鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

鈴木春信と梅蘭の天津飯ランチ

今日は休日

久しぶりに街へ繰り出した

お目当は「鈴木春信」

ボストン美術館が厳重に保管してきた錦絵の第一人者の作品だ

ボストン美術館と言っても名鉄で行けるボストンである

名古屋市金山駅で降りてすぐ隣にボストン美術館はある

開場15分前に駅に到着した俺はトイレを済ませてのんびりと美術館へ向かった

美術館は朝一がいい

それは鑑賞するのに2時間はかかるからだ

10時から鑑賞すればちょうど昼飯時となる

全てがちょうどいいのだ

駅は人で溢れているがボストン美術館へ行く人は少ない

それもそのはずエスカレーターはまだ動いていない

俺は階段で2階へ上がった

とりあえず侵入できるのはここまでである

俺は行列の先頭に立ちカバンの中から本を取り出して読み始めた

「吉原辞典」

 

図説 吉原事典 (朝日文庫)

図説 吉原事典 (朝日文庫)

 

 浮世絵を見るに当たって吉原を勉強していくことは悪くはない

春信も吉原を描いているからだ

江戸を描くにあたって吉原はやはり外せないのである

10時近くになるとようやく行列ができ始めた

それでも人はまだ少ない

10時になり俺は1番乗りでエスカレーターで上を目指した

プリントアウトしておいた割引券を見せて100円割り引いてもらった

この貴重な100円は後ほど有効的に使わせてもらおう

俺は早速入場した

美術展はペース配分が重要である

数時間立ちっぱなしになるために結構疲れる

どうしても最初はじっくり見がちで時間を食ってしまい

後半にざっと流し気味になってしまうことも

たいていの場合は時系列で進むことが多い

中盤で最盛期が来て後半は晩年だ

途中でビデオ鑑賞しながら休憩を入れるのもいい

ボストン美術館は3フロアで構成される

まず3階がチケット売り場とミュージアムショップ

ここまでは無料でOKだ

そして4階5階が展示会場となる

名古屋ボストン美術館は金山総合駅と言う名駅にも近く地下鉄もJRも名鉄も乗り入れてアクセスはいいのに人は少ない美術館だ

そして平成31年の3月で閉館となる

ただでさえ美術館が少ない名古屋地区

大きな美術館が姿を消すのは残念である

そして今後の名古屋ボストン美術館の特別展も最後に向けて気合を入れてくる

来年の2月からはボストン美術館の至宝展が始まる

ゴッホの郵便配達人

英一蝶の涅槃図

モネの睡蓮

ウォーホルはジャッキーだ

まぁ既に展示されてるのも含まれてはいるが見ておける時に見ておいたほうが良い名作ばかりである

そして浮世絵もたんまり持ってるボストン美術館

とても楽しみである

www.nagoya-boston.or.jp

 

お楽しみは来年ということでとりあえずは鈴木春信である

「春信を知らずして浮世絵は語れない」

錦絵創始期の第一人者である

そしてほとんどの作品をボストン美術館が所有しているために

「これほどの春信を見れるなんて・・・」ととても貴重な展覧会なのだ

そして日曜日でもお客さんは少なくのんびりと静かに鑑賞できるのも名古屋ボストン美術館の良いところだ

春信の作品はとても上質な紙が使用されているために「空摺」で立体的に表現されたところも見所である

特に雪なんかとても空摺が有効的に使われている

日常の何気ない風景を切り取る

夕立が来て慌てて洗濯物を取り込む女

突然の突風に煽られる女

着物の裾がハラリとめくれ足が露出する

少し腰をくねらせた立ち姿がとても色っぽいのだ

窓の外に見えるイケメンに見惚れる女たちや

語り合う恋人たち

そして江戸の美人町娘シリーズ

当時の男どもは夢中になったことであろう

浅草に行けば谷中に行けば、この美人達に会えるんだと

とは言っても俺が見る限り全て同じ顔に見えてしまう

今回、喜多川歌麿の作品が2つ展示してあったが春信は歌磨にも多大な影響を与えている

そして歌磨になるとそれぞれの美人さんの顔に特徴が出ていて違いがわかるのだが

これも錦絵の最初ということなんだろうな

時代的にまだ役者絵なども特徴を捉えた似顔絵風ではないのだ

春信は40歳の若さで死んだ

時代はまだ春信を求めていた

そして残された絵師達が春信の画風を受け継いでいったのだった

harunobu.exhn.jp

来年の1月21日まで開催されているので興味ある方はお見逃しなく

 

 

俺は名古屋ボストン美術館を後にした

時間は既に昼12時だ

帰りにミュージアムショップに立ち寄り普段は買わないポストカードを大人買いした

春信だけでなく北斎に広重、ゴッホに藤田

東西関係なく好きな絵を買い漁った

今俺の目の前には再現されたパリの街がある

ツール第21ステージを彷彿させるかのようなパリの街だ

そしてその背景には北斎ビッグウェーブ

もうなんでもありの世界だ

 

とにかく腹が減った俺はランチを金山駅で済ませることにした

駅ビルの2階に上がる

どの店も行列ができている

一通りチェックしてランチメニューに代わり映えのないことを確認した俺は行列の一番少ない梅蘭に決めたのだ

梅蘭

本店は横浜中華街にあり卵焼きみたいな焼きそばが大人気の店だ

俺は10年ほど前に横浜の本店で噂の焼きそばを食べた

最初の一口は驚いた

想像していたものとは全く違うものが中から出てきたからだ

そして美味い

俺は無我夢中で食べた

当時の俺は人生で最大に太っていた

体重80キロを超えていた

しかし最初は美味かったはずの焼きそばが半分あたりからだんだんクドくなり

最後は腹一杯で食べれなくなってしまった

満腹で食べるのがとても辛い

味も単調だし

俺はまだ肉まんを食べる予定だったのに・・・

周りを見るとカップル達はみんな一皿を2人でシェアしている

しかし孤独な一人旅の俺には半分食べてくれる可愛い彼女はいない

辛い・・食べるのが辛い・・

俺はかなり無理をして焼きそばを食べきった

そんな思い出のある梅蘭である

気がつくと全国にチェーン展開している

しかもイオンのフードコートにまで出店している

この手の中華料理をチェーン展開しても大丈夫なのだろうか?

金山にできた時に俺は恐る恐る焼きそばを食べた

一口目から「ん?」

それは明らかに本店とは似て非なるものであった

まぁセントラルキッチンで作らない限り味にばらつきは出るだろう

そしてメニュー的にセントラルキッチンでは無理だろうな

それ以来足が遠のいていた梅蘭である

しかし空腹に耐えかねた俺は梅蘭の行列にならんだ

俺の前にはおばさん二人組だけだ

俺は空腹に耐えながら待ち続けた

店員が来た

「にゃんめいしゃまでしゅか?」

「一人です」

「しばりゃくお待ちキュダサい」

一人だということを理由に待たされた

しかし俺の後ろも全て一人客であった

しばし待たされる

その間にも店内の客はどんどん出てくる

しかし一向に呼ばれない俺たち一人客おっさん軍団

おそらく4人掛けテーブルしか空いてないのだろう

俺は他の店へ移ろうかと考えた時に

ようやく店内へ案内された

俺は4人掛けテーブルへと通された

とうとう店側も諦めたのだろう

これ以上一人客を待たすわけにはいかないと苦渋の決断である

俺はすぐに注文した

天津飯セットご飯大盛りのエビチリと生ビール」

天津飯セットはご飯大盛りは無料である

そして副菜としてエビチリ、レバニラ、チンジャオロースの中から選ぶことができるのだ

なるべく4つ足の肉を食べない生活をしている俺はエビチリを選択した

ご飯を大盛りにしたのには幾つかの理由がある

無料であること

朝から何も食べてなくお腹と背中がくっつくぐらい腹ペコだったこと

そして甘酢醤油のあんがやたらと味が濃そうだったことである

つまり白飯を多くしてあんをマイルドにしようと俺は考えたのであった

エビチリも味は濃い

スープと杏仁豆腐が付くと言っても

濃い濃いではさすがに辛いからだ

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まずはビールが運ばれてきた

今日は暖かい

歩いてると汗をかいた

春信の後の生ビールは最高だな

それでも俺はエビチリで飲むことを想定してちびちび飲んだ

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以外と早くそれはやってきた

ランチメニューなんでそこそこ早いとは思っていたが牛丼店並の速さである

準備さえしてしまえば仕上げは早い中華ではあるが・・・

考えられる理由は作り置き

杏仁豆腐と卵スープとエビチリは皿に装うだけであろう

もしかしたら天津飯の卵もあらかじめ焼いてあるのかもしれないな

まぁいい

とにかく食べよう

俺は腹ペコなんだ

まずはエビチリで生ビールを

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「ん?」

俺の予想をはるかに裏切る味つけ

甘いのだ

とにかく甘いのだ

エビはプリプリしてるが

ソースが甘いのだ

こ、これでは生ビールがすすまない君ではないか・・・

エビチリのチリは一体どこに行った?

 

調べてみたら必ずしも辛いものでも無いらしいな

でも甘いだけだよなこれ

豆板醤を足したいぐらいだ

さすがにこれではビールのつまみにならない

俺は大きく落胆してメインの天津飯を食べることにした

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これが天津飯

あんがとてもどす黒い

俺はこのあんに備えてご飯を大盛りにしたのだ

俺は一口食べた

「うっ、濃い・・」

これもまた俺の予想を裏切る味

想像よりはるかに甘じょっぱくて濃い

「俺これ全部たべれるのか?」

俺はビールで無理矢理流し込んだ

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インターバルで卵スープを飲んだ

「ん?白湯か?」

甘すぎるエビチリと甘酢醤油あんに舌がやられたのか味がしない

俺は必死にスープの中に隠されただしを感じようと神経を研ぎ澄ませた

「だ、ためだ・・・」

まるでお湯を入れすぎたインスタント卵スープみたいだ

舌が落ち着くまで待とう

再び俺はエビチリに手をつけた

そして一思いに一気に食べ、ビールで流し込んだ

まるで尾崎豊がポテトをコーラで流し込むかのように

これで濃い濃いブラザーズの弟が消えた

残る天津飯も片付けなくてはならない

俺は天津飯を食べた

「ん?」さっきよりうまく感じるぞ

これはどうしたことか?

俺は考えた

足りない頭と足りない頭髪で考えた

「そうか!」

つまりご飯を大盛りにしたことが功を奏したのだ

要するにバランスである

最初に食べたのは天津飯の端っこ

つまり卵とアン多めの部分だ

そのためにとても味が濃かったのだ

しかし次に俺が食べた部分が十分な白飯が取り込まれている

この白飯とアンと卵のバランス

三位一体となった時にこの天津飯は本来の味を引き出すのだ

「探れ、探るんだ」

俺は最高となるバランスを追求した

気がついたら俺のスプーンは止まらなくなっていた

卵はかなりしっかりと焼かれパサパサになっている天津飯

でも嫌いじゃない

むしろフワトロより男らしくていいじゃないか

いかにも独身男性の料理って感じだ

最初は驚いたが食べれば食べるほどクセになる

以外とうまいんじゃないのかこれ

俺は瞬く間に食べ尽くした

掴んだぞ

この天津飯の食べ方を

俺は意気揚々と最後の締めの杏仁豆腐に取り掛かった

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これは表現しようがないほど普通の杏仁豆腐

正直いらないな

天津飯単品とザーサイでいいな

それか副菜に餃子か春巻きかシュウマイあたりをセレクトしてほしい

スープもあれならいらないな

まだ味噌汁の方がいい

まぁ値段が値段だし

腹一杯だし

ほとんどの人が注文する大人気の焼きそばはいまいちだが天津飯は途中からうまくなる

これはまた食べてみたいな

今度はエビチリでなくチンジャオロースにでもするかな

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天津飯セット 1129円

生ビール  520円

 

合計 1781円〔税込〕

 

ごちそうさまでした