鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

鬼平ファイナル

ついにこの日が来てしまった

今日は朝から鬼平のことで頭がいっぱいである

書きたい事がいっぱいありすぎて逆に頭の中で整理が付かない

いったいこの日に何を書けば良いのか?

朝から混乱しっぱなしである

俺が一番最初に池波正太郎原作の小説「鬼平犯科帳」を読み終えた時の気持と同じなのに自分自身気づいたのだ

小説の鬼平は未完のまま終了となった

池波先生が亡くなられたからであるが

俺は最後の巻を中々読む事が出来なかったのだ

これを読み終えてしまったら平蔵までもが死んでしまうような気がしたのだった

しかしいつかは読まなければならない

池波正太郎の為にも読み終えなくてはならない

そして俺は覚悟を決めて読んだのだった

結果として未完のままでよかったんだと俺は思った

未完だからこそ俺の中で平蔵は永遠に生き続ける

そして一巻を再び読み始めればそこには唖の十蔵が血頭の丹兵衛がそして平蔵の初恋が

いつまでもいつまでも鬼平こと長谷川平蔵は存在していたのだ

それはTVドラマでも同じだった

もともと池波先生は二台目中村吉右衛門父親でもある松本白鸚をモデルにして書いた小説である

そのためTVドラマでも初代平蔵は松本白鸚が演じた

流石に平蔵のイメージにぴったりとハマる配役であった

そしてこの時に平蔵の息子の辰蔵役として二代目中村吉右衛門も出演していたのだ

まさに役柄でも実生活でも親子であった二人

俺はリアルタイムでは見ていなかったが再放送を見てワクワクしたものだ

その後平蔵役は丹波哲郎萬屋錦之介が演じたが俺的にはどうしてもしっくりこなかった

そして1989年

ついに満を持して二台目中村吉右衛門が平蔵を演じることとなった

そのとき中村吉右衛門は45歳

まさに長谷川平蔵と同じ年であった

俺的には二代目中村吉右衛門こそが鬼平であり長谷川平蔵である

そして吉右衛門鬼平は28年続いた

脇を固める役者達も吉右衛門と同じように年齢を重ねて行く

相模の彦十も小房の粂八も死んだ

鬼平の中で非常に重要な役柄の二人の代役は立てられることがなかった

この時に俺は中村吉右衛門鬼平の最後を覚悟したのだった

佐嶋忠介 高橋悦治

木村忠吾 尾美としのり

沢田小平次 真田健太郎

伊三次 三浦浩一

おまさ 梶芽衣子

大滝の五郎蔵 綿引勝彦

久栄 多岐川裕美

五鐵の主人 藤巻潤

みんな代役が聞かない役者さんである

相模の彦十は江戸家猫八から長門裕之へと変更にはなったがこの二人は全く違和感無く俺は受け入れるとこができた

そしてその長門裕之さんも死んだ

それ以降は代役が無く違うキャラとして彦十の役を演じていた

そして何と言っても小房の粂八の蟹江敬三さんも亡くなられた後での代役は無かった

この辺りはやはり役者としてリスペクトしてのことであろう

すっかり高齢化してしまった中村吉右衛門率いる火付盗賊改方

やはり終了となるのは避けられないのかもしれない

中村吉右衛門さんもこう答えている

「思えば、物語の長谷川平蔵の年齢と同じ45歳で原作者の池波正太郎先生から作品をお預かりして四半世紀、大変魅力的な“鬼の長谷川平蔵”という役に、真摯(しんし)に、そして一所懸命に向き合って参りました。私が常に意識しておりましたのは、原作で描かれる平蔵自身の行動力、生き生きと切れのある立ち回り、市中を駆けめぐる軽やかさ、そして静かな中に見せる人情味でございます。それこそが、“鬼平犯科帳の真髄”との考えだからこそでございます。鬼平を溌剌(はつらつ)と演じられるうちにフィナーレを迎えるのが最善と思い、来年の撮影で記念の150作となるのを期に決断致した次第です」

 

やはり今この時に終とするのが一番良いのかもしれない

鬼平は今日と明日の放送でファイナルとなる

しかし小説の中で平蔵は永遠に生き続けているようにドラマ版もまたBSの再放送を見ればそこには中村吉右衛門長谷川平蔵

相模の彦十が小房の粂八が元気に江戸の町を駆け回っているのだ

五鐵の軍鶏鍋

美味い物を食べて酒を飲み岡場所で遊ぶ木村忠吾

まじめな剣客 沢田小平次

平蔵の右腕佐嶋忠介

そしてかつて平蔵に恋こがれた事もあるおまさ

みんな永遠に生き続けるのだ

 

俺が鬼平好きだと言うと時代劇好きだと誤解されることがよくある

正直俺は水戸黄門銭形平次には興味が無い

俺が好きなのはあくまで池波正太郎が描く「義理と人情」なのである

今の日本人が忘れかけていることでもあるが大切な事である

義理と人情を果たす為に自分は損をするかもしれない

しかし自分を犠牲にしてでも誰かを助ける

本当にかっこいい

平蔵を始めとする火付盗賊のメンバーと盗賊達それぞれの義理と人情が交差する

そんな鬼平犯科帳長谷川平蔵

俺にとってまさに理想であり目標とする男である

そして平蔵のはまり役、二代目中村吉右衛門演じる鬼平ファイナル

あと1時間半

しかし決してさよならではない

いつだって平蔵は俺の中にいるのだから