鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

2019年 奈良と京都の旅 01

2019年も旅をする俺である

思えば去年の後半は忙しかった

ただ値引きやサービスでの仕事が多すぎて結果的にそれほど稼げてはいない

それでも頑張ったことには違いない

達成感だけはあるので良しとする

カネカネ言ってるとカネゴンになるしな

そしてラストスパートの末訪れた年末年始の休暇

俺はできる限り引きこもった

誰にも合わないように

変なウィルスを体内に取り込まないように

年に一度の旅

万全の体調で挑みたいからだ

歯の治療は痛みがない程度に間に合った

世間では風邪やインフルエンザが流行っているという

常に葛根湯と喉スプレーを欠かさない俺

最近ロングノーズのいいスプレーを入手

これで喉仏に直撃する回数が増えたのだ

 

さて今回の旅は久しぶりに2泊する

予算は7万円

プラス予備で1万円

結果としてなんとか予算内に治ったのだが

一人旅なんでこの予算でもかなり豪華な旅ができる

通常は1泊で予算5万と決めている俺である

今回は2泊なんでプラス2万

しかし2泊とも奈良ホテルというわけにはいかない

さすがに奈良ホテルに宿泊しておきながらコンビニ飯は寂しい

そこで俺は考えた

一泊は民宿にしようと

民宿なら安く済む

飯の評判がいい宿ならお得感満載だ

そこで以前から気になっていた大原の宿を予約

1日目は奈良ホテル

2日目は大原の民宿

どこに行くかは深く考えないでとりあえず一ヶ月前に宿だけ押さえておいた

 

問題はどこに行くかだ

俺はそろそろ奈良駅周辺以外の場所へも行きたい

飛鳥に吉野に室生寺長谷寺

しかし奈良ホテルを拠点にするにはやや不便な場所

そして奈良のホテルはそこそこの値段がする

京都なら4000円で泊まれるのにな

京都はホテルラッシュで完全にだぶついた

桜や紅葉以外は競争だろう

俺がこの正月明けに旅をするのは1年で一番観光地が暇な時だからだ

そのために休んでいる飲食店も多い

それが一番の心配だが

それも含めての旅である

旅先でのハプニングも楽しみの一つなのだ

 

俺はいつも書いてるようにまず最初に旅のテーマを決める

旅に出る前に俺は運慶の小説を読破した

俺の頭の中はすっかり運慶

小説の中の運慶は女を抱きまくり子供をわんさかこしらえてたが

どこまで本当のことなのかは誰もわからない

 

荒仏師 運慶 (新潮文庫)

荒仏師 運慶 (新潮文庫)

 

 2017年は運慶展が大好評

俺も東京まで見に行きたかったが暇もなく

なので奈良で見ようと

あの仏様もお帰りになってるはずだ

決定

今回の旅のテーマは

「運慶と極楽浄土の旅」

大原といえばしば漬けと極楽浄土だからな

これでテーマは決定

そして今回の旅の軸となるのが運慶展でも話題になった円成寺大日如来なのだ

運慶のデビュー作となる国宝、大日如来

確か運慶展ではオープニングを勤めてたはずだ

これはすごい演出だよな

いきなり大日如来

運慶に取っても仏師としてのスタートだしな

思い入れもかなりのものだろう

この大日如来に会いに行くのが今回の旅の軸である

2日目の午前

これに決定

初日は再建された興福寺中金堂を見て東大寺セレクト

最後に十輪院と言う工程を組んだ

暇があれば国宝館

しかし暇などあるわけもなく

それでも非常に充実した初日でもあった

 

 

1月6日

世間的には大型連休最終日

誰もが家に向かう中で俺は観光地へと向かう

誰かと一緒の旅なら新幹線でいかないと文句を言われることだろう

「在来線なんて聞いてないんですけど?」などと言われることだろう

しかしそこは一人旅

早めに家を出ることで移動の遅れはカバーできる

そして交通費5000円節約できるのはかなりのメリットでもある

俺は無理して座席に座ろうとも思わない

なぜなら立ってる方がカロリー消費できるからである

それでも米原からは確実に座れる

なんせ始発だからだ

朝5時に起きてまだ暗い中、ベランダの植物共に水を飲ませる

冬だしこれで3日我慢してくれ

室内の植物共にも水を飲ませる

受け皿に貯めといてやるからな

荷物は前日にまとめてある

後は若干減ったスマホiPadのバッテリーの充電

その間に焼き網を温める

いつものように全粒粉食パンを焼き

レタスとチーズを挟んで食べた

今日ばかりはコーヒーもシャバシャバの低脂肪乳も我慢我慢

なんせこれから奈良到着までトイレに行く暇はない

俺は電車内で用をたすのが大嫌いなのだ

なのでなるべく水分は取らないのが俺流の旅の始まりである

バスに乗り東海道線に飛び乗る

さすがに座る場所は無い

俺は米原まで車窓を眺めながら過ごした

頭の中は昼に何を食べるか?である

昼はあえて決めないことにした

高級なものは食べない

出たとこ勝負

夜は奈良ホテルで懐石

人間というものは高級料理の連続はツライ

なので昼は1000円以下で済ませる

まぁ半分決まってるのだが

ただどの店にするかは未定である

 

米原で乗り換える

ここからは関西圏だ

電車はすぐ向かい側に停車している

席はすでに埋まり気味

俺は格納型の座席をキープした

隣にはスマホでゲーム少年が座った

しかしよく延々とゲームなんかやってられるな

本読めばいいのに

夏目漱石

面白いぞ

漱石

ドロドロしてて

 

電車は快適に西を目指して走る

彦根

仕事でよく来たなぁ

能登川

昔ここで降りて自転車で走ったな

近江八幡

ここも自転車で回った

野洲

乾だな

あの無回転シュートは世界を驚かせた

草津、大津を超えて山科へ

山を越えれば京都だ

俺は京都で電車を降りた

 

切符は京都までしか買っていない

なので奈良行きの切符を買う

今回はJRを選択

JRで奈良を目指した

そして奈良到着

奈良に降り立つと小雨がパラパラ

奈良は曇っていた

 

 

相変わらず全身アウトドアで包み込んだ俺は少々の雨など相手では無い

全身が雨を・・弾いている・・

俺は傘もささずに歩いた

傘が無いわけじゃないけど

帰りたくない・・・

まぁ今来たばかりだ

さぁ飯だ

俺の頭の中はカレーでいっぱい

「おせちもいいけどカレーもね」

やはり正月明けはカレーに限る

俺はカレー屋を探した

カレーを出す店は全国どこへ行っても多い

それなのに何故かココイチが大繁盛

不思議である

そして奈良にもココイチはあった

しかしスルー

さすがに無理だ

奈良まで来てココイチは無理だ

俺はぐんぐん歩いた

東向き商店街に入ろうとしたところで小さな看板が目に入る

f:id:sababou:20190109123940j:plain

「売り切れ次第閉店」

どうやら高級ステーキ屋が経営するカレー屋みたいだ

しかし俺は諸事情から四つ足系は自ら進んで食べることはできない

そうなるとシーフードか野菜か

野菜大好きな俺であるがここはシーフード

久しくシーフードカレーを食べてないからだ

990円と予算内だしな

俺は入店した

オープン直後なのに席は2組いる

俺はカウンターへと案内されて注文した

今日はビールは飲まない

シラフの状態で仏像と対面したいからだ

俺はカバンの中から今回の旅にセレクトした本

「見仏記」を出して読みふけった

 

f:id:sababou:20190109124540j:plain

カレーが来た

「おお美味そうだぞ」

ライスで山を表現してある

もしかして須弥山?

そうなるとカレーは海だな

須弥海だったかな

須弥山には甘露の雨が降り注ぐというが

これはカレーだな

俺はカレーを注ぎスプーンで救い口の中に入れた

「な、なんだこれは」

衝撃的だった

カレーは甘口だ

かなりの甘口だ

しかしコクと旨味がすごいことになってる

ゴロゴロ転がったシーフードたちの旨味が凝縮されている

エビ、カニ、貝

鉄板焼き屋なら魚介の扱いにも慣れてるしな

お見事だ

辛くないが美味いカレーである

そこで俺は付け合せセットを思い出した

f:id:sababou:20190109125301j:plain

福神漬け、らっきょう、奈良漬、レーズン、激辛ペースト

俺は福神漬けとらっきょうと奈良漬をカレーに投入

レーズンか

俺はヌード写真が流出してしまった女子アナがネット上でレーズンと言われてたことを思い出した

奈良漬は奈良ならではだな

ならならややこしいが

まぁ無難だ

いいサポートしてるよみんな

そして激辛ペーストを少しぶち込んだ

途端に変わるカレーの味

本来の辛いカレーへと進化した

もしかして最初のはサナギマン?

これが完成系イナズマン

否、ここは奈良だ

甘いカレーが菩薩で悟りを開き辛いカレーに

つまり如来になったと・・

すると付け合せは天部に住む者たち

如来を守る者たち

四天王としては一人多いが

十二神将にしては人数が足らない

それでも彼らは確実に如来を守っているのだ

おそらく四天王プラスワン

誰だろう?最強帝釈天かな

四天王の親分だしな

そうなると激辛ペーストだな

さすが阿修羅を倒した帝釈天

格段にパワーアップした

しかしこれ美味いなぁ

これで990円ってコスパ抜群だぞ

これ食べた後にココイチ食べたら水みたいに感じるんじゃないかな

それぐらい旨味が凝縮されている

奈良の人は羨ましいな

 

俺は思いがけずにいい店を発見してウキウキしながら興福寺を目指した

f:id:sababou:20190109131242j:plain

 

何回訪れても懐かしい

小学生の修学旅行でバスから降りてお土産を買った場所

確か木刀を買ったんだよな

で、夜はチャンバラごっこ

懐かしい

しかし小学生とはいえ集団で木刀を持って新幹線って

今なら考えられないだろうな

f:id:sababou:20190109131744j:plain

猿沢池

なぜかいつも撮ってしまう

空は暗い

ここから階段を上がると見えてくる

再建された中金堂

f:id:sababou:20190109131845j:plain

外人ばかりだ

再建された建物には日本人はあまり興味を示さない

それでも創建当時の姿を平成も終わろうとする今見られるのは貴重な体験である

「よく作ったなぁ」

俺は以前宮大工の棟梁から聞いた話を思い出した

削るということの奥深さを

f:id:sababou:20190109132236j:plain

中金堂前には大きな礎石がある

ここもいずれ再建されるのかな?

ゴーリキを抱いてる人とかお金出せばいいのに

f:id:sababou:20190109132351j:plain

中央の扉は開かれていて金ぴかの仏様が見える

江戸時代の釈迦如来が金ぴかの姿で修復されたそうだ

釈迦の脇侍は薬王菩薩と薬上菩薩

調べてみたら兄弟みたいだ

兄が薬王で弟が薬上

そして四天王が四方を固める

これでどこから仏敵が攻めて来ようが守り通せる

彼らは国宝だしな

南円堂からお引っ越しされてきたそうだ

新築に入居か

以前は年位一度だけの公開だったが中金堂に引っ越しされてからは通年見られる

これでまた奈良に来る楽しみが増えたのだ

f:id:sababou:20190109133234j:plain

でかいな、立派だな

これでもまだまだ興福寺の一部だからな

当時はとんでもない権力を誇ってた

それがいいのか悪いのか

 

f:id:sababou:20190109133345j:plain

定番の五重塔も押さえておく

f:id:sababou:20190109133421j:plain

四天王の以前のお住まいである南円堂

今回はスルー

また今度

俺は東大寺を目指した

 

f:id:sababou:20190109133533j:plain

f:id:sababou:20190109133547j:plain

鹿せんべい持ってないのかよハゲ」

f:id:sababou:20190109133622j:plain

特別公開の時に着たいが

仕事が忙しい時だろうな

 

f:id:sababou:20190109133704j:plain

f:id:sababou:20190109133727j:plain

f:id:sababou:20190109133744j:plain

東大寺に入る前にお土産でも買っておくか
俺はいつもの店へ入り

いつものものを購入した

隣には何故かモンベルショップがある

そして俺は用もないのにいつもモンベルショップを覗く

でも長旅の外人さんには需要があるのかもな

この一帯から抜けると南大門が見えてくる

f:id:sababou:20190109133958j:plain

東大寺南大門

ここから先は聖域である

そして聖域に仏敵を入らせないために門番として仁王様が護っている

阿吽の呼吸のお二人だ

これこそが運慶快慶

当然国宝である

通常の仁王門は正面に仁王様が見えるようになっている

しかし南大門は正面は壁となっている

わずかに縦格子からお姿が見える程度だ

f:id:sababou:20190109134225j:plain

これは創建当時から仁王様はお互いに向かい合ってたそうだ

小説では運慶が向かい合うように作り直させたようになっていたが

事実は誰も知らない

そして仁王像は運慶快慶なのだが

棟梁は運慶が務めたのは確かだ

先代の棟梁の息子だしな

兄弟子の快慶としては複雑な気持ちで望んだのかもしれない

しかしそこは職人

やはり天才運慶の実力も認めていたのかも知れない

そして早くから世襲が決まってしまった慶派

やはり複雑だろうな

これこそ地方の同族経営

ただ2代目がバカ息子ではなく父を超えた天才だった

諸説あったが

1991年の解体修理の時に阿形像の金剛杵から墨書銘が発見され

吽形は定覚と湛慶、阿形は運慶と快慶が主に担当したことが判明したそうだ

小説ではここは運慶と快慶が別グループに別れお互いにせめぎ合うシーンである

しかし事実は違った

やはり兄弟弟子通し仲良しだったのかな

近くで見てみると似てるようで違う

やはりそれぞれの特徴が出ているのだ

f:id:sababou:20190109135604j:plain

f:id:sababou:20190109135620j:plain

俺はまず始まりの阿形から鑑賞した

こちらが運慶快慶のゴールデンコンビ

 

f:id:sababou:20190109135745j:plain

網が邪魔だ

近くだとピントが来ない

まぁ網がないと煩悩だらけの俺たちは門を通してもらえないのかもしれないな

網で襲いかかる仁王様を閉じ込めているのかもしれない

f:id:sababou:20190109140016j:plain

足ピーンが終わりを表す吽形
運慶の息子「湛慶」と運慶の弟「定覚」である

おじさん甥っ子コンビ

兄を超えられなかった弟

親父が偉大すぎた息子

実力は十分ながらも運慶がすごすぎた

 

f:id:sababou:20190109140540j:plain

 

f:id:sababou:20190109140630j:plain

なんとか仁王様こと金剛力士像の睨みを掻い潜り南大門を抜けると現れるのが東大寺ミュージアム

今回は時間はない

なのでトイレだけ拝借

そしてこの前には大仏様の手のレプリカが置いてある

f:id:sababou:20190109141022j:plain

f:id:sababou:20190109141102j:plain

手だけで見ると想像してしまう アレを

不謹慎だな

まだまだ修行が足らない

 

そして大仏殿が見えてくるが今回はスルー

大仏様の正式名称は毘盧遮那仏

大乗仏教でもある日本仏教の頂点に君臨する仏様だ

密教では大日如来と同一視

金剛界胎蔵界それぞれの大日如来が合体した姿だという

大仏様は拝観料払わずとも外からお参りだけできるようになっているので

お賽銭を入れて感謝の気持ちと世界平和を願った

ほとんどの人が訪れる大仏殿をスルー

俺には時間がない

この裏にはあの不空羂索観音が待っているのだ

急がねば

正直東大寺を回るには半日はかかる

美術館まで入れると半日以上か

それだけに絞らないとダメなのだ

これが今回の東大寺セレクトの意味

この続きは 02で