鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

2017年ブエルタ第21ステージ

2017年ブエルタ・ア・エスパーニャ

3週間に渡る長い戦いも終わる

前日のコンタドールのステージ優勝の興奮の中で選手たちはパレードラン

いつものように周回コースまでは争いなしのパレードランとなる

特にルールで決まってるわけではない

いつの間にか選手の間で出来上がった

最終日がスプリントステージの場合に適用される紳士協定だ

そして総合の争いも行わない

差が数秒の場合は総合争いをしてもルール上なんの問題もない

しかし平坦なコースのために数秒の差を詰めるのは厳しい

なんらかのトラブルがない限りは

相手のトラブルなどに漬け込んで総合優勝を掻っ攫っても後々何を言われるかわからない

逆転総合優勝を果たそうものなら孫の代までネチネチ言われることであろう

それなら何もしないほうがいい

プロトンは大きな一つの家族

みんな仲良くサイクリングしたほうが楽しいのだ

ただし緑色のポイント賞ジャージ「マイヨプントス」争いだけは別だ

そしてスプリンターたちのステージ争いも行われる

全ては周回コースに入ってからである

そして今年の21ステージはトレンティンのためのステージ

ステージ優勝を果たしてマイヨプントスGET

現在マイヨプントスを保有しているのはフルームである

本来はスプリンターのための緑ジャージ

しかしブエルタはポイント設定がおかしいために特別狙ってもいないのに結果的に総合上位の選手が獲得する場合が多い

そして厳しい山岳登りゴール

これもあってブエルタに出場するスプリンターは少ない

そしてフルームが欲しいのは赤いジャージのマイヨロホ

よって誰もがフルームはリスクを負ってまで緑ジャージには興味を示さずに無難に走るだろうと思われていたが・・・

 

レースがスタートする

とは言ってもいつものようにアタック合戦は始まらない

みんなのんびりとサイクリングだ

ともに戦ったチームメイト

戦いを終えてお互いの健闘を称え合うライバル同士

元チームメイト

同国同士

チームは違うがご近所さんのトレーニング仲間

などなど

みんな3週間の戦いを振り返り、時には全く関係のない雑談をする

そして中には悪乗りしてふざける選手も少なくはない

沿道のお客さんは暖かい歓声で選手を讃える

特に今年は地元スペインの英雄アルベルト・コンタドールの引退レースだ

前日のアングルでの奇跡のステージ優勝

暖かい拍手がコンタドールに送られる

ありがとうと

当然のことながらテレビカメラもコンタドールを映す

隣にはクイックステップの選手が並走している

昨日一緒に逃げたマスだ

コンタドールが立ち上げた若手育成チーム出身のマスを世界中に紹介するコンタドール

「彼はスペインの期待の星」だと

なんかもうマスが可愛くて仕方がないみたいだ

チームスカイはいつものように自撮り棒で撮影

そしてチームカーからビールやシャンパンを渡されてチーム横一列になり乾杯

これも優勝チームの恒例行事だ

ちなみに全てノンアルコール

カメラマンからはコーヒーの差し入れをもらうフルーム

正直ちょっと困った感も

蓋を開けて一気に飲み干した

総合1、2、3も仲良く記念撮影

こんな風にのんびりとパレードランは進んでいく

毎年のことながらこのパレードランが俺は大好きだ

見てる側も今年も乗り切ったんだなぁと感慨深くなる

仕事しながらのグランツール観戦は結構大変だ

この日だけはガンマGTPのことなんか忘れて酒を飲む

やがてプロトンマドリードの周回コース近くに差し掛かる

コンタドールの故郷の近くの町だ

ここで大きなプレゼントがコンタドールへ渡される

トレックの選手が前方に位置する

その中から一人集団の前に出るコンタドール

集まった大観衆に見送られコンタドールは引退のパレード

ものすごい大声援だ

地元のスーパースター

しかも間違いなく歴史に名を残す選手である

大声援に手を振りながら笑顔で答えるコンタドール

これが本当に最後のレースだ

 

そして周回コースへと突入

ここからレースは始まる

一か八かの逃げ切り勝利を狙いたい選手

大逆転でポイント賞ジャージが欲しいトレンティン

その他ステージ優勝狙いのチーム

なんとかエースを落車させないようにゴールさせたい総合系チーム

まずは中間スプリントだ

トレンティンはここで3位以上に入らないとステージ優勝したとしてもフルームに対してポイントを逆転できない

しかし中間スプリントに興味を示す選手はほぼいないはず

楽にポイントを取れるはずだったのだが・・・

中間スプリントが設定されてる周回の1周前からスカイが前に出てくる

なぜここでスカイ??

まさか!

スカイが中間スプリントを取りに来ている

アシストを使いトレンティンのポイントを消しにきている

しきりにスカイと話をするクイックステップ

どうやらフルームは本気でマイヨプントスを守りにきている

普通なら総合優勝をほぼ確定させた選手はスプリントには参加しない

そもそも総合系の選手がスプリンターには勝てない

そして一番の理由は落車のリスクである

最後の最後で落車リタイアとなったら3週間の頑張りが全て無駄になるのだ

それでもスカイがフルームがスプリントを取りに来ている

どこまでえげつないのか?

果たしてフルームの願いなのか?

それともチームオーダーなのか?

どうやら前日のアングリルのステージでトレンティンがタイムアウトになったにもかかわらず救済されてスプリントポイントすら剥奪されなかったことにスカイがご立腹みたいだが

なんか後味が悪いレースになりそうだ

レースはクイックステップがコントロールするがスカイがアタックを仕掛けまくる

そしてフルーム自ら中間スプリントでアタックをする

取れるジャージは全て取る

クイックステップはアラフィリップとトレンティンの2名でフルームを追撃

さすがにスプリントではフルームには負けない

なんとか中間スプリントポイントを取り最後のステージ優勝で逆転マイヨプントスを目指す

ちなみにトレンティンのステージ優勝は絶対条件

その上でフルームがステージ12位以上だとトレンティンの逆転マイヨプントスは無い

そしてスプリンターが少ない最終日ではフルームの12位以上は十分にありえる順位だ

パレードランの時まではほぼ確定だと思っていたトレンティンのマイヨプントスが一転して赤信号となった

どうする?クイックステップ

中間スプリントが終わると逃げたい選手のアタッックが出る

何回も逃げてきたBMCのデマルキにUAEの元世界王者ルイコスタ

ルイコスタも崖っぷちかもしれないな

今後エースであり続けられるのか?

しかしクイックステップとしては、ここで逃すわけにはいかない

早い段階で捕まえにいくしか無い

自分たちがやらなければ誰もやってくれない

自ら潰しに行くしか無い

できることなら最後のトレンティン発射のために足は使いたくない

しかしやるしかない

レースは最終回に

ボーラも集団の牽引に加わり逃げを吸収

レースは振り出しに戻った

ステージ優勝が欲しいチームと総合エースの危険回避のためのトレインが入り混じる

絶対に勝たなければならないクイックステップ

アラフィリップのリードアウトからマッテオ・トレンティンが発射だ

今年のブエルタ絶好調のトレンティン

他のスプリンターを寄せ付けずに4勝目となるステージ優勝を遂げた

そしてもう一つの戦い

フルームはどこだ?

フルームはどこだ?

あっ

微妙な順位だ

なんとか13位以下であってくれ

CMが入った

 

 

フルーム11位・・・

トレンティン奇跡のマイヨプントス獲得ならず

緑のジャージまでもフルームに持って行かれてしまった

それでもトレンティンはステージ4勝の大活躍

チームにも大きな置き土産ができて笑顔での表彰台となった

フルーム自身もスプリントでかなり危ない場面もあったのに

あそこまでリスクを負って取りに来るなんて

ルール的には何の問題もないのだが

実際に見てる方も面白い

それでも

なんだかやっぱり後味悪いな

 

 

そしてフルームは史上初のツールとブエルタのWツール達成となった

2位にはニバリ

3位にはザッカリン

コンタドールは後ろで走りすぎたために総合の順位を4位から5位に落とした

やはり昨日で全て出し切ってしまってそこまでモチベーションなかったのかもしれないな

お疲れ様コンタドール

そして今までたくさんのワクワクをありがとう

 

忘れてならないことがもう一つ

アダム・ハンセンも無事完走

これで19回連続グランツール完走記録を達成した

 

今年も終わってしまった

こうやって1年はすぐに過ぎていくんだよな

また来年

最後にもう一度

ありがとうコンタドール

 

 


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