2018年
今回は奈良の旅である
奈良も久しぶりである
行きたいと思いつつも京都経由なためについつい京都で降りてしまうのだ
しかし今回は衝動的に奈良ホテルを予約してしまった
俺の横浜での定宿はニューグランドホテルであるが
今回人生2つ目のクラシックホテルである
いつかは制覇したいクラシックホテル巡り
とりあえず蒲郡ならいつでも行けるのだが
確か細雪にも出てきた
そんな話は置いといて
1月4日
俺は東海道線に飛び乗った
いつものように新幹線代をけちるために在来線で行くことにした
やはり混んでいる
椅子に座ってのんびりと亀井勝一郎を読むという俺の夢はついえた
米原で乗り換える
やはり座れない
立ってる俺にどんどん詰めてくる乗客
やがて俺の前には女子大生風軍団、他の乗客に押されて俺の体にどんどん迫ってくる
そして密着
これはまずい状況である
仏は奈良に行く俺に試練を与えられた
全く身動きが取れない
動こうものなら彼女たちの体のどこかに触れてしまう
そして少しでも俺の体のある一部が反応するものなら俺の人生はこの瞬間に終わってしまう可能性がある
俺は耐えた
ひたすら心の中で般若心経を唱えながら耐えた
南無大師遍照金剛とも唱えた
全ては弘法大師にお任せするしかないと
無事、京都に到着
解放
俺は奈良線へと向かった
そのあとは椅子に座れる
安心感から眠ってしまう
やがて電車は無事に俺を奈良駅まで届けてくれた
さぁ奈良旅の始まりである
奈良駅に到着
やはり旧奈良駅は風情があるな
「とりあえず飯だ」
朝飯は米原での乗り換え時間の隙にサンドウイッチを胃の中に押し込んだ
まだそれほど腹は減っていないがこの辺りで食べておかないと食べそびれてしまう
俺は予定していたお好み焼き屋へ向かった
「だめだ・・並んでいる・・・」
俺は2軒目のお好み焼き屋へ向かった
「休みだ・・」
3軒目のお好み焼き屋へ
「ここもかよ・・・」
ここでグダグダしてると今日の予定がこなせなくなる
とりあえず俺は奈良ホテルへ荷物を預けに行くことにした
すると4軒目のお好み焼き屋発見
なにやら外人向けのガイド本に紹介されてるらしい
そして強気な価格設定
俺は断念した
たかが小麦粉にこの金額は出せない
近道発見
裏口から階段を登ると高台の上に奈良ホテルはあった
威風堂々と時間が止まったかのような佇まいでそこに存在していた
俺は早速ロビーへと侵入
フロントにいた綺麗なお姉さんに荷物を預けた
さて奈良散策だ
身軽になった俺はホテル近くの福智院へ向かった
福智院に到着
真言律宗 清冷山 福智院
「釈迦はすぎ、弥勒はいまだ出ぬ間の、かゝる憂き世に、目あかしめ地蔵」
そしてここのご本尊は非常に珍しい「地蔵大仏なのだ」
お地蔵さんの名前で親しまれる地蔵菩薩
ほとんどの人は街角にある石で作られた小さな石仏がお地蔵さんだと思っている
実際は石仏というだけで不動明王や大日如来や各観音様など様々な石仏が存在している
お地蔵さんの正式名称は「地蔵菩薩」であり石仏全般のことをお地蔵さんと呼ぶわけではないのである
そのために木で作られたお地蔵さんや銅製のお地蔵さん、塑像と言って粘土のお地蔵さん他様々な素材で作られたお地蔵さんが存在する
そしてほとんどのお地蔵さんは立像、つまり立ったお姿なのだ
ここ福智院のお地蔵さんは坐像である
いわゆる座ってられるお姿だ
しかし見た瞬間に驚く
「でけぇ」
座っているにもかかわらず大きいのだ
さすが地蔵大仏と名乗るだけのことはある
かなりのインパクトだ
背中には大きな光背が
その光背には小さな仏様がびっしり彫り込まれている
化仏と言うのだがその数560体
その周りに6体の仏が
これが「六地蔵」を表しているという
「六地蔵」この辺りの説明までしてると長くなるので割愛するが
これで566体の仏
これにご本尊のお地蔵様本体を合わせて567
この567という数字でピンと来た人はかなりの弥勒おたく
お釈迦様入滅後、56億7千万年後の世界に我々を救いに来てくだされる未来の仏様が「弥勒菩薩」なのである
そしてなぜその弥勒菩薩を表す「567」なのかは
お釈迦様の入滅後にニューヒーロー弥勒菩薩が登場するまでこの世は誰が守るのか?誰が救ってくれるのか?
それがこの地蔵菩薩なのだ
そのための背負った566体の化仏なのである
この福智院のお地蔵さんの強い意思の表れであろうか
お地蔵さんで化仏を背負う姿はここ福智院だけだと言う
そしてお地蔵さんは我々が死んだ後で大変お世話になる方でもある
死んだ後で六道の世界のどこに行くのかは裁判によって決まる
その裁判官が閻魔様を代表とする十王様たちなのだ
その裁判の時に我々の弁護をしてくれるのがお地蔵さんでもあるのだ
この辺りの話は後ほど書くとするが
そういうことなのでなるべく街角でお地蔵さんを見つけたらお参りしといた方がいいのである
ここ福智院
場所は、ならまち近くで看板も案内もあるにも関わらず訪れる人は少ない
しかしここのお地蔵さんは一見の価値あり
俺の奈良巡回スポットにも登録された
これでますます東大寺や興福寺に春日大社などメジャーな観光地から遠ざかりそうだ
一体奈良はどれだけ俺をワクワクさせれば気がすむのか?
この他にもまだ見ぬアフロ様が控えているというのに
俺は次なる巡回スポット新薬師寺へ向かった
奈良は結構高低差がある
どんどん登っていく
小雪ちらつく天気なのに俺は汗だくである
ところどころにこういった小さな道標が立っているので道に迷わなくて済む
ここを右に曲がれば新薬師寺の入り口だが、その前に腹ごしらえと思ったら・・・なんと店がない!
以前ここにはサイクルロードレース解説でおなじみの栗村修氏の知り合いの方が経営されてるカレー屋さんがあったのだ
店先には自転車用のラックが置かれて自転車乗りが集まるスポットだった
「まだ俺、飯食えないのかよ・・・」
まぁいい、とりあえず十二神将だ
ここが新薬師寺の入り口
本堂である
ここは華厳宗
つまり東大寺の末寺である
簡単に言うと東大寺傘下のお寺だ
本堂まで真ん中に走る道
その手前にそびえ立つ灯篭
まさに東大寺である
この本堂自体が奈良時代の建物であり国宝でもある
正面の扉は普段は閉ざされていて我々参拝客は向かって左手へと回ることになる
ここが本堂への入り口だ
中には円形の土壇があり中央にご本尊の薬師如来
奈良時代でこの方も国宝だ
その周りに円を描くように十二神将が置かれている
「俺たちがお薬師様を守るんだ!」そんな強い意志が感じられる十二神将である
しかもこの十二神将は塑像なのだ
塑像とは先ほども書いたが粘土で作られた仏像
年代は奈良時代
そんなものが現代まで残っているなんてまさに奇跡である
当然のことながら国宝
しかも中にはどうやってバランスとってんだ?と思うようなお方もいる
今はすっかり白くなられたが元々はカラフルな極彩色だった
この辺りのことはビデオで見られるようになっている
下の方に何やら書いてある
「国宝である仏像にお賽銭を投げないでください」
鳥居やしめ縄にお賽銭差し込むとか仏像にお賽銭投げつけるとか
本当に何やってくれんだって感じだな
こんなことが続いたらいずれ全て金網で覆われてしまうだろう
そして新薬師寺のご本尊の薬師如来はとても手が大きく優しい顔をされてるのが特徴だ
こんな素晴らしい徳のある人だからこそ十二神将も命をかけて守ろうとするのだろう
「おんころころせんだりまとうぎそわか」
新薬師寺の裏にはこんな看板が
どうやらお寺の裏手は憩いの場として解放されるらしい
塀から覗いてみた
ここで近所の子供達が遊ぶんだな
お薬師さんに見守られながら
さて次は白毫寺だ
ここ新薬師寺からさらに登り基調な道が続く
ここを左に入るとカフェがある
しかし少々お高くて断念
途中にはお地蔵さんが集まってる場所が
俺はいつもここでお参りしてから白毫寺を目指す
そして最後は石段が待ち受けるのだ
ちなみにこの白毫寺も真言律宗
花の寺と閻魔様で有名なお寺だ
ここからもうひと頑張り
途中で山門が見えるが先はまだ続く
ようやく到着
頑張っただけに境内からの眺めは最高だ
奈良市内が見渡せるがあいにくの天候
この中に閻魔様がおられる
俺は中に入った
すぐに飛び込んでくる怖い顔した閻魔様
眼光鋭く口はカッと開いている
まさに憤怒
俺は立って拝観することができずに思わず土下座してしまう
そしておもむろにお賽銭を取り出し奉納した
閻魔様の両隣には裁判を書き留める書記の方々が
多分今、俺が生前に犯した罪状が書留られている
いついつどこでアリを踏みつぶしたとか
ゴキブリを殺したとか
数え切れない罪が書き込まれていく
ふと正面の閻魔様を見ると
「お前は何やってきたんだ!!!」と激怒
再び俺は深々と頭を垂れることとなる
そして唯一の心の支えは俺の隣に立っておられる地蔵菩薩
ここでは俺の弁護をしてくれることになっている
「この人は散々悪いこともしてきましたが、こんな良い事もしてきたのです」と閻魔様に伝えてくれる
このお地蔵さんの弁護により多少は罪が軽くなるのだ
ついさっきも福智院でお参りしてきたしな
と、こんな風に地獄の裁判体験ができるのが白毫寺なのだ
これも参拝客が少ないからであるが
この時、参拝客は俺一人だけであった
しかし白毫寺は花の寺として有名だ
季節ごとに様々な花を咲かせて楽しませてくれる
そのために花のシーズンの時はカメラを持った人でごった返すそうだ
この時も咲いてる花がちらほら
子福桜が咲いていた
秋から冬にかけて咲くそうだ
俺は御朱印をもらい
閻魔様手ぬぐいと閻魔様お守りを購入してお寺を後にした
奈良で俺が一番好きな寺かもしれないな
そして白毫寺の閻魔様手ぬぐい
包まれている紙に書かれたイラスト見ただけで欲しくなる事間違いなし
これテレビで紹介されたらかなり人気出そうなんだがな
今、俺の部屋では閻魔様手ぬぐいが俺を監視している
来た道を戻る事にする
次は元興寺を目指す
途中に行きに参拝したお地蔵さんが
そういえば志賀直哉の家がこの辺りだったな
寄り道していくかな
到着志賀直哉旧邸
人力車観光してる若いお嬢さん方が記念撮影
果たして彼女たちは志賀直哉の本を読んだ事があるのだろうか?
隣のカフェの入り口から志賀直哉の家を眺める
何やら外人がカメラを向けていたので覗いてみると鹿の親子が水を飲みに来ていた
鹿 「誰だ?このおっさん?」「鹿せんべい持ってんの?」
これがこの日の鹿ベストショット
この日はとにかく鹿が少なかった
つづく