去年の8月のことである
奇妙な事件が京都で発生した
盗難された自転車が再び盗難されたというのだ
警察によると40代の警部補が盗難された自転車を京都市南区の商業施設で発見
そこで警部補は正義感のために犯人を捕まえてやろうと考えたのだ
さっそく彼は部下とともに商業施設での張り込みを開始したのだった
気分は相棒だったのかもしれないな
「俺のことは右京さんと呼べ」とか俺なら部下に対して言ってしまいそうだ
そして100円ショップでティーカップを買ってこいと
さらに部下にはCWUー45Pを買ってこいと
流石に現実は制服での張り込みであろう
しかし制服で張り込めば目立ちすぎてしまう
近くに電柱があれば身を隠すこともできたであろうが、残念なことに商業施設がどんな状況だったのかは記事からは判断出来ない
張り込みの基本は電柱である
大抵の場合は電柱に隠れて張り込む
そして途中で同僚からあんぱんと牛乳の差し入れが来るのだ
しかし近年は電柱を地面に埋めてしまう所が増えた
その為に刑事さんは張り込む場所が無くなり鳥の休憩ポイントが減り犬は小便を引っ掛ける場所が無くなっていくのだ
電柱へ引っ掛けた小便は犬の縄張りを示す
その縄張りが大きければ大きいほどその犬は辺り一帯を支配するボスとなるのだ
だがそんな電柱は常に邪魔者扱いされる
やれ景観が悪いとか通行の邪魔だとか言われては消滅していくのだ
犯人逮捕の為にひたすら盗難自転車を張り込んでいたおまわりさん達だったが
結局犯人は現れること無く夜となってしまったのだ
流石におまわりさんとはいえ24時間働けない
労働基準法が警察にも適用されるのかどうかは知らないが
おまわりさん達だって帰宅を待っている家族や恋人や愛人やペットがいるであろう
犯人逮捕とはならなかったが止む終えず自転車を放置したまま帰宅することとなったのだった
そして翌日
おそらく長期戦に備えて食料なども準備万端だったのかもしれない
愛妻弁当を持参して子供からは「パパお仕事がんばって!」と送り出されたのかもしれない
そんなおまわりさん達は「今日こそは逮捕してやるぞ!」気合いを入れて再び商業施設にやってきたのである
しかし現実は残酷であった
本来その場所にあるべき物が無くなっていたのである
「じ、じ、じ、じじ・・・・」
「ん?どうしました?」
「た、大変です右京さん!!自転車が盗まれました・・・・」
こうやって夜のうちに再び自転車は盗まれたのであった
本来、盗難届けが出されていた自転車を発見した場合は速やかに回収して返還手続きをとらなければならないのだ
決して「犯人逮捕して上司に褒めれちゃうぞ!」みたいな欲は出してはいけないのである
そんなことが許されるのは特命係ぐらいであろう
事件後に警部補は「回収と返還の手続きをとるのを忘れていた」と語ったそうだが
警察は自転車の持ち主に対して謝罪
先月16日付けで、この警部補は本部長注意の処分となり
京都府警監察官室は「指導教養を徹底し、再発防止に努めます」 とコメントした
実に悲しい事件である
おそらく犯人逮捕の正義感から張り込みをしたのだろう
8月と言えば夏、真っ盛り
商業施設には薄着になった若い女の子達もわんさかいて目のやり場に困ったであろう
喉も乾く
脱水症状にならないように水分補給しながらの張り込みだったと予想される
それなのに結果として「本部長注意処分」
やる気が仇になってしまった
おそらく出世街道から外れて農道へと迷い込んだ状況であろう
何が悪いのか?誰が悪いのか?
自転車を盗んだ犯人なのか
それとも自転車を盗んだ犯人を逮捕しようとしたおまわりさん達なのか
おまわりさん達を処分した監察官なのか
俺には分からなくなって来た