鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

横風マシューズ

2017年ツール・ド・フランス第16ステージ

休息日明けのスプリントステージ

休息日でリフレッシュした選手も多いが

体調を崩した選手も

ジルベールジョージベネットといったエース級の選手が、パリまで辿り着くことなくリタイアとなった

この日のコースは165キロ短い

最初に3級4級山岳を超えて後半は平坦になる

風が吹かなければ何も起こらないステージ

そしてこの日の主役候補の一人キッテルが山を越えることができれば何も起こらないステージ

しかしツールはそれほど甘くはない

スプリントステージとはいえ獲得標高は2000メートル

総合に関わる山岳ステージなら休息日明けは平穏にと言う空気も流れたりするグランツール、この日はスプリントと逃げのステージ

普段アシストをしてる選手たちがチャンスをつかむステージでもある

風は南から強風が吹き荒れている

何かが起こる予感

スタート直後からアタック合戦勃発

なかなか決まらずに集団は3級山岳へ突入

そこからまたアタック合戦の結果

デヘントにシャバネル、新旧逃げ屋を含む5名の逃げができる

そしてこの中にはワンティのデハントも

デヘント、デハント間違えやすいので注意が必要だ

集団はサンウェブがコントロール

今回のツールでサンウェブが狙うのはバルギルの山岳賞とマシューズのポイント賞だ

そしてこの日はマシューズのポイント賞に向けてチームは仕事をすることになる

おそらくはスタートからゴールまで

とりあえずは中間スプリントポイントを1位通過を目指す

そしてキッテルよりもなるべく前で取りたい

そのためにスプリントポイントまでに逃げを追いかけて吸収しなくてはならない

今年は意外なほど山が登れている進化系キッテル

この日も何とかこなすのでは?と予想してたが

サンウェブのペースにキッテルが遅れ始める

これを知るとサンウェブは全開で山を登り集団を引き続けた

どんどん遅れるキッテルを含んだグループ

その中にはブアニも含まれていた

まだ追いかけたい意思のある選手が残っている

必死にローテーションしながらメイン集団を追いかけるも差はどんどん広がっていく

先頭はシャバネルの単独逃げになるがメイン集団もキッテルを潰すいいチャンス

レースはハイペースで進み44キロ地点で、ベテラン逃げ屋シャバネルも吸収

ハイペースなためにその後も抜け出す選手は出てこない

このまま逃げのいない状態でレースは進んだ

相変わらずサンウェブがレースをコントロール

こういった場面を見るとつくづくチーム競技なんだと思う

しかし記録に残るのは勝った選手個人

今サンウェブのアシスト達が全力で仕事してることは我々の記憶にしか残らない

そんな自己犠牲によりエースは勝利をつかむのだ

追走のキッテルグループからは痺れを切らせたブアニ軍団が抜け出す

先頭との差は3分だ

今いかなければ最後の勝負には絡めない

覚悟を決めたブアニがアシストを引き連れて先頭を追い始める

途中でアシストが前から降りてきてジョイント

無謀かと思われたブアニ軍団だが見事に残り56キロ地点でメイン集団への復帰を果たした

中間スプリントポイントがやってきた

グライペル、マシューズ、コロブレッリの争いだが

先頭マシューズで通過

キッテルに対して20ポイントを詰めた

他のスプリンターにはポイント賞獲得のチャンスは、ほぼゼロ

そのためかマシューズにとらせるかのような中間スプリントだ

残り44キロ

キッテルとの差は約6分

ここまできたらキッテルの集団復帰は無い

ゴールが近づくにつれた強風が襲いかかる

時には向かい風

そして時には横風に

突然トレックが仕掛ける

コンタドールのアタックだが全く差をつけることすらできずに不発に終わる

残り20キロ

強烈な向かい風から横風に変わった

するとスカイが先頭に出る

横風分断作戦

ひまわり畑のひまわりが激しく風に揺られている

すごい光景だ

スカイは少しでも総合のライバルを落としてしまいたい

横風の中、ガンガンペースをあげるチームスカ

やがて集団は分断

さらにバラバラになっていく

その中にはDマーティン、マインティーズ、クリストフ、グライペル、ブアニが取り残されてしまう

その差18秒

そしてあっという間に30秒開いていく

そしてさらにその後ろにはコンタドールの姿が・・・

さらに先頭は加速する

風は追い風に変わっている

こうなったら追走はまず追いつけない

逃げ有利な展開だ

残されたスプリンターはマシューズ、ヴァンアーベルマート、デゲンコルブにボアッソンハーゲン

残り2キロ

ここでかつての名スプリンター、モビスタのベンナーティがロングスパートだ

ベテランになり晩年は横風職人として平坦スペシャリストにスタイルを変えたイケメンのベンナーティ

一か八かの作戦だ

しかしこのゴールのためにスタートから仕事してきたサンウェブ

ここで彼を逃すわけにはいかない

残り1キロフラムルージュを通過

アシストと共にマシューズが先頭に立つ

残り400メートルのコーナーでヴァンアーベルマートが先頭を奪還

そのままスプリントを開始する

残り200メートル

ヴァンアーベルマートの番手についたマシューズ

そのマシューズの番手はデゲンコルブだ

マシューズが先頭に出る

大外からボアッソンハーゲンがグングン迫り来る

横一線でゴールラインを通過

手を挙げた選手はデゲンコルブだが、その手は抗議の手

誰が勝ったのか?

選手たちもわかっていない

カメラがマシューズに集まる

写真判定の結果が出た

勝ったのはマシューズだ

この日1番仕事したサンウェブ

見事にマシューズのツール2勝目を勝ち取った

そしてこの日スプリントポイントを合計50ポイント荒稼ぎ

しかもライバルのキッテルはノーポイント

これによりキッテルとマシューズの差は29ポイントに

マシューズ奇跡の逆転ポイント賞に向けてまだまだサンウェブの戦いは続く

 

キッテル介護のためにアシストがいなかったDマーティンは総合を7位に落とし

パンタノ落車のコンタドールは11位に後退した

あれだけ警戒していた横風だが、スカイの攻撃の前に成す術がなかった

街路樹を見てるとかなりの暴風

俺なら半べそかきながら「早くお家に帰りたい・・・」となるところだ

おそらくハンドルを取られる恐怖に自転車から降りてしまうかもしれない

そんなとてつもない強風が勝負を決めた

 

 

今日は総合争いのステージ

2級超級1級超級、下ってゴール

183キロのステージだ

まずは中間スプリントポイントまではマシューズが逃げる

逃げに乗れなければサンウェブが全力で追いかけてスプリントポイントから再びアタック合戦

スプリンターたちは最初の2級山岳で脱落

総合は2つ目の超級山岳で攻撃開始

この日、調子のいい選手が差を広げる

そして逆に脱落する可能性も

バルギルは山岳賞確定のために逃げるかもしれない

バルギルが逃げたらそのまま逃げ切りもある

翌日が登りゴールなために逃げのステージでもあるがかなり登れないと逃げ切れない

総合エースのお供をしなくていいクライマー

総合争いとは関係ないエース

そんな選手が勝つだろう

あとは前待作戦でそのまま言ってしまえ系

スカイなど一人逃げに送り込む可能性もある

調子の悪そうなモントーヤが復活を遂げるステージになる気もするが

優勝は逃げ切りバルギル

2位ティボ・ピノ

3位ウリッシ