2019年 奈良と京都の旅 08
いよいよ三日目の最終日である
いついかなる時でも朝5時には目がさめる俺だが
あろうことか6時半まで熟睡してしまった
夜中にいびきをかいて周囲の部屋の人に迷惑をかけていないか心配なところではあるが
とにかく過ぎ去ったことは仕方がない
三日目の始まりだ
トイレを済まして歯を磨き顔を洗う
そして三千院と思われし方向を向いて般若心経を唱える
やはり一日の始まりは般若心経からである
お経なんてものは半分は自分のために唱えるものだと思っている
お経とは「お釈迦者がこういってましたよ」的な弟子の書いた本
要するにお釈迦様の哲学書だからな
仏教は哲学として捉えるとまた面白くなる
朝食は8時からとちょい遅め
通常は6時までに朝飯を食べる俺には結構辛い
俺は暇なのでブログを更新した
そしてもそもそと荷物のパッキングを開始
とは言ってもそれほど広げてないのですぐに終わる
時間までiPadで今日の予定を練った
11時1分の国際会館行きのバスに乗り丸太町で降りる
そして向かうべき場所は末廣
ここで最終日のランチとする
これも非常に重要な場所の一つ
まず京都に立ち寄ろうと思ったきっかけが「蒸し寿司食べたい」だったからだ
大原は回れるだけ回るか
すると内線の電話が部屋に鳴り響いた
「朝食の準備が整いました」
俺は急いで食堂へと向かった
昨日と同じ場所に座る
テレビには萬平さんが映っている
そしてあろうことか俺が旅してる間にタカちゃんが結婚してるではないか
相変わらず朝ドラの展開は早い
設定上の年齢は進んでいくのに役者の顔は若い頃のまま
違和感半端ない
ちなみにタカちゃんは映画にて激しいベットシーンを演じたそうだが
多分それほど激しくはない
本当に激しいSEXなんて映画化できるわけがない
やがて朝食が運ばれてきた
正直、納豆と漬物だけで十分だな
でもありがたい
今日もたくさん歩く
食べておいて損はない
俺は朝食を腹一杯食べた
おひつのご飯はおかわりできるそうだ
でもさすがにそこまでは無理だった
でも若い女の子二人組はおかわりしてた
若いって素晴らしい
後から運ばれてきたプチ湯豆腐がまた美味い
やはり京都だなと改めて思い出される
俺は食後のコーヒーを飲み干し部屋に戻り荷物を担いでチェックアウト
時間は8時30分
これからのんびりと大原三千院へと向かうという算段だ
レンタルサイクルもありますよと言われるが
俺は丁重にお断りした
宿には地図も完備されているが大原の地図も頭の中に入ってるので地図はいらない俺である
再び丁重にお断りした
やはり川を越えると状況が変わるもんだな
一気に霜だらけの景色に
大原のバス停を通り越し三千院方面へ入る
さすがにまだ人はいない
呂川と律川
大原に流れる2本の川
ここから呂律が回らないという言葉が出来たそうだ
解説を読んでもよくわからんので割愛させていただく
そして参道へ
誰もいない
開門まであと10分
開門まであと5分
ぼちぼち人が集まりだす
と言っても4人だが
さぁ開門だ
庭にはまだ雪が残っている
なんか水が出てたので手と口を清めておいた
この先が極楽浄土だしな
客殿から入り
お坊さんが集団でお経を読んでる場所を通り抜ける
そして庭を二つ通過
この時点で俺と同時に入場した人たちははるか先へ行っている
どうやらみんな庭には興味がないみたいだ
おそらく奴らは御朱印ゲッターかお地蔵さん狙い
あまりにも拝観のペースが早いからだ
相変わらずいい庭だ
なんかこれから極楽浄土へ行くんだ感がひしひしと伝わってくる
それにしても冬の大原もいいもんだ
やはり枯れた庭も美しい
そしていよいよ往生極楽院へ
あの国宝阿弥陀三尊のお住まいである
初めて来た人はその小ささに驚くだろう
そして中に入ると大きな阿弥陀様が観世音菩薩と勢至菩薩を両脇に従えている
その両脇の菩薩さんたちは少し前かがみの姿勢「大和坐り」
これは「今すぐ迎えに行くぞ」と言うその瞬間を捉えたお姿
この世界のどこかで誰かがお亡くなりになり極楽浄土へと導きに行くお姿である
中央の阿弥陀様はかなり大きい
そのために天井は船形天井となっており中央部分が高くなっているのだ
現在では天井部分の彩色はほぼ失われているが復元されたものがこのあとの場所で展示されている
まさに極彩色、極楽浄土なのだ
この往生極楽院でさえ俺は貸切状態
たまに人は来てもお堂の中にまで入らない
「なんでだろう?三千院一番の見所なのに」
奈良でも感じたのだが
みんな一体何を楽しみにお寺へとやってくるのだろうか?
もしかしてこれも御朱印ブームの弊害なのだろうか
東大寺にもいたが書いていただいた御朱印に文句を言う人たちもいる
「字が汚いとか」
「これはありえないでしょ」
「ありえないのはお前らだ」
なんでもブームになっちゃうとダメだな
15分ぐらい阿弥陀三尊と時を過ごした俺
正式には監視役のお坊さんもいるが
なんかここにいると全てがどうでもよくなってくる
「もういいや」
「こんな素晴らしい世界に行けるなら」
俺は早く極楽浄土へと行きたくなってしまっていたのだ
「いかんいかん」
我に返った俺は往生極楽院を出た
さようなら極楽浄土
俺にはまだ早い
そして弁財天、金色不動尊、観音堂、石仏の阿弥陀様などお参りして御朱印を書いてもらう売店みたいな場所へ
いきなり「ちゃんと全部回られましたか?」と疑いを受ける
御朱印を一つ上でもらい忘れてたからだ
俺は「ちゃんと回りましたよ」と軽く真言を唱えてやった
俺は御朱印ゲッターとは違うんだぜというところを見せつけてやったのだ
「順番変わりますけどよろしいですか?」
当然だ順番など正直どうでもいい
一番重要なのは参拝したという気持ちである
わがままな御朱印ゲッターが多いんだろうな
マスコミが適当な記事書いて煽っちゃってるからダメなんだ
せめて仏門に入信して一通り修行を終えてから書くべきである
そうしないとわかんないでしょ
書く人が無知だから
ただのスタンプラリー扱いする人が増えていく
この御朱印をいただける場所の横に先ほどの阿弥陀三尊の天井が復元されてる場所がある
ついでなので時間が許す限りは見ておくべきである
これが極楽浄土なんだと
そして三千院を出ようとする俺を呼び止める一人のおばちゃん
三千院恒例のお茶のサービスだ
お茶は基本無料
しかしここで注意が必要なのはお茶を飲んでる間、延々と三千院のお不動さんで祈祷されたお茶の商品説明を受けることになる
そして「次はこれをどうぞ」と試飲、試飲
京都に来ると漬物屋もそうだが買わずに帰れない状況に追いやられることが多い
しかもこの日は俺以外誰も現れない
まさに蜘蛛の巣に引っかかった虫
俺は仕方がなく抹茶を購入900円
「これもお布施だ」
三千院を後にした
次はお隣の勝林院へ向かう
その途中に一つの石がある
俺はいつも立ち止まり感慨深く見てしまう
法然上人が腰掛けた石
すごいな
あの仏教界のW杯と言っても過言ではない大原問答の時だろう
法然が天台宗、真言宗、法相宗、華厳宗、禅宗など学者も含めて380人と対決した仏教大論争
そのメンバーの中にはあの東大寺の重源さんも入っていたそうだ
そして全て論破する法然
現代でもこういうことはやるべきだよな
そんなことを思い浮かべて当時を妄想すると
この石に法然が座ったのかと思うとなんかも様々な思いがこみ上げてくる
そして俺の中で映画「色即ぜねれいしょん」の法然コールが再現されるのだった
09へ続く