鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

逃げた、初山

初山が逃げた

イタリアでの出来事だ

イタリアのダヴィンチ村

あのレオナルド・ダヴィンチの生誕地である

そんな田舎の村から大集団が自転車で走り出す

自転車と言っても最新の技術が投入された軽く100万円超えるような自転車だ

自転車に乗る人たちはピチピチな服に身を包み股間がやや膨らんでいる

これはパッドが入ってるため

長時間硬いサドルに座ってるとお尻が痛くなる

とは言ってもママチャリみたいに全体重をかけるわけでは無い

あくまで3点支持

サドル、ハンドル、ペダル

それぞれに体重を分散するのだ

簡単に説明すればジロ・デ・イタリアでのお話

イタリア一周レース

その第3ステージでの出来事だ

中継が始まるとNIPPO所属の元全日本チャンピオン初山翔が逃げていた

大集団を引き離し圧倒的な差をつけて初山が単独先頭だ

もしこれが初めてサイクルロードレースを見た人なら驚くだろう

そしてこう思うはずだ

「優勝できる」と

しかし自転車というのは空気抵抗との戦い

通常はアシスト呼ばれる選手たちが自分たちのチームのエースを守るべく風よけになり大事に大事に勝負ポイントまで運ぶ

その中で逃げるというのは常に風を受け空気抵抗を受け疲労する

自転車で走るには大集団の中で走る方が圧倒的に優位なのである

そんな中でなんで逃げるのか?

何も悪いことをしたわけでは無い

これも戦略の一つ

詳しいことはめんどくさいので省略するが

NIPPOのようなランクが落ちるチームはとにかく目立つことが必要

スポンサーであるNIPPOの宣伝係としての役割もある

昨日初山が逃げたことでテレビカメラは常に初山を映す

そこには大きくスポンサー名NIPPOの文字が常に全世界に放送される

その他小さなスポンサーではあるがエネオスもアピールできたことだろう

「元スカイはイネオスだがエネオスってなんだよ」

おそらく世界中の人がビールやワインを飲みながらつぶやいたことだろう

そして世界中の人はこう思う

NIPPO」ってなんだろ

そして検索する

なんだ道路工事の会社か

そこにどんな宣伝効果があるのか俺には甚だ疑問ではあるが

とにかくNIPPOとしてはニコニコな初山の逃げである

ジャージには外人が大好きな漢字も書かれている

「この道の先に」

外人には意味不明だと思われる

 

昨日は平坦ステージ

残り5キロからトリッキーなコース設定

本気を出すのは正直残り5キロからでいい

しかしコースの全長は220キロ

長い長いサイクリングの始まりだ

「誰か逃げろよ」

「いやだよ疲れるし」

「こんな序盤から体力使いたくねえよ」

「おいおいなんか日本人が逃げたぞ」

「ちょうどいいやあいつ一人逃がそうぜ」

逃げるにしても仲間はいた方がいい

最低3人

できれば多ければ多いほどいい

そして終盤で選りすぐられた5人ほどに絞り込めば優勝の可能性も僅かながらに見えてくる

しかし昨日はスタート直後から逃げたのは初山1人だけ

結局は逃げたというより逃がされた

単独の逃げならいつでも簡単に捕まえることができる

しかもちっこい日本人

正直名前すら知られて無いかもしれない

初山を1人逃した集団はのんびりとおやつを食べながら談笑である

「明日はミシュラン東海版の発表だよな」

仁徳天皇陵世界遺産に認定されるのかな?」

なんて会話があったかどうかは知らない

そして食べて飲めば当然出したくなる

道路脇で止まり、または走りながら放尿タイム

これが東京オリンピックではどうするか問題になっている

選手たちは一応家のない場所ですることを心がけていはいるが

出るものは仕方がない

自宅の前がコースに設定されてる家では見知らぬ外人が突然庭先で玄関先でおしっこをするかもしれないのだ

まぁ長い長いレース

欧米では暗黙の了解だが

果たして日本ではどうするのか?

 

結局初山は144キロの距離を逃げた

集団は世界最強逃げ屋のデヘントを先頭にのんびりとサイクリング

しかし途中で風がいたずらをする

猛烈な追い風、横風

「エースを守らなければ」

各チーム危険回避のためピリピリしだす

そして自然とペースアップ

トレックはふと思う

「このまま日本人を捕まえてしまえばチッコーネが山岳ポイント取れるんじゃね?」

トレックがお仕事開始

こうやって逃げた初山は捕まった

初山が捕まるとすぐに赤旗が振られる

これは注意喚起の旗

「危ないですよ」

「ペース落としてくださいね」

集団からカウンターで飛び出す選手もなく

そのまま終盤の街中へ

街中は危険なコーナーが潜む

落車も発生

ゲオゲガンハートなどサブエース級も転ぶ

集団は80人ほどに絞られる

各チームトレインを組もうと位置取り合戦

残り1・5キロ向かい風

連続するコーナー

上がったスピードも減速そこから再び加速

そしてスプリンター同士の最後の戦いが始まる

誰だ誰だ

FDJがかろうじてトレイン作ってる

アッカーマンはヴィヴィアーニマーク

隙間からちらちら見えるのはポケットロケット

ガビリアもいるぞ

低い姿勢でもがくヴィヴィアーニが斜光ぎみに進路を塞ぐ

そしてフル加速

大きな鼻で空気の壁を切り裂く

ガビリアかヴィヴィアーニか・・・

 

 

ヴィヴィアーニが両手でジャージを指差す

「ドゥクーニンク・クイックステップです。どうかよろしくね」

「そしてイタリアチャンピオンジャージです」

「イタリアチャンピオンがジロで勝ちましたよ」

「どや!」

負けたガビリアはそっと手を差し伸べお互いの健闘をたたえる

この2人は東京オリンピックのトラック競技でも金メダルを争う関係だ

力を出し切ったヴィヴィアーニ

しばらく息を整える

そして歓喜

イタリアも歓喜

 

 

 

しかし出されたリザルトにヴィヴィアーニの名前がない

そうなのだあの斜行が反則とされ降格処分

ガビリアが繰り上げでステージ優勝となった

唖然とするヴィヴィアーニをカメラが執拗に追う

表彰台では喜ぶことなく無表情なガビリアだった

 

 

マリアローザはログリッチェがキープ

ジロはまだ始まったばかりである

 

 

 

さて今日はミシュラン東海版の発表があるとか

名古屋に3つ星はあるのか?

スガキヤは星を獲得できるか?

楽しみだな

でも本は高いから買う気ないけどな