鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

ゲートタワー「和食バル音音」湯葉と揚げ出し豆腐ごはん 1100円

待望の雨である

花粉が飛ばない

しかし明日が怖い

 

今日は体のメンテ日

いつものようにお出かけをしたがあろうことか考え事をしていてバスを乗り越してしまった俺である

まぁいい

どうせ俺は糖尿病

歩かなければならない

俺は一駅ならぬ、一停留所分歩いて戻った

時間にして5分ぐらいか

そのために恒例の朝食を兼ねた時間つぶしドトールへ行きそびれてしまった俺である

仕方なくファミマへ駆け込みツナのコッペパンを購入

ジョージアの自販機でイタリアのドリップコーヒーを最大限に濃いめで購入

駅のベンチに腰掛けて束の間のブレックファーストだ

電車から降りてくる人々が皆俺をジロジロ見ていく

何故俺は他人から二度見されるのだろうか?

未だにその謎は解けない

 

電車に飛び乗り車窓を眺めると道路が封鎖されて沿道がピンク色に染まっている

「そうか今日は名古屋女子マラソンか」

正式名称は忘れたがそんなようなマラソン大会

要するに女の戦いである

しかしマラソン選手はすごいな

42キロなんて歩くのも大変なのに

そこそこのスピードで走っちゃうんだからな

駅から外に出ると早くも雨が降り出していた

俺はフードをかぶった

傘がないわけじゃないけれど・・・

「また氷雨か」

どうしても思い出してしまう

昭和の名曲

子供の頃でもなんとなく意味は理解していた

やけ酒ではなく

やけコーラを飲みながら口ずさんだものである

「飲ませてくださいもう少し・・・」

「酔ってなんかいないわ・・・」

 

「さて走るか!」

先ほどのマラソンに触発された俺は目的地までの数百メートルを走ることにした

かつては鈍足サイドバックとしてならした俺である

俺は走り出した

駅前は住宅街

寂れた映画館もBARが5〜6件すらない

あるのは居酒屋が一件のみ

そんな寂れた町のメインストリートを俺は疾走した

「マネー」

「マネーメイクスヒム クレイジー・・・」

「いつか奴らの足元にビックマネー叩きつけてやる!」

目的地までは直ぐに到着

当然ビッグマネーも稼げていない

純白のメルセデスもプール付きのマンションも最高の女とベッドでドンペリニヨンもできない

欲しいものは全てブラウン管ではなく液晶の中

これも時代だな

そのうち有機ELの中とかに変わるのかな?

 

メンテを終えた俺は再び名駅へと戻った

いつものように飯を喰らうためだ

それはランチタイム

とても有意義で素晴らしい時間を俺に提供してくれるのだ

俺は自分の中の「俺ルール」を破りゲートタワーを目指した

俺は糖尿病

ただいま減量中

そのためにできる限りヘルシーなものを食べたかったのだ

目指したのは女子に人気なヘルシーな定食を提供してくれる店

しかしすでに満席

そして行列

俺は断腸の思いで断念した

「よし第2希望だ」

しかし今日のゲートタワーは混んでいる

いつもなら並ばずに入れる店も行列である

「な、なんてことだ・・・」

みんなこのタイミングを狙っていたのかもしれない

休日の雨

花粉が飛ばないお出かけ日和

そして重なるマラソン大会

来たるべくホワイトデー

条件は全て揃ってる

それが今日なのだ

俺は多少並ぶのを受け入れることにした

平成も終わろうとしている今だからこそ俺はあえて行列に並ぶという試練を自ら与えたのだ

並んだ先は「和食バル音音」

俺のお馴染みの店である

「この店で並ぶのは初めてだな」

俺の第2希望のメニューは植物性たんぱく質定食

正式には「湯葉と揚げ出し豆腐ごはん」である

5分ほどだろうか

ようやく俺の番が来た

俺は知っていた最初からカウンターが数席空いていることを

店によってはひとり客を先に通してくれる店もあるがここは違うみたいだ

カップルなんてものは行列に並んでるときですらイチャイチャして幸せなんだから後回しにして孤独なおっさんを先にするべきである

しかし俺は待った

いつまでも待った

その結果俺はカウンターへと案内された

俺が店に来た時から誰1人として座ることのなかったカウンターの空席へと案内されて俺は腰掛けた

「どっこいしょ」

カバンを足元に置いてメニューを確認

店員のお姉ちゃんを呼びつけて注文した

湯葉と揚げ出し豆腐ください」

以前から気になってたメニュー

しかしなかなか注文できずにいた

それはヘルシーすぎるんじゃないのか?

そしてこの店で一番安いメニュー

俺はいつも最安値のメニューを注文するのを躊躇するのだ

「このおっさんハゲてるくせに金持ってないのかよ・・・」

なんて思われるんじゃないかと思ってしまうのだ

しかし俺は勇気を振り絞り注文した

「ごはん大盛り無料」の文字が気になったが

減量中なことを思い出し

煩悩まみれな自分を戒めた

そして注文の決め手となったのが「比叡山延暦寺御用達」の文字

どうやら湯葉や豆腐は比叡山御用達の店から仕入れてるみたいだ

最澄・・・

天台宗・・・

エリート最澄と天才空海

当時半分も生きて帰れないような時代に唐に渡り最新の仏教を持ち帰った二人

やがて二人は高雄の山の中で出会い

最澄空海の弟子になることを志願

しかし理趣経をめぐり二人は決裂

さらに最愛の弟子まで空海に取られた最澄

失意の中、比叡山に帰り

天台宗は完成することなく短い人生を終えた

不足していた密教の教えは弟子たちが唐に渡り学ぶことで天台宗は全部入り宗派となったのだ

そんなことを思い巡らしていると

 

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運ばれてきた

 

湯葉と揚げ出し豆腐ごはん」

 

揚げ出し豆腐の上にはかき揚げが鎮座している

これは意外なサプライズ

俺は想像した

後半30分

「ミニかき揚げ丼」を想像した

メインはかき揚げと揚げ出し豆腐

小鉢が3種

湯葉胡麻豆腐、ひじき

そして味噌汁と漬物

「なかなか良いじゃ無いか」

「植物性たんぱく質豊富だぞ」

そして何よりかき揚げの存在が

彼がこの膳にいることにより華やかでボリューミーになるのだ

そして最終兵器へと

「さて何からいくか?」

「迷うな」

俺はしばし思案した

この膳のにあるもの全て俺の好物だからだ

「まいったなぁ」

「でもやはりかき揚げだよな」

「男の作法 池波正太郎

俺はかき揚げを半分の半分食べた

「さっくさくだぞ」

「うまいよ」

「久しぶりに揚げたてのかき揚げ食べたよ」

「もうこれで白飯一杯いけちゃうけど我慢我慢」

炭水化物は控えめに

俺は半分だけかき揚げを食べた

そしてひじきで気持ちを落ち着かせる

いつだって奴は俺を落ち着かせてくれる鉄分たっぷりな憎い奴

鉄分だけじゃ無いな

カルシウムに食物繊維

俺の体が欲してるものばかりである

奴は一旦俺の胃の中に入ることにより落ち着かせる

「慌てるな一旦下げて組み立て直しだ」

地味な存在だが本当に頼りになる存在

それがひじきである

そして赤だしを一口

悪くは無い

しかし最高でも無い

これはこれで致し方が無い

赤だしは難しい

そして俺は絶対的エース

得点王ファン・ニステルローイ

揚げ出し豆腐へと箸をつけた

箸で半分に切り一口サイズに

そして一思いに口の中へと

「あぁ豆腐が、衣を身にまとった豆腐が・・・」

「さすが比叡山延暦寺御用達」

「豆腐が豆腐が・・・うまいのである」

しっかり水切りされた豆腐

しかしちゃんと大豆の甘みがみずみずしく口の中に広がる

スコールズがボールキープした瞬間に動き出す両サイド

ギグスベッカム

そして右サイドバックのGネビル

「坊さんもこんなうまいもの食べちゃダメだよ」

今や大豆の味がちゃんとする豆腐は貴重で高価だ

我々はアベノミクスにより激安豆腐もどきを購入してしまうからだ

それはただ豆腐の色形をしているというだけの豆腐

やはり本物はうまい

 

再び俺はひじきの助けを受けた

ひじきはしきりに両手を下へ下へと

「落ち着け落ち着け」

そしてバックパス

そこにはリオ・ファーディナンド

彼はドリブルで中盤まで上がりそのまま相手を抜き去る

DFでありながら攻撃大好き

しかし本職の防御も決して手抜きは無い

鉄壁である

「さて次は・・・」

いよいよ・・・ジャックナイフ

湯葉である

小鉢に入れられた湯葉はとても小さい

そしてさらに小さいわさびの球体が上に乗せられている

「な、なんて小さな・・・」

鼻くそだと言われてもわからないぐらいに小さい

かろうじて緑色な時点で見分けがつく程度である

俺はその小さなわさびを半分に

そしてとりわけた湯葉の上に乗せた

そして口の中へ

「うまいなぁ・・・」

こんなに小さくても旨味がとんでも無いことになってる

これはとても良い湯葉

確かにとても良い湯葉なのだ

「やれやれ」

「本当に比叡山の坊さんは罪だな」

切れ味抜群ジャックナイフ

もう誰にも止めることはできない彼のドリブル

ライアン・ギグス

自分の弟の嫁を寝とっただけのことはある

 

再びひじきにボールを預ける

そして右サイドへ展開

そこにはベッカム

胡麻豆腐」である

同期のギグススコールズと比べるとどうしても才能が見劣りする彼は努力でカバーした。彼は誰よりも泥臭くピッチ上を駆け回った

あんなにイケメンなのに

そんな胡麻豆腐もまた噛めば噛むほど旨味が旨味が

上に乗せられたワカメらしき海藻

これがGネビルの役目を果たしている

親友同士のワンツー

ベッカムを縁の下で支えるのが熱血男Gネビルである

彼の存在なしにベッカムは敵を欺けない

右足から繰り出されたセンタリング

美しく弧を描き中央へ

そこに走り込むのはベビーフェイスの殺し屋ことオーレ・グンナー・スールシャール

半分残されたかき揚げだ

彼には僅かな時間を与えてやればいい

その与えられた時間で確実に結果を出す男

それがスールシャールであり半分残されたかき揚げなのだ

俺は天つゆを吸い込みまくったかき揚げを半分残しておいた白飯の上に乗せた

そして一気にわしわしと

「ソーシャー!!アンビリーバボー、アンビリーバボー」

思い出すのはあの1999年カンプ・ノウの軌跡

ロスタイム3分での大逆転撃

そして今スールシャールはユナイテッドの監督となりCLでパリ・サンジェルマン相手に大逆転撃

「また思い出しちゃったな」

それほど〆となるミニかき揚げ丼は美味かった

泥臭くていいのだ

つま先でコースを変えるだけでいい

とにかくボールはゴールネットへと突き刺さったのだ

とにかくボールはベッカムシェリンガムと経由して最後はスールシャールが決めたのだ

 

ベンチで呆然と立ち尽くすマテウス

ピッチで泣き崩れるクフォー

何度も何度も地面を叩き彼は号泣した

 

 

「ごちそうさま」

 

俺は素晴らしいランチを終えた

 

これは俺のお気に入りメニューに入れてもいいな

やはり豆腐はうまい

そしてヘルシー

考えてみたらほぼ精進料理

ダシ以外は植物の恵みだな

 

 

俺はユニクロを冷やかしビックカメラへと向かった

そしてポイントを使いブルートゥースイヤホンを購入

JVCが調子悪いので買い換えることに

今度はJBLの安いやつ

色はランバラル色

 

 

 そして本を2冊

 

死んでいない者 (文春文庫)

死んでいない者 (文春文庫)

 

 

 

 

これ読むとまたライカを持ち出したくなるんだろうな

ソフトフォーカスレンズ欲しいな