鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

2018年冬の旅は奈良で宿をとった

俺は植物を育てている

そのためにここ数年冬の旅ばかりである

冬なら数日ぐらい水やりしなくて済むからだ

だいたい正月明けに京都へ行くことが多かった

今年も例年通り京都の旅を計画していた

いつものように1月4日

いつもの四条のホテル

空いている

10部屋空いている

でも待てよ

奈良はどうだろう?

久しぶりに奈良も行きたいな

京都はほぼ回っているが奈良はまだ奈良駅周辺すら回れていない

そんな俺は奈良で宿を検索した

まず最初に出てくるのが奈良ホテル

11000円?

そんな安く泊まれるのか?

よく見たら一桁違ってた

110000円

いつも憧れの眼差しで通り過ぎていた奈良ホテル

せめてコーヒーだけでも飲みに行こうかと考えてはみるも

中々行けずじまいである

奈良は広い

そして見所がありすぎて時間が足りないのだ

奈良駅周辺だけでも仏像を見ようと思ったら

お寺だけでなく博物館があるからな

国立と東大寺興福寺

それはそれは大変なのだ

俺は再び奈良ホテルの宿泊プランを眺めていた

「ん?ずいぶんと安い部屋もあるんだな」

「新館のシングルか」

「横浜のニューグランドの旧館なんかも1万円で泊まれるしな、こんなものなのかな」

新館シングル1泊14500円

俺は先ほどのスイートの値段を見ていたために金銭感覚が麻痺していたのだ

奈良ホテルが15000円か」

「冥土の土産に一度宿泊してみるのもいいかもしれないな」

「今年は3ヶ月ほぼ無休で1日15時間労働で頑張ったしな」

「自分へのご褒美に多少は贅沢するのもいいかもしれない」

「とは言ってもそれほど予算はないが」

「ちょ、待てよ!」

「朝食が1500円になる?」

なんと俺が今見ている宿泊プランは通常税込2900円ほどする憧れの奈良ホテルの朝食が1500円で食べられるというのだ

「これは中々魅力的だな」

しかも和洋選べるし

まぁ選ぶまでもなく「和」なんだが

定番のシンプルな朝食

鮭の塩焼き、出し巻き卵、胡麻豆腐、野菜の炊き合わせ、ひじきの煮物、味噌汁、茶粥or白飯、奈良漬

これで3000円弱である

一体どんな味なんだろう?

想像しただけでワクワクする

なんせ建築家・辰野金吾が設計した奈良ホテルの朝食だ

アインシュタインマーロン・ブランドオードリー・ヘップバーンダライ・ラマも宿泊している

もちろん各国の王室や日本の皇室関係者も宿泊している奈良ホテルである

朝は興福寺の鐘が目覚まし代わりの奈良ホテルである

そんな奈良ホテルの素晴らしくシンプルな朝食が1500円で食べられるのだ

正直このメニューならビジネスホテルで無料食べ放題で提供してくれるところもある

それだけに・・非常に・・・興味深いとなるのだ

そして奈良と言えば茶粥である

俺は奈良に来るたびに茶粥を食べる

前回は宿泊したホテルフジタで食べた

しかし所詮茶粥は茶粥

今まで食べた茶粥は決して俺を満足させることはなかった

「これなら白飯の方がいいな」

「奈良漬食べ放題だし」

そんな奈良の茶粥

奈良ホテルの茶粥は緑茶仕様である

俺の脳裏に名古屋の某店の鯛茶漬けが浮かぶ

正直、ほうじ茶の方が好みかな

しかしそこは奈良ホテル

興福寺の鐘とともに目覚め、窓の外には全室中庭が見える

鼻歌交じりでシャワーを浴びて中庭の見える窓の前に立つ

まるで海街ダイアリーの広瀬すずかのようにバスタオルを解放し全裸で立ち尽くす

なんとも言えない解放感が俺を包み込む

その後に食べる茶粥は一味も二味も違うかもしれない

夕食はもちろん奈良ホテル内のレストランだ

ここでも和か洋か選択しなければならない

箸で食べるのが好きな俺は当然のことながらここでも「和」である

奈良ホテルの「和」は、日本料理 花菊だ

名画の掛かる落ち着いた店内にて、吟味を重ねた旬の素材にこだわりの技を凝らして提供される料理

奈良の地酒はもちろんのこと、ソムリエ厳選のワインも取り揃え、お料理に合わせてお楽しみいただけるそうだ

 

シェフから一言
「吟味された素材のよさを活かしながら手間と時間をかけたここでしか出会えない美味しさを五感のすべてでお楽しみ下さい」

 

楽しませて貰おうじゃないか

五感の全てで

俺は早速夕食を予約した

会席「白鳳」税込10692円

3種類ある会席の中間のやつだ

さすがに1番お高いのは予算的に厳しい

この値段プラス酒代がかかるからだ

 

そして五感で楽しませていただいた後は、

再び酒だ

Bar 「THE BAR」

濃密な時間が流れるオールドファッションドバーである

さすが老舗ホテル

しかし気後れすることはない

どうせ客はみんな観光客だ

とは言っても「レモンハート」を読んで予習しておくぐらいのことは必要かもしれない

一人カウンターに座り孤独な紳士を演じながら飲む酒は格別であろう

隣に一人客の美人のお姉さんがいれば最高だ

歳の頃は30歳

俺はそっとバーテンダーに話をする

少し離れた場所で一人飲んでいるお姉さんの前に突然奈良ホテルオリジナルカクテルが差し出される

「あちらのお客様からです」

写真で見る限りオリジナルカクテルは柿だな

色はオレンジでグラスの下に柿の葉が敷いてある

ベースはなんだろう?

なにやら泡立ってる

そして泡の上には大葉みたいなのが乗っている

奈良、奈良、柿、柿、鹿、鹿、大仏、大仏

わからない

あの緑の千切りはなんなんだ

どて飯なら青ネギなんだが

まぁ飲んでからのお楽しみだな

 

このように今回の俺の奈良の旅のテーマは「贅」

去年の京都の旅のテーマは「庭」

今年の京都の旅は「全部のせ」

そして来年は「贅」である

さてどこに行こう?

2日目は前回行けなかった法隆寺と決めてある

今回唐招提寺にも行きたい

そうなると薬師寺もだな

しかし新薬師寺と白毫寺も前回御朱印をいただいていないのでまた行きたい

白毫寺の閻魔様にも挨拶しておきたい

薬師寺薬師如来十二神将の周りをぐるぐる回りたい

そしてホテルの近くには元興寺もある

もちろん東大寺興福寺

東京、尾道、奈良と俺がいく先々に旧居が残っている志賀直哉の家にも行きたい

困ったものだ

やはり奈良は2日では回りきれないな

この辺りはおいおい考えていこう

 

とにかく俺は奈良に行く

それまでに戦争が起きなければ幸いだ

猿沢池周辺のお店で小学生時代を思い出し

チープなお土産を買うのだ

持っていく本は何にしようか?

 

やはり亀井勝一郎和辻哲郎

 

大和古寺風物誌 (新潮文庫)

大和古寺風物誌 (新潮文庫)

 

 

 

古寺巡礼 (岩波文庫)

古寺巡礼 (岩波文庫)

 

 

初版 古寺巡礼 (ちくま学芸文庫)

初版 古寺巡礼 (ちくま学芸文庫)

 

 

 いとうせいこう氏、みうらじゅん氏の見仏記も外せないな

 

見仏記 (角川文庫)

見仏記 (角川文庫)

 

 実は毎回旅にどんな本を持っていくか?

これを考えるのが一番楽しみだったりするのだ