鯖棒亭日乗(下)

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高野山03

高野山03

01と02で空海さんの生涯について書いてきた

今回から少しづつ高野山そのものに触れていこうと思う

まずは高野山への行き方

高野山へはそれぞれ自家用車、ツアーバス、自転車、徒歩、電車と様々な方法でみんなやってくる

大型駐車場があるとはいえ確実に駐車できるかどうかは不明だ

車では訪れたことがないので詳しくはわからないが、おそらく日帰りのみだろう

宿坊などに宿泊する場合は各お寺に事前に伝えておけば駐車場を確保してくれると思う

ロードバイクなどのスポーツバイクで高野山まで来る人も多く見るが彼らの中にはただ単にヒルクライムしに来てるだけの人もいるであろう

さすがにレーパンでの参拝はどうかと思う

そして1度は歩いてみたい九度山からの町石道

時間がないと難しい

アーバス

これは全国各地からやってくる

俺がお世話になってるお寺さんからも毎年檀家さんなどを対象としたツアーを行っている。その他各観光会社企画物など様々な人が観光バスでやってくる

これが1番便利で楽チン

ただ自由が効かないので俺はいつも電車で行く

高野山へ電車で行く場合は大阪の南海電鉄の「なんば駅」が起点となる

これは高野山へ電車で行くには南海電鉄の完全支配下に置かれているからだ

そのためにとりあえず人々は大阪を目指し、なんばを目指す必要がある

俺なんかはせっかくなので帰りには大阪や京都を少しだけ回って帰ることもある

これが電車一人旅のいいところなのだ

高野山の後で京都の東寺を回るなんてまさに密教三昧、空海三昧なのだ

新幹線、地下鉄など乗り継ぎ大阪の南海電鉄なんば駅」までやってくる

ここで注意が必要なのは他の場所にJR、近鉄阪神、市営地下鉄の難波駅があるということ

とにかく「南海なんば」を目指す

ひらがな表記なので他とは差別化されてわかりやすいのだ

そこからは高野線で一本だ

その南海鉄道にお得な高野山世界遺産切符が用意されている

事前にJTB日本旅行近畿日本ツーリストなどで購入するもよし

現地のなんば駅で購入するのもいい

値段は通常大人2860円

こうや往路(片道)特急券付きが3400円となる

気になる切符の内容は

電車割引往復乗車券  南海電鉄 発売駅⇔高野山
高野山内バス2日フリー乗車券  南海りんかんバス

【特典】拝観料2割引サービス券  金剛峯寺、金堂、根本大塔、霊宝館
【特典】お土産1割引サービス券  珠数屋四郎兵衛、中本名玉堂、高野茶屋 和久

この切符一つで高野山が満喫できるのである

俺は毎回購入していくが高野山内ではほとんど歩くために結局バスは行き帰りの2回しか乗らないのだが一般の人にとって2日間バス乗り放題はありがたいはずだ

www.nankai.co.jp

そして時間とお金に余裕がある人は途中の橋本駅から出ている観光列車もオススメだ

www.nankaikoya.jp

特にこのHP内にある高野山ご紹介ムービーは必見だ

 

そうやってたどり着いた高野山

壇上伽藍や奥の院の2大聖地やお宝満載の霊宝館の話はまた今度ということにして

今回は食

精進料理である

この精進料理を目当てに高野山へ訪れる人も多いと思う

各宿坊ごとに心込めて作られた精進料理はとても美味いのだ

懐石料理、京料理の原点でもある精進料理

使用されるのは植物性の物のみ

しかもネギやニラ、にんにく、玉ねぎ、らっきょうなど匂いのきついものも使用できない

もちろん卵もダメ乳製品もダメ

鰹節で出汁を取ることすらできないのだ

これらは大乗仏教と呼ばれる日本仏教の特徴の一つ

お釈迦様の初期仏教三種の浄肉という戒律があり

殺されるところを見ていない
自分に供するために殺したと聞いていない
自分に供するために殺したと知らない 

とこれらの条件を満たしていれば肉食も許されたのだ

人からお布施されたものを無駄にしないということだろうが、自分たちで都合のいい解釈をして日本仏教の坊さんたちも肉食し始めたのかもしれないな

お酒に関しても確か空海さんは薬として極少量のお酒は飲んでもいいようなことを言っていたと思う

それを過大解釈してしまっているお坊さんもいるかもしれない

一杯がやがて腹一杯となる

肝臓を患った酒飲みの言い訳である

そんな精進料理は仏教発祥の地インドではなく中国や日本で発達した

野菜とキノコ

自然の恵み

捨てることなく全部使い切るが基本である

植物だって生きている

我々人間はなんらかの命をいただいてこの世に生かされている

自然に感謝して全ての命に感謝して頂くのが精進料理である

出汁の基本はグルタミン酸イノシン酸

グルタミン酸は乾燥昆布など植物系に多く含まれる

イノシン酸は鰹節など動物系だ

このグルタミン酸イノシン酸の相乗効果により日本伝統の出汁は作られる

しかし精進料理ではそのイノシン酸を含む食材が使えない

そこで登場するのがグアニル酸

グアニル酸イノシン酸の代わりとなる成分

そのグアニル酸を多く含む食品が干し椎茸なのである

よって精進料理の出汁の基本は昆布と干し椎茸となる

料理自慢の宿坊では料理によって昆布などの産地も変えると聞く

我々にその違いがわかるかどうかは微妙だろうが

料理を作るのも食べるのも修行である

特に精進料理のメイン料理となる胡麻豆腐は般若心経を唱えながら作られるのだ

これはお寺だけでなく高野山で販売されているお土産用の胡麻豆腐の会社も同じである

食べ方に関しては禅寺のような厳しさはない

禅宗の場合は喋りながらの食事はご法度だ

そのあたり真言宗高野山での精進料理においては普通の旅館のように和気藹々と自室にて頂くことができる

そして希望すればビールも日本酒も飲めるのだ

ただし立場上、「日本酒は般若湯」「ビールは麦般若」と称される

ご飯はお櫃にて運ばれ食べきれないぐらいの量が入っている

残すのは申し訳ないので全部食べようと思うのだが毎回食べきれない

あの部分だけ改善して欲しいとは思う

おもてなしなんだろうが食べきれずに残すのは申し訳ないのである

そんな宿坊の精進料理

やはり高野山観光においての楽しみの一つ

まずは俺が1番最初に宿泊させていただいた熊谷寺の精進料理を

季節は夏、お盆である

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部屋の中はこんな感じで普通の旅館となんら変わらない

ちなみに料金の高い特別室

この時はこの部屋しか空いてなかったのだがお土産もいっぱいもらえてとてもいい部屋だった

 

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夕食だ

これが一の膳

胡麻豆腐に野菜の天ぷらがメイン料理となる

これだけでも十分なおかずだ

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これが二の膳

野菜と高野豆腐の炊き合わせに刺身こんにゃく、酢の物など

とにかく繊細な出汁の味が堪能できる品々だ

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さらに三の膳

ナスのグラタン風な料理にデザートは巨峰乗せメロンといたりつくせりである

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こんな豪華なおもてなし

ヘルシーな食材とはいえ食べきれないのだ

一品一品自然の恵みに感謝して食べる精進料理である

 

翌日の朝6時からは朝のお勤めに参加する

早めに起きて支度をして本堂へ集合

そこでご焼香をするのだ

この時の作法はそれぞれの家の宗派のやり方で問題はない

特別真言宗に合わせる必要もないのだ

朝のお勤めが終わると部屋には朝食の用意がされている

この食事の世話をしてくれるのはお坊さん目指して修行中の学生たちだ

朝食

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朝からこんな食事ができるのはとても嬉しい

メイン料理はがんもどき

切り干し大根など俺の好物が勢ぞろい

何杯でも食べられそうだが、これまたお櫃の中には食べきれないぐらいのご飯が入っているのだ

 

熊谷寺は名前の通り熊谷直実ゆかりのお寺だ

そして浄土宗の法然との結びつきも強いお寺である

俺の家はもともと浄土宗であった

それを親父が個人的に弘法大師不動明王を信仰していたので生前に話をして高野山真言宗に変えたのだ

この時は親父もまだ生きていてのちにそんなことになるとは全く考えてはいなかった

そして俺が高野山へ行こうと思ったのも突然であり

特別にテレビや本を読んで行こうと思ったのではない

ただ漠然と高野山へ行きたいと思い立って予約サイトに出てきたのがこの熊谷寺さんだった

高野山の中でも特に浄土宗と真言宗の結びつきの強いお寺

高野山へは訪れる人はなんらかの理由で空海さんに呼ばれた人たちだと言われているが

これが俺が高野山へ訪れた理由だったのかもしれない

朝のお勤めでは副住職が地獄絵図を前にして面白い話を聞かせてくれる熊谷寺

詳しくはこちらのサイトを

kumagaiji.jp

 

2回目に俺が宿泊させて頂いたお寺が持明院

大小4つの庭園がありどの部屋からも庭が眺められる

境内にはミニ四国88箇所やミニ33観音などアトラクションも豊富である

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まずは夕食から

この時も季節は夏でありお盆である

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熊谷寺さんの時は高いコースだったが

持明院さんでは一般的な宿泊プラン

だいたい1万円ぐらいである

メインは同じく胡麻豆腐と天ぷら

その他野菜の炊き合わせに夏らしくそうめん

そして生麩田楽が嬉しい

もちろんデザートも完備だ

 

朝のお勤めを済ませての朝食だ

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こちらもがんもどきがメインとなる

煮豆と一緒にたんぱく質を補給する

白飯とは別に茶粥もついてきた

俺は朝からこんなに食べきれない

俺は満腹となった

高野山 持明院 公式サイト

 

精進料理は季節で変わる

季節を感じ自然を頂く精進料理

高野山観光において欠かせないものである

 

 

 

そんな精進料理の本でおすすめなのがこちら

土を喰う日々―わが精進十二ヵ月 (新潮文庫)

土を喰う日々―わが精進十二ヵ月 (新潮文庫)

 

 高野山ではないが少年時代を京都の禅寺で過ごした作家の水上勉の本

お寺で精進料理の作り方を教わり寺を出た後も実践している

畑で育てた季節の野菜を材料にして心のこもった惣菜をつくる

まさに土を喰う

この本を読んだら精進料理を食べたくなることだろう