鯖棒亭日乗(下)

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大名古屋「レアルグランデ」長久手冨田豆腐定食1100円

今日は俺にとってのGW初日

とは言ってもとりあえず単発のGW

厳密に言えば連休ではなく単なる日曜日なのでGWと呼ぶには少しばかり問題があるかもしれない

今月の俺はひたすら働いた

仕事はまだ終わりが見えていないがとりあえず休息日

俺の体は悲鳴あげている

そのために今日はマッサージを受けてきた

全身カチコチの体を強く揉みほぐされ筋肉を一時的に破壊される

体の状態が悪ければ悪いほどマッサージは激痛へと変わる

その痛さは歯医者なんか比べ物にはならないほど痛い

それでもその痛みに耐えればかなり楽になる

これで俺の体も一時的に復活

俺は軽快に駅の階段を1段飛ばしで駆け上がり名鉄電車に飛び乗った

電車は神宮前に到着

駅を見ると大杉漣さんのドラマを思い出す

ラーメン屋の店主役だったドラマだ

途端に寂しくなる

しかしいつまでも悲しみに暮れてる場合ではない

とにかく俺は腹ペコなのだ

大杉漣さんの最期を看取った松重豊さんも孤独のグルメが始まった

そして井之頭五郎氏も相変わらず腹ペコなのである

俺は名駅へと向かった

名駅で降りてエスカレーターに殺到する人波をかき分け階段へと向かう

やはり少しでも歩きたいからだ

歩くことにより少しでも多くのカロリーを消費してより多くの美味いものを食べたいのだ

そんな俺

いつもは優柔不断で何を食べるか決めることができずにレストラン街をウロウロする

その姿はまるで不審者である

何回も何回も同じ店のランチメニューを覗き込む

予算とランチメニューの総カロリーで悩みに悩む

店員と目が合えば気まずくてその店は除外される

そしてあまりにもウロウロしすぎてそのビルにとどまることさえ許されなくなる場合も多々あるのだ

しかし今日の俺は冴えている

すでに何を食べるかは事前に決めてある

あとはエスカレーターで3階まで登るだけである

あの大名古屋ビルヂング

俺は少しカッコつけながらエスカレーターで上へ上へと登った

一瞬横目に何かが見えた

俺は思わず振り返った

「な、なんておっぱいしてやがんだ・・・」

俺は通りすがりのお姉さんに釘付けになった

「いかんいかん、これではまるで財務省じゃないか」

どうやら俺はあまりにも疲労しているみたいだ

こういった時は本能のまま行動しかねない

気をつけなければ

俺はなんとか3階へとたどり着いた

大名古屋はGWといえども人が少ない

この人の少なさが好きで俺はよく利用するのだ

しかしこの日は珍しく台湾ラーメン「味仙」に行列ができている

どうやら観光客がこんな僻地までやってきたみたいだ

そんな行列を尻目にお向かいのレアルへ飛び込んだ

レアルグランデ

焼き鳥と唐揚げがメインの居酒屋系の店だ

とは言っても俺はランチしかこないのでランチメニューのことしか知らない

そしてこの店はランチ時はいつもガラガラなのである

それは開店当初から変わらずガラガラなのである

そんなところが俺は気に入っている

俺が入る店は大抵ガラガラだ

そのためか俺が通う店は突然消滅することも多々あるのだ

なので俺はいつも思うのだ

「食べれるうちに食べておかなければ」

俺は迷うことなくレアルグランデに飛び込んだ

どうやら俺が一番乗り

俺は一人カウンターに腰掛けた

すでにメニューは決めてあるが一応迷うふりをしてみた

これは「何あのおっさん意気込んで入ってきてんだよ」と思われないようにだ

あくまでさりげなく入店

一通りメニューを確認して少し悩み注文という流れである

俺はメニューを静かに戻すと厨房内のお姉さんにアイコンタクトを送った

「豆腐定食と唐揚げ3個と生中」

お姉さんは俺の注文を即座に記憶して紙に書き記した

するともう一人来店

そのあとで家族連れも来店

さすがにGWである

いつもの貸切状態とは違うのだ

しかしそのあとで外から聞こえてくる声は「唐揚げしかないぜ」

これがこの店の客の少なさなの理由かもしれない

やたらと唐揚げのメニューが目につく

鳥のもも焼きもあるのに

そして誰もが気付くことすらしないメニュー

それが今日俺が食べることとなった豆腐丼

「国産大豆使用 長久手冨田豆腐定食」である

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これに唐揚げ3個セットを追加注文

要するに「たんぱく質祭り」である

植物性たんぱく質と動物性たんぱく質を同時に摂取できる夢のような定食

それが今回の俺のセレクトなのだ

それにしても何故焼き鳥屋で豆腐なのか?

そしてあえて豆腐丼をメニューに加えるということはきっとかなりの自信作に違いない

鶏肉と豆腐

同じたんぱく質でも相反する食材と言っても過言ではない

高カロリーな唐揚げと低カロリーな豆腐

ほとんどの人は唐揚げを食べたくてレアルにやってくる

そこで豆腐を食べようと思う人は少ないだろう

需要としてはがっつり食べたい彼氏に付き添った彼女用の低カロリーメニューなのかもしれない

そしてこの豆腐定食

値段がなんと1100円

ご飯の上に豆腐が載っているだけの丼とサラダと小鉢と味噌汁で1100円

これは相当上等な豆腐に違いないと俺は踏んだのだった

俺はできる男風に新アイパッド信三郎帆布のカバンの中から取り出した

カバーを開けると俺のアイパッドが一呼吸おいて無料Wi-Fiをキャッチ

俺はできる男風にネットの海を漂った

そんな俺の前に生ビールが差し出された

カウンター越しに先ほどのお姉さんが微笑んでいる

俺はしっかりと彼女から生ビールをキャッチした

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お姉さんが生ビールをサーバーから注ぐのに少々手間取っていた

どうやら一番客の宿命かもしれないな

俺の提供された生ビールはジョッキの縁に氷が鎮座していた

まぁいいさ

今日はGW

全て許そう

俺は将来サトリを開き如来になる男だからな

俺は早速一番搾りを一口飲んだ

「プハァァああああああ」

仕事の疲れが一瞬で吹き飛んでいく

やはり昼に飲むビールは格別である

そんな世の中の幸せを独り占めしてるかのような俺の前に唐揚げが置かれた

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「たまらんな」

生ビールと唐揚げ

最高の組み合わせ

しかも熱々だぜ

俺は箸を取り一口食べた

相変わらず柔らかでジューシーだ

一体何をすればここまで柔らかくなるのか?

鳥の確かな旨味も感じられる優秀な唐揚げである

ただ味付けがかなり甘い

おっさんとしては3個が限界だな

2個がベストと行ったところか

ポン酢なんかつけるといいかもしれない

梅ポン酢とか

あの京都の「おうすの里」で売ってるやつ

それか大根おろしだな

いっそのこと辛味大根も面白いかもしれない

シンプルに本わさびちょい乗せ

名古屋だから味噌を・・・

と思ったが今から思うとあれは味噌の甘さのようにも思えてきた

それならあんこだな

小倉唐揚げ

観光客は大喜びだろう

そんなことを考えながら俺は唐揚げと生ビールという至福の時間を堪能した

「俺、生きてる」

なんて確信できた時間でもある

そしてついに奴が俺の前に置かれたのだ

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国産大豆使用 長久手冨田豆腐定食

何度も言うが1100円である

見ての通りご飯の上に豆腐が乗っているだけだ

俺はまず周辺をキョロキョロした

とりあえず醤油を探したのだ

しかし鳥屋に醤油など置いてあるわけもなく

そして店員も何も告げなかったことから俺は「そのまま食べろハゲ」と言うメッセージを感じ取ったのだ

やはり上等な豆腐

そこに醤油など必要ないと言うことだな

俺は丼の縁にちょこんと置かれた緑色の物体を認識した

「そうかわさびか」

俺はわさび満遍なく白い豆腐の上にばらまいた

そして軽く鰹節と混ぜ込んだ

薄く削られた鰹節が踊りだした

俺の頭の中でモンタ&ブラザーズが歌いだす

「ダンシングオールナイト」


ダンシング・オールナイト/もんたよしのり(92年OA)

当時歌詞の意味もわからずモノマネしながら歌っていた曲

ちなみに当時の他の俺のモノマネのレパートリーは

田中角栄

太陽にほえろ松田優作殉職のシーン

巨人の淡口

特に巨人の淡口のモノマネをするとクラスの男子は大爆笑であった

話を豆腐丼に戻さなければ

俺はドキドキしながら豆腐丼を一口食べた

なんせ奴豆腐と白飯を同時に口の中に入れる行為は人生初かもしれない

しかし考えてみれば麻婆飯というものは大好きだ

それならシンプルな奴でもいけるんじゃないだろうか?

そしてそれには非常に優秀な豆腐と白飯が要求されることであろう

白と白

「ん?白?」

白い巨人

「そうか!ここはレアル。つまり白がチームカラーだ」

「そうなるとこの白い豆腐丼の存在も納得できるな」

俺は豆腐丼をかみしめた

途端に広がる大豆の上品な旨味

先ほどのわさびがとてもいいアクセントとなっている

後から鰹節の海の香りがふわっと漂う

「驚きだな、かなりうまいぞこれ」

豆腐が最高にうまい

とても濃厚でクリーミー

大豆の旨味が大豆の甘さが素晴らしい

確かにうまい豆腐なら味付けは不要だ

ただ最低限、旨味を引き出すものだけ足してやればいい

これは無駄な物を省く和食の王道

王者レアルにも通じるな

俺はすっかりサラダを食べるのも忘れてひたすら豆腐丼を食べた

ここレアルのランチは無理やりワンプレートで提供される

そのため「サラダが・・とても・・・食べにくい」のである

思わず丼を持ち上げてサラダを食べてしまうほどなのだ

しかしサラダの鮮度はとてもいい

俺はとても美味しく自然の恵みを食した

次に気になる小鉢

なにやらサイコロ状のものが揚げてある

俺は一口食べた

カリッとした衣の中から何やらクリーム状のものがとろっと飛び出してくる

そしてこれまた「うまい!」

まるで上品なカニクリームコロッケ

もしかしてこれも豆腐なのか?

俺は店員に聞くこともできずに悶々とした

当然メニューには何も書かれていないと思いきや書いてあった

やはりこれも豆腐みたいだ

豆腐丼ではなくあえて豆腐定食と名乗るだけに豆腐づくしってわけか

さすが1100円だけのことはある

俺は壮大なたんぱく質祭りを堪能した

植物の恵み動物の恵み

両方のたんぱく質を摂取

これはのちに俺の筋肉へと変わるだろう

ありがとうたんぱく質

とても美味しかったですたんぱく質

俺はたんぱく質祭りを終えた

 

 

後で気になって冨田豆腐を調べてみた

屋号は「豆粋」

創業68年

社長は3代目で44歳

これはキムタクと同じ年齢だという

そして誕生日は4月14日

これはなんと工藤静香と同じだというではないか

なんという偶然

好きな食べ物は刺身と焼きそば

これは酒飲みだな

多分

おそらく使用してるのは「ふあとろ寄せ豆腐」かな

あくまで想像だが

HP見てると他の豆腐も食べたくなる

長久手

今やイケアで大渋滞

さらにジブリパークが追い打ちをかける

そこに来て冨田豆腐、豆粋だな

mameiki.info