鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

スナックで飲まなくなった若者たち

スナック

お菓子ではなく飲み屋のスナックである

店内はカウンターのみ

またはカウンターとテーブル席少々

そんな一人でも切り盛りできるような小さな店が多い

ママさんと呼ばれるオーナー兼店長

そこに数人の女性従業員が接客をする

大抵カラオケは完備で他の客の聞きたくもない下手な歌を無理やり聞かさせるはめになるのだ

客はほぼ常連客のみ

一見さんでは入りにくい店が多いのもある

誰か知り合いに連れてってもらいボトルキープ

次回から通い出すみたいな感じだな

酒は比較的安い酒ばかり

サントリーオールドやリザーブから山崎程度が並ぶ

ヘネシーのVSOPなど置いてあったりもするが飲んでる客はまず見かけない

もしかしたら飾りで置いてあるだけかもしれない

そんな昭和的なスナック

寂れたビルや歓楽街に立ち並ぶ

誰かと飲みたくなった時にふらっと立ち寄り愚痴をこぼしながら酒を飲む

下心を持って来店する客もいるがママさんに迂闊に手を出すと大変なことになることもある

店を出す時の資金源

ママさんが誰かの愛人であり傭われママさんである可能性も多々あるのだ

つまみはスルメやミックスナッツにポテチに柿ピーなどの乾きものメイン

氷に突っ込まれたポッキーでおしゃれ感を演出する

店には小さな小さな厨房があり焼きそば程度なら作れるようになっている

1番の高級品がフルーツの盛り合わせだろうか

あと近所の店から出前を取ることも可能だったりする

キャバクラの場合はほとんどの客が下心全開であわよくば一発なんて思ってるのかもしれないが

スナックの場合は純粋に誰かに話を聞いてもらいたくて酒を飲みにくる人も多いのが特徴だ

そのためママさんの人としての技量が問われる

若さと美貌だけでは務まらないのである

俺がスナックに通ってたのは18歳から20歳の頃

毎週土曜日の夜に友達数人と飲みに行っていた

理由はただ一つ

友達が働いていた会社の社長の行きつけの店で、友達の会社の社長のボトルを勝手に飲んでも良いと言われていたからだ

そのために非常に安く酒が飲めたのだ

酒を飲んでカラオケを歌う

当時はまだカラオケBOXなど一般的でなく曲も懐メロや演歌が中心であった

時にはママさんや従業員のお姉さんとデュエット

調子に乗って飲んでるとBOX席で飲んでた知らない強面のおじさんが酒をおごってくれたりする

ここで仲良くしてしまうとあとが怖い

強面のおじさんがトイレに行った隙にママさんが助け舟

「あの人ヤクザだから。今日のお金は今度で良いから早く逃げなさい」なんて逃がしてくれたりもするのだ

店が終わるとママさんのおごりでラーメンを食べに行ったりしては

夜の街でのルールなどを教えてもらった

やがて俺たちはカッコつけてBARに通うようになる

漫画「BARレモンハート」を読んではうんちくを身につける

味なんか全くわからないのに知ったかぶるのだ

そしていつしかスナックには通わなくなって行った

 

今の若者はスナックにはいかないそうだ

おそらくスナックデビューは上司に連れられてと言うパターンが多いのかもしれない

俺の場合は子供の頃から親父にくっついてコーラを飲みに行っていたのだが

酔った勢いで親父の友達の人たちがおもちゃを買ってくれる

超合金のコンバトラーVなんか全部持っていた

これもみんなスナックのおかげである

昭和の時代は誰かと一緒にいないと孤独であった

それが今やSNSなどでどこにいてもネットが繋がっていれば誰かと繋がれる

そのために一人で過ごしていても寂しさを紛らわせる

これが若者のスナック離れの原因の一つだと言われている

昔はカラオケといえばスナックだったが今ではカラオケBOXだし

若者がウイスキーを飲まなくなったのも大きいと言う

そしてママさんの高齢

客も高齢

地方だと飲酒運転の厳罰化もあるし

景気低迷で会社の経費も使えない

客がこなければ新規にスナックを始める人も少ない

母親の店を引き継ぐパターンが多いのかもしれない

それでも全国に10万軒あるそうだ

これは実にコンビニの2倍の数である

減少しているのは居酒屋も同じでどんどん数を減らしているそうだが

キャバクラやフィリピンパブなんかはエロ目的でまだまだ需要があるのだろうが

スナックでできたことは今や自宅でネットがあればできてしまう

それもお互いに顔もわからない他人同士

今まで以上に本音を曝けだせたりもする

愚痴の聞き役としてのママさんの仕事はいずれ無くなっていくのかもしれない

 

そんな一方で若い女の子のスナック通いが増えてるとの記事もある

東京には女性専用のスナックも登場してるとか

ネットにはない「自分をさらけ出せる場所」であり「ママや良いおじさんは希望」だというが、その良いおじさんは下心を隠してるかもしれないが

女性の方がまだリアルに人との繋がりを求めてるのだろう

レモンハートみたいなBARがあれば一番良いんだがな

まっちゃんに口説かれるかもしれないがマスターが選ぶ酒に皆救われる

ヤバイ係の問題でもメガネさんがいるしな

何よりも酒の種類が凄いからな

漫画の世界ではあるが

でも酒を飲みながら知らない者同士話をするのは楽しいことである

知り合いと飲むのとはまた違った楽しさがある

俺も正月に久しぶりにBARで飲んだが楽しくて一人で閉店まで3時間も飲んでた

スナックはやっぱり入りにくいのが一番の問題だろうな

でも店内が見えるような店にしちゃうとスナックじゃなくなるような気もするし

難しいところだな

やはりスナックには昭和の香りを残しておいて欲しいしな

それこそがスナックなのである