない

幸いにもフルームはいない

チームは違えど意図せず結果的にフルームのアシストをしてしまうリッチー

もはや本能なんだろうな

かつての飼い主に犬が逆らえないように

それだけに今年は自分のために走れるのだ

 

 

 

今日は海の日

3連休最終日

とは言ってもフランスでは関係ない

今日の第10ステージは基本スプリントステージ

コース全体に小さな山が散りばめられてるだけに逃げ切りもあり得る

そして火曜日は休息日

今日ある程度出し切っても問題はない

ハイペースでいけば案外厳しくなるのかもしれないな

で、第10ステージ予想

どうやら最後は5パーほどの少し上り勾配

こうなるとサガン、マシューズ、トレンティン、コロブレッリ

ここにスプリントチームも加わり先頭をコントロールするチームは豊富だ

そうなると逃げは潰されるかな?

考えても仕方がないな

 

直感でマシューズ

 

第10ステージはマイケル・マシューズで