鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

逃げた攣ったカルメジャーヌ

2017年ツール・ド・フランス第8ステージ

この日からいよいよジュラ山脈へ

しかし総合系の本番は明日のクイーンステージ

そのために今日はまずライバルの調子を見る機会

そしてステージ狙いの選手は逃げるチャンスだ

今までの平坦ステージはほぼ逃げ切りの可能性ゼロ

ようやくこの日にチャンスが訪れた

3級2級1級と登るが

勝負所はやはり最後の1級山岳

俺の予想はディレクトネナジーの新星カルメジャーヌの逃げ切り

ツール1本にかけているディレクトエナジー

その中でもこのステージで勝てる可能性のある選手は彼だけだからだ

そんなこともあり俺はスタート直後からとにかくディレクトエナジーに注目していた

たまにロットLLユンボと間違えるが

やはりこの日は逃げたい選手ばかり

ようやく激しいアタック合戦が始まった

飛び出したシャバネルがガンガン弾く

ヴァンアーベルマートなど実力者がどんどん逃げに乗ってくる

思い出した!

このステージはシャバネルがオメガファルマの頃に逃げ切ってマイヨジョーヌを獲得したステージだ

そしてお友達で同部屋のピノーとそれぞれ山岳ジャージとマイヨジョーヌを着てホテルの部屋ではしゃいで写真を撮っていた時のステージだ

ちなみにピノーはジロで新城のステージ優勝を阻んだ男だ

レースはかなりのハイペースで進んでいく

とにかく逃げたい選手が多すぎる

決まったかと思ってもサンウェブが逃がさない

スカイはどうでもいいような感じだが

絶対にスプリントポイントまでは逃げを決めさせたくないサンウェブ

意地でもシャバネルたちを追いかける

どうやらマイケルマシューズの中間スプリント狙いみたいだ

そのままアタックと吸収を繰り返して逃げが決まらないままにスプリントポイントへ

スプリンターたちはここが今日のゴールと言っても過言ではない

最後まで残れる可能性のあるスプリンターはマイケルマシューズぐらいだ

珍しく踏み込むキッテル

各スプリンター本気のスプリント勝負

グライペル、マシューズ、キッテルの順番でスプリントポイントを通過した

これと同時に再びアタック合戦勃発

スプリンターチームはもう好きにしてください状態

総合系も最初からどうぞどうぞ状態

ちゃっかり総合を脅かす選手が抜け出さないようにスカイとBMCがチェックする

いわゆる関所みたいなものである

通行手形を持っている者のみが先へ逃げられる

とにかくハイスピードな展開

スタートから1時間半が経過した頃に気がつくと50名ほどが抜け出している

見てる方も選手たちも何が起こったのかわからない

とにかく約50名の巨大な逃げ集団が誕生した

メンバーは結構豪華なメンバーが

そしてその中にはカルメジャーヌも含まれている

実況解説陣も話してたサクソバンク時代のリッチーポートが頭角を表したジロでの50人逃げ集団の時を思い出した

これは逃げ切れるぞ!と思ったがジロの時のように集団はうまく回らない

メイン集団も常に捕まえられるタイム差で追走

これではダメだと逃げ集団の中からもセレクトがかかり

16名ほどが分かれて先頭集団になる

ヤン・バークランツ(ベルギー、アージェードゥーゼール)

グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)

ミカエル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ)

セルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ)

エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)

トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)

ワレン・バルギル(フランス、サンウェブ)

リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)他

すごいメンバーが残った

バルギルが調子よさそうだな

カルメジャーヌは集団後方を走ることが多い

日本の片隅でレース開始からずっと彼を応援している日本人がいるなんてカルメジャーヌは知る由もない

そのあともレースはハイペースで進み

常にアタックと吸収を繰り返す

いつまでたっても落ち着きを見せないこの日のレース

力無き者からどんどん脱落していくサバイバルレースである

メイン集団も常に安全圏へ止めておくようにコントロール

差は広がることも縮まることもしない

2級山岳を超えたところで先頭集団はさらにセレクトがかかる

植物で言えば間引きである

残されたものは

バークランツ、ヴァンアーヴェルマート、パウェルス、バルギル、カルメジャーヌ、ニコラス・ロッシュ、ロベルト・ヘーシンク、サイモン・クラークの8人

メイン集団から3分差

ここにヴァルグレンが単独で追いついてきて9人となる

9人となった先頭集団で最後の一級山岳だ

残り45キロで下を走るメイン集団のスカイがオーバースピードでコースを外れる

フルーム落車か!と思われたが草むらのためギリギリのところで落車回避

ライバルチームもペースダウンしたおかげでフルームたちは無事に集団へ復帰した

先頭集団ではヴェンアーベルマートなど脱落者がで始める

そして調子が良さそうだったバルギルもここで力つきる

カルメジャーヌの逃げ切りが見えてきた

しかしスカイもどんどんペースアップ

引くのは今日もクウィアトコウスキーだ

彼の引きで先頭との差は1分台に突入

勝負はまだまだわからない

1級山岳先頭の逃げ集団、山頂まで残り5キロでカルメジャーヌが渾身のアタック

おそらくシャバネル先輩からのアドバイスもあったのだろう

ニコラス・ロッシュとヘーシンクというエース級の実力派ベテラン達をどんどん引き離していく

カルメジャーヌはヘーシンクから15秒のタイム差を稼いで山頂を超えた

残りは11キロ

そのうち半分は下りであとの半分は平坦かゆるい登りだ

とにかく全開で逃げるしかない

下りでギリギリのところを攻めるカルメジャーヌ

見てる方もヒヤヒヤする

追走のヘーシンクとの差は30秒まで開く

メイン集団とは1分以上の差がある

おそらくほぼ逃げ切り確定

アクシデントさえなければだが・・・

必死に応援する俺

この日だけは完全に睡魔もぶっ飛んでいる

ガンガン走るカルメジャーヌ

下りが終わりゆるい登り返しになった時に事件は起きた

カルメジャーヌが急激にスピードダウン

そして走りながらのもも裏ストレッチ

明らかに足が攣っている

それでも必死に走る

まだまだヘーシンクとの差は開いてる

メイン集団も大丈夫だ

ペースダウンしながら痙攣が収まるのを待つ

そして再び動き出すカルメジャーヌの足

ゴールは目の前だ

そしてついに舌が出た

ベロベロとカルメジャーヌが舌を出している

受け継がれる伝統

ヴォクレールからカルメジャーヌへと

今年で引退のヴォクレールからカルメジャーヌのチームへと変わった歴史的瞬間である

これからは俺がチームを引っ張って行くんだと

強い意志の現れ

そんなベロベロ

これで優勝を確信

もう足の攣りなど関係ない

ただゴールまで走り抜けるだけだ

後方を確認

チームカーとも勝利を確信

しばし足の痛みも忘れて腕をぐるぐる回しながらのグリコポーズ

ツール初出場の24歳

そしてフランス人カルメジャーヌが第8ステージを見事に逃げ切った

同時に山岳賞ジャージと敢闘賞も獲得

ゴール後地面に倒れこみストレッチを受けるカルメジャーヌ

すでに去年のブエルタでステージ優勝はしているが嬉しいツール初勝利となった

そして俺自身も初の逃げ切り予想的中

さすがに3連単とは行かなかったが

やはり逃げ切り勝利の予想的中はかなり嬉しい

まず予想した選手が逃げるかどうかもわからない

そんな中で逃げて逃げて逃げ切ってくれた

今日は俺もお祝いムード

高島屋まで行ってアンリ・シャルパンティエのフランス焼き菓子フィナンシェとマドレーヌを購入

ヴィッテルの水を入手できなかったのが心残りではあるが

そして毎日のようにJスポのスタジオで食べられている羊羹

俺は人生初のとらやのミニ羊羹も買ってきたのだった

今日はお祝いである

レースは2位には粘りのヘーシンク

3位にはメイン集団から飛び出した哲学者マルタン

4位にニコラスロッシュとなった

 

さて今日はクイーンステージ

とにかく最初からギザギザ

おそらく触るものは皆傷つけられる

そんな子守唄のようなステージ

2級3級3級超級超級4級超級下ってゴール

明日はお休み

今日も逃げたい選手は多いだろう

前半からハイペースのサバイバルレース

デマールは生き残れるのか?

調子の悪いものはどんどん振るい落とされる

果たして誰が生き残り山頂を通過するのか?

真の勝負は山頂からの下り

昨日のオーバーランがどこまで響くかチームスカ

今日の予想は

今日も逃げ切りはありそうだが

総合は確実に動く

よほど登れる選手でない限り飲み込まれる

超級がありすぎてどこで動きが出るのか読めないな

これが19ステージとか20ステージなら早めにコンタドールが動くんだろうが

どちらにせよスカイの引きについていけないエースたちは落ちていく

残されるのはフルーム、アル、リッチー、マイカ、キンタナ、遅れてDマーティンそしてゲラントトーマス

やっぱり今日はフルーム

優勝フルーム

2位リッチーポート

3位マイカ