鯖棒亭日乗(下)

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2018年 奈良冬の旅02

2018年の奈良冬の旅02

福智院で福智院、新薬師寺、白毫寺と回った俺は元興寺を目指した

この時午後3時

まだ昼飯は食べていない

完全に食べそびれたのだ

夕食は6時から奈良ホテルの日本料理の店で予約してある

今から食べるならおやつ程度に止めなくてはならない

すでにかなりの距離を歩いている

俺の体はエネルギー切れ寸前である

予定では奈良ホテルへのチェックインは4時

まぁ慌てる事はないな

俺は奈良ホテルを通過して元興寺を目指した

奈良を訪れるたびに元興寺へ行こうと思ってはいたがいつも優先順位が一番最後になるために今まで時間切れで行けなかった寺である

今日が初めての元興寺

世界遺産元興寺

元興寺南都七大寺の一つに数えられる

あの蘇我馬子が飛鳥に建立した日本最古の本格的仏教寺院「法興寺」が前身だ

蘇我馬子

懐かしい

学校の授業で初めて彼の名前を聞いた時に「ウマ子」という名前が妙にツボにはまりゲラゲラ笑った記憶がある

他には小野妹子も同じ雰囲気を醸し出していた

すっかり女だと思ってたら実は男だった的な歴史上の人物だ

その元となった法興寺平城京遷都に伴って分裂

一つは飛鳥に残り「飛鳥寺」と名を変えた

そして飛鳥から移転して来た方が「元興寺」となったのだ

つまり飛鳥寺とは兄弟寺になる

そんな呼び方があるかどうかは知らないが

他にも、もう一つの「元興寺」が存在するようで非常にややこしい

しかもこの二つの元興寺はかつて同じ寺

俺が訪れたのは奈良市中院町の真言律宗元興寺

もう一つは

奈良市奈良市芝新屋町元興寺がありこちらは東大寺の末寺で華厳宗となってるそうだ

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まずは本堂でお参り

この建物も国宝だ

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この辺りの寺はどこそうだが、もともとはかなり大きな寺ばかり

その頃の礎石

つまり基礎となる石が残されている

この石の上にそれぞれ柱が立っていたのだ

その礎石の向こうに宝物館

中に入るとまず小さな五重の塔が目に入る

「なんだ模型か」

と思ったらなんと国宝

実は江戸末期(1859年)に焼失した元興寺五重小塔の模型で、天平時代初期に造られたと伝えられ、古代の建築技法を知る上の貴重な資料だという

しかしあまりにも保存時状態が良すぎて逆にレプリカに見えてしまうのだ

高さ5・5メートル

国宝なのに間近で見れてしまうのである

それはもう手を伸ばせば届くぐらいに

いいのかこれで?元興寺。そして日本国よ

おそらく工芸品登録ではなく建築物の国宝として登録されてるからかもしれないな

そういえばここに八幡様の神像があった

仏教との結びつきが非常に強い八幡様

少しふくよかな坊主頭のお方だ

このお方があの富岡八幡宮神罰を与えら他とは想像できないが

本来の八幡様は数多くの人間を殺してきた神様でもあるのだ

そう考えると怖く見えてくるから不思議である

そんな時は空海さんの像を見て助けを求めるのだ

でも立場的には弘法大師より八幡様の方が上か

空海が唐に行く前に八幡神に参拝してるしな

あとは奈良だと聖徳太子もいたるところで祀られている

俺は「明日は法隆寺に行きますんでよろしくお願いします」と幼少時代の姿をした聖徳太子像に挨拶をしておいた

あと見所は智光曼荼羅だな

今はとても小さなお寺となってしまったが見所満載の元興寺

ここも俺の巡回スポットに登録だな

場所もならまち界隈だし

散歩がてらちょうどいい

俺は御朱印をもらい

陶器のかえるの置物を購入した

福かえる1000円

 

さて4時になった

とりあえず奈良ホテルへのチェックインだ

一旦奈良ホテルへ戻るとするが多分もう今日は出歩かないだろうな

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この辺りの写真はインスタで公開済みだが

チェックインした俺はホテルのお姉さんが丁寧にフリーWi-Fiの説明をしてくれたこともあり早速接続してインスタに写真を投稿したのだ

しかし喉が渇いてることに気づく

水を買うのを忘れた

おそらく奈良ホテルには自販機はない

冷蔵庫を開けてみた

水から酒まで揃っている

伝票を見てみた

水なら500ミリで150円と比較的良心的な値段だ

これなら冷蔵庫の利用もいいかもな

でもとりあえずは無料のお茶を飲む事にした

宇治茶と梅茶

ふとテーーブルを見るとカップのコーヒーが

コーヒー飲みたいなと思ったら

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300円・・・

有料だった

我慢だな

おそらく一般的な奈良ホテルの客層なら300円などなんでもない値段であろうが

背伸びして宿泊している俺にとっては御朱印一つ分である

ここは洗面の水で我慢だ

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窓からは庭が見える

なかなかいいな

新館はロビーが5階となる

俺の部屋は1階だ

庭を眺めながらぼっとするのもいいがいかんせん寒い

しばらく休憩して5時半に俺はホテル散策に出た

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ロビーには鳥居がありその向こうは鏡と偽物の暖炉

もうなんでもありな世界観

土産物屋を物色して俺は予約してある日本料理の「花菊」へと向かった

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これが俺が予約しておいた白鳳会席 約1万円

プラス二千五百円でアワビから伊勢海老になるみたいだが俺はアワビの方が好きだ

味も見た目もいやらしくて好きだ

早速俺は店の中に入った

「予約してある〇〇です」

案内された席は窓際

大きなガラス窓からはそれほどキレイではない奈良の夜景が俺を迎えてくれた

田舎だしな

まずは酒を注文

もちろん奈良の地酒

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俺は値段と睨めっこ

純米好きな俺だが純米吟醸の無上杯に決めた

この上ない酒だしな

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お酌をしてもらいまず一口

うまい!

なんて飲みやすい酒なんだ

安い割にはかなりうまいぞこれ

俺はウキウキとなった

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すぐに先付けが運ばれてきた

「新竹の子木の芽和え エビ、木の芽」

見た目も鮮やかな緑色に竹の子とエビが木の芽ソースで和えられている

竹の子は素材の良さがわかるいい竹の子だ

エビも小さいくせにプリップリじゃないか

うまいなぁ

酒がススム君で非常に危険な先付けだ

抑えなくては

俺はまだこの後バーで飲まなければならないのだ

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二品目もすぐに来た

この辺りは作り置きだろう

正月なのでおせちをイメージしてある前菜3種

「虹鱒ゆず風味のマリネ イクラ セルフィユ

「数の子と昆布 木の芽」

「黒豆田舎煮 針生姜」

俺は黒豆から食べた

正月に散々食べた黒豆だ

「う、うまいぞこれ!」

その黒豆は俺の中の黒豆の観念をぶち壊すような美味さだった

まさか黒豆がここまでうまいとは・・・

素材の良さももちろんだが、やはり工場でレシピに従い大量生産された黒豆とはもはや同じ名前で呼ぶのも失礼なものに仕上がっている

ダメだこんなうまいものを食べてしまっては

俺はもう2度と普通の黒豆が食べられなくなるではないか

次に数の子だ

これもまた正月に食べた

しかし俺は数の子は嫌いではないのだがそれほど美味いとも思わない

しかしこの数の子は違った

やはりこれも美味い

俺が今まで食べてきた数の子とは似て非なる食感と味の深みを出している

昆布も美味いなぁ

これが数の子本来の味なんだなろうな

寿司屋で食べる数の子もただ単にコリコリしてるだけでここまでの旨味はない

俺は酒をちびちび飲んだ

ラストは虹鱒にイクラだ

セルフィユってなんだ?

まぁいい食べてみるか

「これもまた臭みが全くない虹鱒ではないか」

虹鱒うめえ

もちろん

イクラも美味い

ノリスケさんタイコさんごめんなさいって感じだ

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三品目はお吸い物

正月なので雑煮だ

しかし普通の雑煮ではない

「清汁仕立 ふぐ真薯(しんじょ)焼餅 大根 人参 茄子 水菜 ゆず」

もうむっちゃくちゃ手の込んだお雑煮だな

お雑煮も散々正月に食べた

でもこれは全く別もの

このお椀の中に日本料理の真髄が入ってると言っても過言ではない

だしが最高なのはもちろんだが、ふぐ真薯から溢れ出るふぐの旨味がすごい

「これふぐだよ、紛れもないふぐだよ」

全くふぐの形はしていないがふぐである

上に添えられた薄切りの大根に人参、ゆず、水菜

ただ単に彩のために集められたエキストラでは決してない

こんなわずかな物でもちゃんと素材の良さが感じられる

ちゃんとエースをアシストしているのだ

日本の料理人ってやっぱりすごいな

そして何と言っても茄子

もちの下に隠れている

かなり煮込まれたのか形は完全に崩壊しているが

これがまた・・・茄子なのだ

極上の茄子なのだ

俺はここまで美味い茄子を食べたことがない

なんなんだ一体

感動覚めやらぬうちに次の一品が

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お造り3種盛り

織部焼の器に入れらている

ちなみに俺は織部が大好きである

「カンパチ、鯛、マグロ」

さてどれから行くかな

俺はわさびをカンパチに乗せて醤油をちょんとつける

そして口の中に優しく放り込んだ

「3年B組!カンパチ先生」

俺の頭の中で長髪のカンパチが泳いでいる

あそこにいるのは加藤と松浦

なんだこのカンパチは

脂まみれなのに

口の中に入れた瞬間にとても心地いい食感が俺を満足させる

そして次の瞬間に脂が

カンパチの脂がふわっと溶けていくのだ

そしてその脂の美味いこと

俺は正直カンパチは好きではない

カンパチだけでなく大トロなど脂が乗りすぎた刺身は苦手である

まさか奈良でこれほどのカンパチが食べられるとは

瀬戸内の島で食べたカンパチが俺の中でベストであったが

世界ランキング入れ替わりだな

次は鯛

これもまたコリコリとした食感の後でもちもちとした食感が追いかけてきて

口の中に鯛の旨味が広がっていく

これはいい鯛だ

京都の料亭で食べる鯛に勝るとも劣らないな

熟成が抜群なんだろうな

まぁ予約してあったし

それに合わせて逆算してあるんだろうな

ラストはマグロ

これも期待を裏切らないが

カンパチ、鯛ほどの感動はなかった

美味いマグロではあるが

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ここで酒が切れたので追加注文

やっぱり純米が飲みたいな

しかも雑味があるやつ

おっ!あるじゃないか酸味と雑味

燗がおすすめらしいが冷やで飲んでしまえ

「篠峯 遊々」

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ちゃんと純米酒だな

米の旨味に雑味が混ざり合う

俺はこういう酒が好きだな

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次は焼物

「あわびフォアグラ風味のクリーム焼き 金柑 はじかみ」

はじかみって何だ?

調べてみたらあの細長い生姜のことだったんだな

あわびのソースはウニかと思ったがフォアグラ

俺はフォアグラを食べるのは人生初なんでこれがフォアグラの味なのかは定かではない

ただ気になるのが「フォアグラ風味」と書かれていること

もしかして俺が今食べてるのはフォアグラではないのか?

ん〜よくわからんな

聞くのも恥ずかしいし

でも美味いのには間違いない

あわびのコリコリ感にフォアグラ風味のソースが絡んで俺を最高な気分にさせてくれる

周りに人がいなければ食べ終わった後の殻までペロペロ舐めまわしたいぐらいだ

あわびだけに

横に添えられたとても可愛らしい金柑

甘く味付けされ酸味と相まって素晴らしい脇役を演じてくれている

それははじかみにも言えることであるが

彼ら無くしてこの料理は完成しない

次は蒸物

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高山寺といえば鳥獣戯画

そんな器を開けると真ん中に黄金に輝く小さな饅頭が一つ鎮座していた

上にはとき山椒が添えられて見た目的には柑橘系?

否、奈良だけに柿だな

「百合根饅頭 うに 銀餡 とき山椒」

そうかウニが黄金感を出してるんだな

百合根か

随分と久しぶりだな

海の幸山の幸そろい踏みだな

百合根

たんぱく質が豊富で滋養効果もあるらしい

疲れた体に染み渡る暖かさだな

これで明日もまた元気に奈良散策ができる

でもこれもまたホクホクしていて

ウニの旨味も出てるし

贅沢な饅頭だよなぁ

銀餡も最後の最後までぺろぺろしてしまった

パンがあれば拭って食べたいぐらいだ

次は小鉢

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これまた彩り鮮やかな一品だ

黄色と緑

これはそれぞれマイヨジョーヌとマイヨベールを表してるんだな

そして白と赤

これでマイヨブランとマイヨアポワルージュ

ツール・ド・フランス

そんな訳ないな

まぁいい

「紅白膾 小鯛 色三つ葉 ゆず」

小鯛と膾

小鯛が美味いのは想像つくが、この膾がまた普段食べてる膾とは別物だな

一流の料理が作るとこんなに美味くなるんだな

濃い目の味付けが続いた後の口直しにもってこいの爽やかな一品だった

次は強肴

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鮮やかな器のふたを開けると

「来たぞ来たぞ、俺の大好物の金沢の郷土料理治部煮ではないか!」

何故奈良で治部煮?

まぁそんなことはどうでもいい

要するに素材が奈良なんだな

「大和肉鶏の治部煮 慈姑 人参 青味 とき山椒」

今度の黄色は慈姑

これも懐かしいな

昔々食べたことある

これもホクホクしてて美味いんだよなぁ

そして実際に美味い

そうか慈姑も本来はおせちに欠かせない食材なんだな

出世祈願の意味合いがあるそうだ

まぁ今のおせちはおせちでなくなっちゃったしな

本来こうでないといかんのだろうな

これで俺も出世しまくりだな

まぁ一応既に経営者ではあるが

しかし親父から受け継いだだけに大きな声で言うのは憚れる

 しかも俺一人だし

ただのバカ息子でしか無いからな

そして主役の大和肉鶏

弾力の中に旨味が凝縮されて最高じゃ無いかこれ

丼ぶり飯に大量に乗せて治部煮丼にして食べたいぞ

そしてこの鶏は俺が食べた中で一番美味いかもしれない

もっと食べたいなぁ

奈良に来てよかった

次は酢の物

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これも綺麗だな

「蟹金紙砧 蛤酒蒸し 蓮根 胡瓜 塩麹風味酢」

とても手の込んだ一品だ

まるで宝石箱のようである

この後は止め椀だ

ラストを飾る一品

今宵の宴を終わらせるための一品である

最後はあっさりと酢の物でしめる

酢だけにな

でも脇役の胡瓜までいちいち美味いんだよなぁ

本当贅沢だなぁ

最後まで全く手の抜きどころが無い

しかしこれが本当の終わりでは無い

もう一曲バラードを

シンプルに

だが真髄を見せるのだ

和食の底力を

 

 

 

留碗

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漬物の梅干しに見える赤いやつは実は赤こんにゃく

滋賀県の名産品だ

奈良ホテルめなかなかシャレが効く

あの皿に入れたら梅干しにしか見えないでは無いか

しかしこの赤こんにゃくが相当美味い

俺は赤こんにゃくも正直今まで美味いと思ったことはなかった

この日初めて俺は赤こんにゃくが美味いと思った

これが俺の赤こんにゃく記念日である

ご飯は奈良県産のひのひかり

香の物はおそらく自家製だろう

この漬物もまた相当に美味いのだ

ご飯もちゃんとお米が立っている

一体どうやって米を炊けばこんなに美味いご飯になるのか?

このご飯、ツヤツヤでかなり甘い

これに合わせるのは

ただただ味噌汁と漬物だけでいい

もう何もいらない

これが真の留碗である

最後の一粒までしっかりと噛み締め俺は終わらせた

この素晴らしい夕餉を

ありがとうござます

そして

ごちそうさま

 

 

さぁアンコールでデザートだ

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舞台は和から洋へ切り替わる

パテシエ腕の見せ所

デザート

 

いちごとメロンと小さなムースケーキ

俺はイチゴを食べた

子供の頃のイチゴのイメージは女の子のパンツの柄であった

そしてメロンを食べた

もう君にメロンメロン

最後はケーキで締める

あぁ 美味いなぁ

「なんつうのかな 最高よ 最高」

矢沢思うんだけどね

ここでコーヒーが来たらもう完璧じゃない?

でもさ緑茶なんだよ緑茶

これがさロックンロールなんだよ

だからアイラブユーOK

そしてA DAYな訳

 

Oh my  sweet いつまでも

月に抱かれて

 

 

これが本当の終わり

 

俺は会計を済ませて店を出た

 

つづく