2017年1月5日のことである
朝5時に俺は四条のとあるビジネスホテルで目覚めた
一人なのにツイン
料金はシングル料金で泊まれる
京都でも3が日明けは暇なのである
池波正太郎も男の作法の中で京都に行くなら2月にしろと書いている
それは2月が一番観光客が少ないからである
まぁ少ないのには少ないなりに理由がある
まずは寒い
そして桜も紅葉も新緑も無い
しかし食に関しては四季それぞれ楽しめる
特に京都は四季を大事にする
春夏秋冬それぞれの旬のものを食べることによって季節を感じるのだ
庭だって禅寺の石組みを見るのには冬が一番いいのだ
冬の枯山水は石が主役になるからである
建仁寺の潮音庭の三尊石なんかも実は冬が1番美しいと言われている
去年も同じ日に京都を回ったが
とにかく庭三昧
人も少なくて名庭を独り占めという大変贅沢な時間を過ごしたもんだ
あとは各お寺の特別公開だろうか
これはJRが仕掛人なのかもしれないが
観光客が少なくなる冬になるべく多く人を呼ぶ為に有名寺院などが1月7日から特別公開を行なうのだ
しかし1月4日の時点でそれらの特別公開は始まっていたりする
そして2月になるとグルメなどもお徳なプランが用意される
俺は2月からと知らずに美濃吉のすっぽんコースを予約したら
2月からですと言われてしまった
なんか2月にまた行きたくなってしまうのではないか
シュウマイも食べたいし
まぁそんなことは追々考えるとして
とにかく俺はいつものように5時に起床した
シャワーを浴びて
とりあえずロビーまで降りて缶コーヒーを購入して
部屋で飲む
さて今日はどうするかな?
部屋の中にいても仕方が無いので8時にはチェックアウト
昼はいづ重へ行くとして
朝はどうするか?
清水界隈で食べ歩きでもすることを想定すると朝は控えた方が無難かもしれない
俺は朝飯は我慢して祇園の八坂神社を目指した
なにやら朝から凄い人だ
どうやらどこかの会社の初詣みたいだ
昔は仕事始めの時はお参りに行く会社が多かったが
最近はめっぽう減ったなぁと思う
俺が若い頃は仕事始めは顔見せだけで仕事はしない
みんなで初詣に行って飯を食って酒を飲んで終
翌日から本気を出すのだ
でも今ではそんな風習も無くなってしまった
しかし若いお姉ちゃんがいっぱいいる会社でうらやましいなぁと思いながら
一人、八坂神社でお参りを済ませて円山公園へ向かう
円山公園は人よりカラスの方が多いぐらいだった
散乱するゴミ
まさに早朝の風景
これからあっというまにキレイになる
しだれ桜
春にはキレイな姿を見せる桜をこの季節に眺める人はいない
お地蔵さんにもお参り
オンカカカビサンマエソワカ
北か南か
浄土宗か臨済宗か
普通に考えれば北から歩いて来たんで南だな
久しぶりに高台寺にでも行くか
なにやら特別拝観もあるみたいだし
ねねの道を歩く
まだ人は少ない
京都奈良にはそこら中に修学旅行生と思われし落書きがある
俺が学生の頃もそうだったが子供の頃に京都や奈良に行っても何にも面白くなかった
大人になってようやく良さが分かるようになり
仏教に興味を持つと最高に面白くなった
布袋さん
ギターは持っていない
三面大黒天
これはお前建ちのようなものなのだろうか?
とりあえずお参り
朝の9時
高台寺へ到着
たぶん一番乗り
秀吉とねね様のお寺 高台寺
俺は秀吉はあまり好きでは無いが、ねね様はずっと庶民感覚を忘れなかった人で好感がもてる
当時としては珍しい
恋愛結婚の二人
秀吉の公然的な浮気にも必死に耐えたんだろうな
時代が時代だから仕方が無いが
秀吉が百姓のままだったら跡継ぎ問題なんかどうでもよかっただろうに
入ると直ぐに茶室があった
詳しい事は分からない
何も書いてないということは歴史が浅いのかもしれない
でも面白い茶室である
そして今回の特別公開の一つ
臥龍廊を登ってねね様が眠る霊屋へと向かう
しかし非常に上りにくい階段
足下を確認しながら一段一段ゆっくりと登って行く
これが霊屋
今ならかなり近くで見る事が出来る
ねね様が眠る場所の蒔絵が非常に美しい
利休デザインの「傘亭」
伏見城から移築したとか
中には船着き場などがある
傘亭とは廊下で繋がる時雨亭
2階建ての茶室である
こんな風に繋がっている
非常に面白い
展望台からの眺め
この景色を独り占め
大文字焼の山が遠くに見える
降りてみる
竹のざわめき
このあと高台寺の美術館へ
とても小さい美術館だが非常に面白いものばかりで長居してしまう
十一面観音が良かったなぁ
ここは行った事無いがいったい何だろう?
いづ重さんが10時半から始まるのでとりあえず八坂神社へ戻ることに
石塀小路を抜ける
10時28分
鯖寿司のいづ重さんに到着
有名ないづうから明治時代に暖簾分けされた店
好みの問題だが俺はいづ重派
ちなみに船越英一郎もいづ重派であった
さっそく入ってみる
ここでも一番乗りだ
鯖の肝のしぐれ煮と冷酒を注文
初めて食べる鯖の肝だがむちゃくちゃうまい!!
日本酒にあうあう
幸せだなぁ
小さな店の中は直ぐにいっぱいになる
地元の人らしき人も朝から飲んでいる
あとは外人さんばかり
それにしても外人に京都の寿司の美味さが分かるのだろうか?
日本人でも鯖寿司とか苦手な人が多いのに
そして冬の京都と言えばこれ
蒸し寿司 1500円
フタを開けるともわっと湯気が立ち上る
蒸したて熱々である
これをハフハフしながら食べる幸せ
コレの為に俺は京都へやってきた
心も体もポカポカである
去年は乙羽のを食べた
おそらく一般的な他県の人には乙羽のほうがおすすめできるかもしれないが
俺はやはり末廣さんかいづ重さんが好き
ただ末廣さんはお酒が置いてないのが残念である
いづ重さんの説明書きによれば
京の寿司、大阪の寿司いづれの発祥なのかは分からないそうだ
明治の末ぐらいから人々を口福に至らしめてきたそうである
焼穴子、焼はも、煮いか、椎茸を混ぜ込み一昼夜寝かせた酢飯を一人前づつ蒸篭にいれて錦糸玉子、えび、いか、焼あなご、キクラゲ、青豆をのせて強烈な蒸気で一気に蒸し上げるそうだ
やはり相当に手間ひまがかかってる味がする
京都らしくとても繊細な味である
ただ俺が住む地域の人は醤油、味噌の味がガツーンとこないと美味いと言わないから
この味が分かんないかもしれないな
ある程度京料理のウォーミングアップをしてからで無いとお勧め出来ないかもしれない
それは昨日の京都中華も同じである
そしておすまし300円
これもまた一口飲んだ瞬間に幸せが広がる
やはりいづ重さんは決して俺を裏切らない
鯖寿司も稲荷寿司も絶品である
このおすましも300円なんて安すぎる
正直俺の地元で5000円以上の懐石を食べても
こんな美味いおすましは飲めない
中に入ってる湯葉もうまい!!
さすが八坂神社の前に明治時代から店を構える老舗
観光客以上に地元の人に愛される名店である
もっと食べたいが
そろそろ店も大忙しの時間帯になる
俺はこの辺りでおいとましよう
帰りには当然鯖寿司のハーフを購入
全部で5000円ほど
今日も満足度がかなり高い
今度は助六でも食べてみようかなぁ
花見の季節にまた来れたら嬉しいな
そんなことを思いながら俺は再び八坂神社を抜けて東山散歩に出かけるのであった
つづく