鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

2017年ブエルタ第19ステージ

2017年ブエルタ・ア・エスパーニャ

第19ステージ

いよいよレースも残り3ステージ

そして明日は最終山岳のアングリル

そしてコンタドール最後の山岳ステージだ

総合上位勢も明日に備えて今日は無難に走りたい

全ての勝負は明日のアングリルだからだ

19ステージは前半に1級山岳、そのあとにぽこぽこと3級山岳が3つ登場して最後は下ってゴールだ

絶好の逃げステージであり最後の逃げステージになるかもしれない

スプリントポイントまでは1級山岳と3級山岳を2つ越えなければならない

トレンティンとフルームのポイント賞争いも熾烈であるが、さすがにブエルタの意地悪なポイント設定で今大会もスプリンターには厳しい緑ジャージ

大抵は総合系がおまけ的に獲得してしまうのである

あとは山岳賞を確定させたいヴィレッラ

チーム存続に向けて少しでも世界中の企業やお金持ちにアピールしたい

そしてなんとかステージ一勝狙いのチーム

ブエルタで結果を出せてないエース級の選手たち

地味ながらもチーム総合を狙うアスタナ

今日も仕掛けるのかコンタドール

様々な思いの選手がレースを動かしていく

予想通りレース開始からアタック合戦があったようだ

30人ほどの逃げ集団ができている

そして予想通りかなりのビッグネームたちが逃げに乗ってきた

実力は十分だがスカイに的には逃しても問題のない総合成績の選手たち

前半絶好調だった偉大すぎる父親を持つ男ニコラス・ロッシュ

ツールで大活躍フランス期待の星ロマン・バルデ

結果が出せない元世界チャンピオン、ルイコスタ

長年お世話になったクイックステップへの最後の置き土産を諦めたくないトレンティン

コンタドールのアシスト前待ち作戦部隊のパンタノとトインズ

チーム存続のために山岳賞が欲しいヴィレッラ

世界最強逃げ屋、ツールで1000キロ逃げた男、怒りのトーマス・デヘント

そして地元出身の若手イヴァン・ガルシアと地元の英雄ダニエル・ナバーロだ

どんなことしてでも勝ちたい逃げ集団

幸いなことにチームスカイはステージ勝利には興味はない

他の総合系もスカイを相手に集団コントロールして攻撃できるほどのアシスト陣は揃えていない

必然的にこの日はスカイについていくだけである

メイン集団との差はどんどん広がっていく

その差15分

レースは逃げ集団とメイン集団の総合争いの2つのレースが同時進行の形となる

こうなるとお互いに動きはほとんど出ない

レースは淡々と進んでいく

山岳ポイントではヴィレッラがポイントを重ねる

この辺りは他チームもヴィレッラにポイントを取らせながら走る

逃げ集団で変ないざこざは起こしたくはない

誰もが何事もなく足をためつつゴール前まで行きたい

そして中間スプリントではトレンティンがポイントゲット

最終21ステージでのポイント賞に希望を託す

しかし逃げ集団の中でも勝ちたい気持ちがひときわ高い男がいた

地元出身のイヴァン・ガルシアだ

バーレーンメリダに所属する彼は本来なら総合2位のニバリのアシストをしなければならない

しかしこの日だけは特別にチームから許可が出た

「逃げてステージ取ってこい」と「故郷へ錦を飾れ」と

大柄で平坦が得意な選手だ

クライマーたちと一緒に最後の3級山岳に入っては分が悪い

彼には一か八かの早め早めのアタックしかないのだ

単独で逃げるガルシア

3級山岳に入るとロッシュ、バルデ、ルイコスタが追走を開始する

3級山岳といえども中盤1キロの平均勾配は12パーセントだ

追走の豪華メンバーはガルシアに追いつき

先頭は4名に

若いガルシアに取っては信じられない状況だ

ブエルタ

地元のステージで

先頭を逃げている

そして他のメンバーはロッシュ、ルイコスタ、バルデの超豪華メンバー

でも逃げるしかない

残り10キロを

先頭の逃げ集団でも攻撃が始まる

ロッシュ、バルデが仕掛けるも決まらない

スプリントになると彼らは分が悪い

ルイコスタ優位な状況だ

そして牽制

見てる側からすれば「そんな暇ないだろ!」といつも思うが

案の定、後続から選手が追いついてくる

そしてその中には地元の英雄ダニエル・ナバーロと最強逃げ屋デヘントも含まれていた

先頭は9人だ

再びロッシュが仕掛ける

しかし決まらない

次に動いたのがガルシアだ

ガルシアのロングスプリント

ぐいぐいと力強い走りで抜け出していく

ここまで来たからには絶対に勝ちたい

最後の力を振り絞るガルシア

もう力など残ってないかもしれない

それでも全力でゴールを目指して踏み込んだ

しかしその後ろでは冷静にレースをしていた男がいた

怒りのデヘント

ツールで1000キロ逃げたのに総合敢闘賞になれなかった男

トーマス・デヘントだ

デヘントがタイミングを見極めてスプリント開始

無常にもゴール直前でデヘントに抜かれるイヴァン・ガルシア

結局最後はトーマス・デヘントがステージ勝利

彼はこの勝利でトレンティンに続いてジロ、ツール、ブエルタと3大グランツールでのステージ勝利となった

自分の足に自信があったデヘント

見事な逃げ切り勝利であった

 

一方メイン集団は10分遅れて3級山岳を登り始めた

そしてこの日もコンタドールがアタックを仕掛けた

最後の最後まで諦めないコンタドール

ザッカリンが追走するがダンシングでぶっちぎるコンタドール

いつも見てきたこのダンシングも明日で見納めである

そして前待ち作戦部隊のトインズと合流

再びトレックのコンタドール特急だ

スカイは淡々と追走

このペースなら大丈夫だと言う科学的データから得られる判断

残り2キロでコンタドールはスカイに吸収

他のライバルも動くことができずに勝負は最終決戦のアングリルへと持ち越しとなった

コンタドール最後の山岳ステージ

一体我々にどんな走りを見せてくれるのか

ワクワクする一方で終わりを見たくない気持ちもある

全ては第20ステージ

アングリルだ