鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

2017年京都冬の旅01

2017年1月4日午前10時半頃に俺は京都駅に降り立った

少しでも交通費を浮かそうと

在来線を乗り継ぎ乗り継ぎしながらやってきた

大垣で乗り換えて米原で乗り換える

大垣と米原はそれぞれ始発駅になるのでなんとかイスには座れたが

滋賀超えの真ん中当たりから次第に乗客は増えてくる

そしてほとんどの乗客が目指す場所が京都である

俺は無事イスに座っているものの

「しんどいわぁ」「座りたいわぁ」「足痛いわぁ」とあえて座っている俺たちに聞かせるかのような大きな声で独り言を言い出すおばさん

たまらず付近の人が席を譲ろうとするがおばさんは断ってしまう

そして再び「しんどいわぁ」が始まった

正直この状況で座り続けるのは精神的にツライ

立っていたほうがどれだけ楽か

そんな状況の中を必死に耐えながらようやく辿り着いた京都であった

まずは東寺を目指す

この事だけは事前に決めてあった予定である

そして俺はいつもの用に初日の昼はパンで済ませる為に

いつもの京都駅の志津屋へと向かった

そんな俺の前に突然本屋が現れる

本屋を見かけるとどうしても入りたくなってしまう

それは旅先でも変わらない

俺は当然の事ながら本屋に立ち寄ってしまう

そこでまず俺の目に飛び込んで来たのが

「京都の中華」

 

京都の中華 (幻冬舎文庫)

京都の中華 (幻冬舎文庫)

 

 パラパラと立ち読み

写真が素晴らしい

なんて美味そうなんだ

独特の文化を持つ京都の中華料理

俺は完全に京都の中華に魅了されてしまった

当然の事ながら購入

俺の頭の中から割烹と懐石の文字が完全に消え去った

やはり中華だな

これで本日の晩餐は決まった

プランBの発動である

あらかじめ店の目星は付けてあった

あとは営業している事を望むばかりである

そして再び俺は志津屋へと向かった

一通り商品を見て回る

いつもならカルネとポテサラのバゲットサンドだが夜が中華となると昼に大量のカロリーは摂取したくない

朝はおにぎり1個で済ませたとはいえ夜は一品でも多く食べたい

そんな俺がチョイスしたのがオムレツサンド

「九条ネギとしば漬の京風オムレツサンド」を購入して一路東寺を目指した

俺は京都ではなるべく徒歩で移動する

それは食べる為のカロリー消費と交通費をケチる為である

まさに一石二丁だ

午前11時には東寺に到着

なんと既に五重塔の内部が特別公開されてるではないか!

JRの駅に張ってある京都冬の旅のポスターでは1月7日からであったが

すでに元旦から公開されてるみたいだ

俺はワクワクを押さえることが出来ないまま入場券を購入した

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落ち着け落ち着け

自分で自分に言い聞かせながら講堂へ参拝

ここは何と言っても空海が作り上げた立体曼荼羅が圧巻である

もう数えきれないほど俺は訪れている

1年ぶりのご対面

相変わらず壮大な宇宙観を俺に与えてくれる仏達

まずは宇宙の真理「大日如来」へお参り

「世界が平和でありますように」

「今年もよろしくお願いします」

最初は自分以外の事をお願いしなければならない

そしてその後で自分へのお願いごとを遠慮ぎみに伝える

「もしよろしければ・・・わたくしのお願いごとも・・聞いて頂けないでしょうか?」

これは高野山で教えてもらった

お釈迦様そして弘法大師空海は自分勝手なことを一番嫌うからである

自己犠牲

自分を犠牲にして人に尽くすのが仏教の根本なのだ

とは言ってもやはり自分のことを先にお願いしてしまったりする

そんな時はタダひたすら謝罪

「ごめんなさい、ごめんなさい」でも仏は怒らない

罰を与えるのは神様であり仏ではないのだ

そして改めて仕切り直しである

そんな時に見上げる仏像は少し怖そうな顔に見える

そして自分自身穏やかな気分な時はすごく優しい顔に見えて来る

そんな大日如来なのである

そして俺はいつも不動明王をリーダーとする五大明王を前にすると中学時代の生活指導の先生を思い出してしまうのであった

とにかくコワイ不動明王

降三世明王なんかヒンドゥー教の神様であるシヴァ神を踏みつけている

しかもシヴァ神の奥さんまで踏みつけている

そして8本もの手でかっこいい決めポーズ

これはヒンドゥーなんか辞めて仏教に帰依しなさいと言う意味である

その勧誘のおかげなのかシヴァ神は日本の神「大国主」とフュージョンして大黒天となったのだ

そして軍荼利明王もかっこいい

軍荼利明王は疫病をもたらす毘那夜迦天(インドのガネーシャ)を調伏すると密教では解釈されているそうである

あのぞうさんみたいな神様って疫病をもたらしてたんだな

脇を固めるのは「天」

四天王を始めとする天と言う役職の方々である

持国天増長天広目天多聞天の四天王に加えて

寅さんでおなじみの帝釈天梵天がゲスト出演

とくにここの帝釈天は仏像界随一のイケメンである

向かって左斜め45度

男でありながら惚れてしまいそうである

一通りお参りした俺は足早に金堂へと移動する

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金堂

いわゆる本堂である

ここにはご本尊の薬師如来と脇を固める日光菩薩月光菩薩が居られる

ご本尊の薬師如来は昔のお医者さん

あらゆる病気から守ってくれる仏様である

そうなると脇侍の日光月光は看護士なのだろうか?

そんなことを考えながら俺はさっさとお参りを済ませて金堂の外へ出る

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いよいよ目指すは五重塔である

四回焼失しているために今の塔は江戸時代に徳川家光によって建てられたそうだ

高さ55メートル

京都のシンボルだ

さっそく中に入る

素晴らしい光景が俺の目の前に広がる

もうひとつの立体曼荼羅

そうなのだここにも立体曼荼羅が存在しているのだ

講堂のような全て仏像で表現したものではないが

高野山の根本大塔と同じ方式である

仏像は4体

不空成就如来、阿閦如来宝生如来阿弥陀如来

ここに何故一番重要な宇宙の真理、キングオブホトケの大日如来が不在なのかというと

実は五重塔の中心の心柱が大日如来を表しているのである

そして4体の仏像を囲む柱には絵が描かれていた痕跡が残っている

ここに菩薩や天が描かれていたと想像出来るが

パンフレットの写真を見て見ると菩薩と思われし仏像達も映っている

という事は彼は今は宝物庫へと引っ越しされたのだろうか?

壁には歴代の真言宗の祖師が描かれている

いわゆる真言八租だ

龍猛

龍智

金剛智

不空

善無畏

一行

恵果

空海

ちなみに不空さんはものすごい霊力的な不思議な力を持っていて空海はこの不空さんの生まれ変わりだと言われている

そんなことを知らずにほとんどの人はただなんとなくぐるっと室内を見て回るだけ

監視しているお坊さんらしき人達もちゃんと説明してあげれば良いのに

いろんなことを深く知れば知るほど京都は面白くなるのだ

後、この五重塔の心柱は耐震構造になっていてスカイツリーにもこの技術が使われているのであった

俺は再び金堂、講堂とゆっくり仏像鑑賞

時は12時

ベンチに腰掛けてランチタイムである

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サンドイッチにしば漬が入るのはいかにも京都らしい

そしてやはりパンの激戦区だけあって外さない安定感である

ただ個人的にはもっとしば漬を増やした方が良いと思うが

コストや万人向けにするにはこれが限界なのかもしれない

京都でしか食べれない軽めの昼食を済ませた俺は今度は売店へと向かう

後ろを振り向き五重塔へ別れを告げる

「また来るからな」

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俺は売店へと向かう

東寺はなかなか商売熱心である

いろんなグッズが多い

そして知らない間に仏像フィギュアが増えている

欲しい!でも予算が無い・・・

結局は塗香だけ購入

なんか高いなぁと思ったら最高級品であった

仏壇屋やお香屋まで出むくのもめんどくさいので購入したが

これが後ほど後悔することになるとはこの時の俺は知る由もなかったのである

その後の俺は食堂(じきどう)へ入る

ここでも参拝を済ませて火事で燃えて真っ黒こげになった四天王を鑑賞

そして御朱印を貰う

前回は弘法大師だったので今回は大日如来でお願いした

あとは薬師如来で東寺の御朱印はコンプリートである

リフォーム中の大師堂を回る

ここは空海さんのお家だった場所だ

ここには空海さんが肌身離さず持っておられた持仏の不動明王が奉られている

たしかお釈迦様の骨の仏舎利もあるはず

東寺から分けられた仏舎利彦根の東寺派のお寺にも奉られていた

空海さんが横になられているお寺「大師寺」である

その他いろんな小さなお堂をお参りして外に出る

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アオサギ発見

そして東寺の塔頭寺院である観知院

大学の研究室のような場所だと言う

 

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国宝だがここもリフォーム中で2017年3月20日までは中には入れないそうだ

落胆した俺は京都駅へ舞い戻る

そこでなんと先ほど俺が購入した塗香を販売しているお香の店がある事に気づいた

おそるおそる値段を見た

塗香は3種類あった

いつも俺が買うのは一番安いやつだ

これで十分なのに・・・

俺はより深く落胆して地下鉄に乗り四条のホテルへと向かった

荷物を預ける俺

ホテルの側には味わい深い路地がある

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ここを抜けると庭が有名な杉本さんの家がある

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現在の当主の方は確か料理研究家

昔からの京都のしきたりをひたすら守り続ける旧家だ

小雨がパラパラと降り出す中

俺はぶらぶらと人ごみを避けて清水五条へと向かう

目指すは茶わん坂にある「利き酒処336」だ

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五条大橋から眺め

天気は悪い

途中に何件もある陶器屋も冷やかしながら坂を登る

そして到着

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清水焼の朝日堂が経営する酒と肴と酒器の店である

置いてある酒はキンシ正宗の日本酒と地ビール

肴も京都の名店から取り寄せたりしているそうだ

さっそく中に入る

立ち飲みである

席も空いている

俺は一通り酒器を愛でた後で注文した

まずは冷や奴とここでしか飲めない「しずく酒(生酒)純米大吟醸 90ml」だ

5勺からあるところがまた嬉しい

やはり一つでも多くの種類を飲みたいからである

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香りが凄い

そして美味い!虫の入っていたお酒よりこっちのほうが好きだ

なんか磨きまくって醸してある味がする

幸せだ

こんな美味い酒が飲めるなんて

そして冷や奴も間違いなく美味い!!

流石、水の良い京都だ

どこの豆腐かは知らないが京都では豆腐も安定感抜群である

そしてタレがたぶん清水の梅ぼし屋で売っていた梅塩ポン酢

バーテンのお姉ちゃんがどぼどぼかけてるのが見えた

コレがまた繊細な大豆の味がする京都の豆腐にベストマッチなのだ

しかもお値段300円

俺は調子に乗って特別純米酒90ミリを注文

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先ほどは白ワイン系の日本酒

今度のはTHE日本酒

まさにこれが米の酒だ

俺はちらちらと酒器を愛でながらちびちび飲んだ

実は俺には一目惚れした酒器があった

値段も確認した

作家さんのばかり1点ものばかり

3万4万と言う高価なものが並ぶ中で2300円ほどである

織部の緑の釉薬がかけられている

俺好みだ

俺は頭の中でこの後の予算を計算しながら飲んだ

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まだ決断出来ない

よしもう一杯だ

次は一番安い純米酒90ミリで300円だ

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結果としてこれが1番俺には美味い!

たしかにしずく酒は最高に美味いが毎日飲むには甘すぎる

やはりこのぐらい雑味があるような酒の方が毎日飲みたくなる酒だ

そしてほろ酔いになってきた俺はついに決断した

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作家さんは川口英利奈さん

HPもあるので気になる方は検索してみてほしい

そして俺が購入したぐい吞みがこれだ

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俺の好きな織部グリーンである

ずっと探していた

俺は日常的に使いたい派だ

なので高価なものだと気軽に使えないしそもそも俺には金が無い

予算は3000円ほどで探していた織部グリーン

量産型の織部は二つほど持っているがやはりそこには量産品の雰囲気が漂ってしまう

俺が愛用している一点ものだと2000円ほど買った常滑焼を愛用している

そして今回俺のコレクションに新しい仲間が加わった

大事に使おう

やはりぐい吞みには酒を注いでやらないとな

 

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気分を良くした俺は東山散歩は明日にしてホテルへと戻ることに

ちなみにこれは途中で見つけたラブホテル

名前が面白かったので撮ってみた

しかしこの名前を考えた人は凄いなぁ

「と、いうわけで。何もしないから休憩でもしませんか?」って感じで誘い込むのだろうか?

そして再びのんびりと京都散歩

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四条にあるビジネスホテルへチェックイン

一泊4300円

しかも暇なのかシングルの予約なのにツインにしてくれた

もちろんお値段も同じ4300円

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俺の部屋

酔った俺はぱぱっと服を脱ぎ捨て

しばし休憩

到着後に購入した「京都の中華」を読みふける

ヤバイ

この本すっげぇ面白い

改めて中華モードになった俺は

夜の街へと繰り出したのであった

 

つづく