急遽午前中の予定が変更になった
そのためにグローバルゲート散策をすることにした
ちょうど天気もいい
暑くもなく寒くもない
初めてのグローバルゲート
久しぶりの「ささしまライブ」
決してさだまさしのライブでは無い
あおなみ線や直通バスがあるみたいだがいつものように金をケチる俺は歩くことにする
ちょうどいい散歩距離
はっきりとした場所は知らない
ただなんとなく人の流れに沿って歩いて行った
すぐにたどり着いた
映画館の前にグローバルゲートはあった
隣は愛知大学だ
早速、中に侵入
予想以上に客は少ない
まずは本屋を目指した
おしゃれな雑貨も多数置いてあり暇つぶしには最適である
しかしただでさえ初めての本屋は本が探しにくい
それに加えてツタヤなどと同じ作家別の陳列だ
文庫本はやはり文庫ごとに分けて欲しい
俺は文庫本を物色することを断念した
一部にジャンル問わず緑色の本だけ集めたコーナーが作られていた
とても面白い企画だ
やはり植物系の本が多い
一通り見て回った俺はあと30分後に開店する飲食店のランチ情報を得ることにした
場所柄カフェ系が多い
カフェ系はパスだな
おっさんがスプーンの上でフォークをくるくる回しながらパスタなんて食べてたら確実に通報される
許されるのは純喫茶の鉄板ナポリタンぐらいであろう
魚屋がうまそうだ
珍しくクジラ系のメニューが充実している
ここは候補に入れておこう
鰻屋もそそられるがいかんせん高い
肉系もパス
あとは名古屋コーチンか
朝から何も食べてない俺が選択したのは名古屋コーチンの店だった
名古屋コーチン弌鳥
ちなみに「いっちょう」と読む
確か金山の一鳳の系列店だ
午後11時
俺はまだ準備に勤しむ店内に侵入した
自らカウンターの端へと腰掛けた
店内はガラガラだが池波正太郎的配慮をしてみた
一人客はいつだって邪魔者なのだ
俺は迷った
朝から何も食べていない
お腹と背中がくっつくかと思うぐらい腹ペコである
まず目に付いたのは中華そば
俺は鳥系のラーメンと中華そばという響きにはとても弱い
唐揚げも食べたいしチキンカツも食べたい
ただ問題なのはチキンカツがソースでなく味噌なこと
この辺り選択制にして欲しかった
ソースなら間違いなくチキンカツを選んでいたであろう
そして俺が注目したのは小さな字で書かれたプラス三百円で味噌汁からミニ中華そばに変更できるという情報
これはいい
とてもいい
あとできればプラス二百円ぐらいで唐揚げ2個つけて欲しい
さてどうする?
中華そばは決定だ
あとは何と絡めるかだな
唐揚げか味噌カツか・・・
やはりここは店のいち押しメニュー
弌鳥の王道膳(極上名古屋コーチン親子丼、ミニ中華そば、サラダ、香の物)1580円
これで決まりだな
初めてだし
もちろん生ビールも注文した
キリンの1番絞りだ
昨日で大きな仕事を終えた俺は自分へのご褒美として黄金の液体を胃の中に流し込んだ
シュワシュワが最高に気持ちいい
思えば昨日は16時間も仕事してしまった
なんか長時間労働が続くと体が次第に順応してきて疲労が快感へと変わってくる
確かに体は疲労してるのだが、まるでスポーツのあとのような爽快感も出てくる
そして何より達成感
あとは金の交渉だな
俺は自分で自分と乾杯した
これが弌鳥の王道膳
伊達に王道の名は冠していない
しかし俺は困った
できることなら中華そばは最後に食べたい
これでは最初に中華そばを食べなくてはならないではないか
そしてその間にも親子丼は冷めてしまう
さらに飯の基本は野菜からと言う掟もある
混乱した俺は中華そばから手をつけた
やはり1番食べたかったもの
そして早く食べないと延びてしまうからだ
麺は極細ストレート麺
具材は鳥チャーシューと名古屋コーチン半熟茹で卵
俺は麺をすすった
想像していたよりあっさりしている
しかし確かな名古屋コーチンの旨味が後から追いかけてくる
とても上品なスープである
それもそのはず
純度100パーセント名古屋コーチンのガラを丸一日煮込んだコラーゲンたっぷりのスープだそうだ
コラーゲン
この言葉だけで女性を口説けてしまう魔法の言葉
俺の肌も無駄にツルツルすべすべになることであろう
だめだ箸が止まらない
俺はラーメン、ビールを交互に繰り返した
鳥チャーシューも最高だな
このゆで卵もなんて贅沢なんだ
瓢亭などに代表される京都ゆで卵と違って育ちの良さは感じられないが野生の旨味が口の中に飛び込んでくるのだ
俺は丼を持ち上げて直接スープを飲み始めてしまった
そんな俺はふと我に返った
忘れていた
名古屋コーチン極上親子丼を
ただの親子丼ではない
なんせ極上である
上を極めた極上
早く食べなければ
しかし俺は一旦冷静になりインターバルとしてサラダに手をつけた
ごく普通のサラダである
しかし野菜の新鮮さが伝わってくるとても素材のいい野菜
やっぱり植物はうまいな
俺はサラダを食べたことで無事気持ちを落ち着かせることに成功した
さぁ極上親子丼である
もう見た目で名古屋コーチンが炭火で焼かれてるのがわかる
卵は下の方はしっかり目に閉じてあり上には半熟がトロトロ
俺は無我夢中で食べた
名古屋にしてはあっさりした親子丼
いい感じである
卵がかなり濃厚だ、これは間違いなく名古屋コーチンの卵を使用してると思われる
口の中に鶏肉が飛び込んできた
地鶏特有の弾力
噛めば噛むほど旨味が、鶏の旨味が・・・
俺は午前中の予定変更のこともすっかり忘れて名古屋コーチンに夢中になった
炭火で焼かれているためにとても香ばしい
うまいなこれ
あまり名古屋コーチンを食べる機会はないのだが、やはりうまいんだな
俺はテーブルに置かれたものに目が止まった
「京都の一味と粉山椒か」
俺は興味津々で一味を極上親子丼へふりかけた
途端に刺激が広がる
目の前に八坂の塔が見える
そうか!俺は今祇園から東山を見上げているんだな
でも待てよ
確かここはささしまライブのグローバルゲート
俺は京都は祇園の幻を見たのだった
次に禁断の粉山椒
「おいでやす」「今日はどないしなはったん?」
再び俺は幻を見た
しかし山椒はないな
俺は完食した
名古屋コーチン中華そばのスープも全て飲み干した
医者からラーメンのスープは全部飲まないようにと強く言われているにも関わらずだ
俺は自分でこれはミニなんだからと言い訳した
弌鳥の王道膳と生ビール
合計2170円
ちょっとだけ贅沢なランチ
ごちそうさまでした
俺は酔い冷ましに屋上庭園を目指した
途中でカリモク60を物色した
俺はソファーをカリモク60に変えてからすこぶる腰の調子がよくなった
やはりいいものはいいんだな
これが噂のおしゃれ植物屋
なかなか立派なオリーブたち
そして値段もかなり立派だが
1000円程度で買える小さなオリーブも置いてあった
思わず買いかけたがすでに俺のベランダには4鉢オリーブが並んで実もつけているのだった
少し酔ってるな
俺は酔い冷ましに屋上庭園を目指した
段々畑かのように植えられた様々な草花たち
こういったもさもさ系の花壇は俺好みである
確かにここはビルの屋上である
畑に野菜まで植えられていた
そしてここはやたらと土の匂いがする
まさかビルの屋上でこんなに土の匂いが嗅げるとは思ってなかった
やはり土はいい
命あるもの最後はみんな土に還るんだしな
しばしここが都会のビルの上だということを忘れてしまいそうになる
昼時
ベンチに腰掛けて弁当を食べる人も多いが観光客にジロジロ見られながらの弁当は食べにくそうだった
まるでどこかの空き地に迷い込んだかのようにモサモサである
とても自然な感じが俺は好きだ
目の前には中川運河が流れる
風情はない
このあたりは寄せ植えゾーン
意図的にデザインされ見栄え良く植えられた植物たちだ
ここで俺にある異変が起きた
俺はこの写真を撮影するためにしゃがみ込んだのだ
その時のことだ
突然「バリッ!」と大きな音がして僅かな衝撃を俺の股間部分に感じた
「なんだ?何が起きた?」
俺は自分の股間部分を見た
「わ、割れている・・・」
俺は動揺した
俺のズボンの股間の部分の縫い目がぱっくり割れているのである
そしてその隙間からは黒いボクサーブリーフが顔を出している
奴らは決して紫外線に触れてはいけない物だ
通常は室内でのみさらされる奴らである
それが嬉しそうに僅かな隙間から日光を浴びているのだ
俺は西方浄土から一気に地獄へ落とされた
これでは歩く変質者
俺は意図せずに変質者となってしまったのだ
「おいおいコロンビアさんよ、アウトドアブランド名乗ってんだから丈夫に作ってくれよ」「山でぱっくりいったらそれはそれで大変だぞ」
俺のコロンビアのズボンは裂けた
小学生の時のプールの時間
同級生が飛び込み台から飛び込もうと身をかがめお尻を俺に突き出した瞬間に彼の水着のお尻の部分が真っ二つに裂けたことを思い出した
あの時の俺は腹を抱えてゲラゲラ笑った
多分あの時の罰が今俺に与えられたのかもしれない
幸いなことにぱっくり裂けた部分は上着でギリギリ隠れる
「これならなんとか家まで帰れそうだ」
俺はまだまだ見て回りたい店があったが帰宅することを選択した
例のおしゃれ系植物屋だ
だめだ、とても俺は入りたい
まるで植物園のようだぞ
俺はズボンの股間なんか裂けてないフリをして店内へと侵入した
多分だが誰にも気づかれていないはず
俺は店内を物色した
多肉やエアプランツなど定番おしゃれ植物が並ぶ店内
しかし奴らは世間で言われてるほど簡単には育てられない
俺は見るだけに止めた
鉢など園芸雑貨も洒落たものが揃っている
しかし果たして実用的にはどうなのか?
機能美というより単にデザイン重視の製品のようにも感じられる
この辺り使ってみないと判断はつかない
インテリアとして使えるようなおしゃれに散髪された植物たちはとても高い
それでも小さな植物などは数百円からあり我々一般庶民にも買いやすい値段となっている
しかし植物には値札がついているだけで植物名も育て方も書かれていない
これではなかなか手が出せない
店員のお姉さんに聞こうにも流石にこのズボンでは無理だ
俺はまた次回、ちゃんと破れていないズボンを履いてる時に買いにこようと思った
そんな俺だが帰り際に一つの花に一目惚れしてしまった
その花にはこう書かれていた
「岐阜県生まれの優しい花」
どうやらフランネルフラワーのエンジェルスターという花らしい
天使なのにスターなんてすごいな
小津安二郎が大好きすぎる映画監督のヴィムヴェンダースは天使は子供だけに見えると映画の中で描いていたが
果たしておっさんの俺にも天使は見えるのだろうか?
値段は600円ほどと少々お高い
セリ科アクティノツス属
原産地はオーストラリア
7月ごろに剪定をすると秋にいっぱい咲くらしい
そして多年草
耐寒性は0度
土は培養土に少々の赤玉か鹿沼
いけるぞいけるぞ
俺は購入した
俺はこいつの袋で股間を隠しながら無事帰路に着いたのであった