鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

地球最後の日にタンドゥールのインドカレー

2017年2月16日

ついにこの日がやってきた

地球最後の日になるかもしれない日

小惑星WF9が衝突するかもしれないと言われている日である

朝から俺は空を見てるが今の所は惑星がぶつかってくる気配は無い

世間はいたって平穏である

いつもと変わらない木曜日

だがみんな心の中ではドキドキしている

今日と言う日が人生最後になるかもしれないと言うことを受け入れて必死に今日を生きようとしている

石原慎太郎も突然記者会見を辞めた

このこともWF9が関係しているのかもしれない

そして俺は朝から何を食べようか?

そればかり考えていた

食べたい物が俺の頭の中でぐるぐる回る

食べたい物がどんどんあふれて来て何一つ決まらない

優柔不断な俺

いくら考えても決まりそうにない

どうする俺?

何食べる俺?

そんな俺の中であるキーワードが浮かんで来た

脳梗塞から復帰しようとしているラモス

暗殺された金正男

ラモスと正男

何年前になるであろうか?Jリーグが開幕した頃にしきりに放送されていたCMがあった

Jリーグカレー

まさお君がカレーを食べるとラモスに変身してしまうというCMだ

当時の俺達は「ラモスになりたい!」と、このJリーグカレーを

毎日のように・・・食べたりはしなかったが

とにかく平成が始まった頃の世間のイメージはまさお、ラモス、カレーなのである

「人生最後にカレーというのも悪く無いかもな」

直ぐに俺の頭の中はカレーで埋め尽くされた

母親が作るカレー、うどん屋、蕎麦屋で食べる黄色い和風カレー、レストランや洋食屋で食べる欧風カレー、本格的なインドカレー、実はパキスタン人がつくるインドカレー、某トッピング商法カレーなどなど実に様々なカレー達が俺の頭の中で立体曼荼羅のように浮かびあがる

今日の昼は外で食べる

なので必然的に家庭風のカレーは却下だ

今から作る時間もない

うどん屋蕎麦屋のカレーと言うのもチェーン店全盛期により近年は減少傾向にある絶滅危惧種的なカレーである

レストランや洋食屋のカレーは悪くは無い

しかし気取っている分だけ値段が少々お高い

しかもカレーなのにがっかりすることも多いのがこの欧風カレー

なんかレトルトでもよかったかな?と思うこともしばしばあるのだ

それだけ近年のレトルトが美味くなってるからかもしれないが

日本では実にオーソドックスなカレーでもある

日本一とも言われる某トッピング商法カレーは俺の口には全く合わないので却下

正直俺は具にトッピングは要らないのだ

後は本格インドカレー

最近はいろんな店ができて来てるがさてどうする?

まだ食べてないキッテにある南インドのカレーにするか?

以前食べたキャンプカレーは未だに口の中にスパイスが残ってる気がするので却下

そんなとき俺の頭の中にある記憶が蘇って来た

「あの店があるじゃないか!」

名駅ミヤコ地下街にある知る人ぞ知る「タンドゥール」

ここのカレーは他では食べることが出来ないカレー

本格派インドカレー専門店と名乗っているが

このカレーが本当に本格派のインドカレーなのか俺には分からない

それは俺が今までに食べたどのインドカレーとも違うからだ

そして本格派カレーならいろんな種類があり、それぞれのカレーに名前がついている

しかしこの店のカレーのメニューは潔く

インドカレーとご飯  750円

野菜サラダ      350円

ビール中瓶      500円

のみである。あとはチャイなどが別のメニュー表に書かれているだけ

とにかくカレーはインドカレーのみ

辛さは基本的には甘口、中辛、辛口だが希望により100倍まで調整してくれるらしい

ご飯は白飯とターメリックライスが選べる

たしか大盛りの注文も可能だ

店内はカウンターのみ10席ほど

厨房にはおばちゃんがひとりだが時間帯によっては二人に増殖する

どうやら店内では調理していない

調理済みのルーとライスをどこからか運んでくるシステムみたいである

それをおばちゃん達が提供する店である

俺は激辛系は苦手なのでいつもの中辛を注文する

そして人生最後のビールも忘れずに注文

ライスはターメリックライスを選択した

まずはビールが運ばれてくる

キリン一番絞りの瓶ビール

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あまり冷えていないがコレが本来のビールの味を引き出す丁度いい具合の温度

俺は最後になるかもしれないビールを手酌で飲んだ

カレーはすぐに出てくる

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ルーとライスは別々である

ライスには黄色い色がついている

これがターメリックライス

いわゆるウコン飯である

俺はカレーポットの中のルーを全部皿の上にぶちまけた

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これがタンドゥールのインドカレー

もうこの時点で俺は早く食べたい気持が抑えられなくなる

既に人生最後の飯になるかもしれないなんてことはとっくに忘れてしまっている

そして大好きな赤い福神漬けすらトッピングすることを忘れて俺は一口食べた!!

「嗚呼、やっぱりこれだなぁ」

1年ぶりぐらいだが相変わらず美味い!!

口の中に入れた瞬間にトマトと思われし酸味が広がる

そしてその次にやってくるのが大量に入れられたタマネギである

タマネギはしっかり煮込まれるのでなくミズミズしいまま食感を残してある

このシャキシャキしたたまねぎの食感がとても・・・・面白いのである

絶妙なるトマトの酸味とタマネギの甘味が合わさった所でようやくスパイスがガツーンと効いてくる

しかし中辛ではそれほど辛くは無い

だが俺にはこれが丁度いいのである

辛くは無いと言っても噂によると20種類のスパイスが配合されているそうで体がどんどん暑くなってくる

冬なのに汗が吹き出てくるのだ

それでいて胃には優しい味がする

なんか体の中が浄化されていくような

胃薬のガスターを飲んだ直後のような気分である

このあたり薬膳カレーにも相当するな

まぁスパイスは薬でもあるし

やはり最後はカレーで良かった

残り僅かな時間をとても元気に過ごせそうな気がするのだ

そして中に入るその他の具材は鳥である

やはりカレーは鳥がうまい

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俺はここで福神漬けをトッピングしていなかったことに気づき慌てて赤い福神漬けを投入した

黄色と赤のコントラストが非常に美しい

白飯なら日本だが

ターメリックライスだとスペインを彷彿させる色合いになる

「キレイだなぁ」

俺は思わずカレーに見とれてしまう

そして合わされるターメリックライスのご飯粒は細長い

炊き加減はかなり固めである

しかし、これがまたこのルーにベストマッチなのだ

「マジでうまいなぁ」

俺はスプーンが止まらなくなる

ビールを飲むのも忘れてパクパク食べてしまう

おっといけない

ビールもグビグビ

「ぷはぁあああああああ」

そして再びカレーを

しかしカレーって食べ物はいったい誰が考案したのだろうか?

子供から大人まで男女問わずに大好きなカレー

その国々で新たな進化を遂げているカレー

そしてどのカレーもこれまた・・・うまいのである

家庭料理の代名詞カレー

それぞれの家庭ごとの味がある

そしてこのタンドゥールのカレーも「ここにしかないカレー」

ここでしか食べられないカレーなのである

ミヤコ地下街

名駅の地下ダンジョンでも端にあり古い地下街だ

となりはサッポロラーメン

この店もまた古き良き昭和の雰囲気を出している

そんな地下街にある「タンドゥール」

ずっとこの味を守り続けて欲しいな

調べた所によるとこのカレーは水を使わずに3日かけて作られるそうだ

いったいどこで誰が作っているのだろうか?

全く謎なタンドゥールのインドカレー

果たして後継者は存在しているのか?

でも、今日という特別な日に、ここのカレーを食べて本当に良かったなぁ

 

さて、まだ小惑星は落ちて来ない

このまま行くと晩飯を食べるまでは生きていられるかもしれないな!

そうなると夜はやはり「ペヤング」である

いつもの「ペヤングの目玉焼きのせ」

これに今日はポテサラも付けよう

味噌汁も付けよう

あとは白飯とタクアン

最高だ

まさに最後の晩餐

 

それにしてもふと思ったんだが

地球が滅びた場合は輪廻転生はどうなるんだろう?

地獄、畜生、餓鬼、人間、天界、阿修羅の六道

この中の人間界と畜生界は地球が消滅したら存在出来なくなるのでは?

そうなった場合他の地獄とかに回されるのだろうか?

それか仏教が誕生する以前の天界と地獄のみのシンプルな構造になるのか?

どちらにしろ六道が崩壊するとかなりの混乱が起こりそうだ

生きるのはツライ

なのでせっかく死んだのに再びどこかで生まれ変わり

また別の人生を歩むのは非常にツライ

そんな輪廻転生から解脱するためにお釈迦様は修行して瞑想した

それにより見事に覚りを開かれ解脱に成功

今はもうお釈迦様はどの世界にも存在しないのである

その代わりとして56億7千万年後に弥勒菩薩がこの世界を救いに来てくれる予定となっている

しかしその予定も小惑星が衝突したらどうなるか分からないのだ

大川隆法氏はお釈迦様の生まれ変わりだと言うが

それを言ってしまっては仏教の全てを否定してしまう

お釈迦様はもう2度と生まれ変わることは無いのである

我々一般人は煩悩の塊である

どうやっても捨てきれない

なので輪廻転生は避けられない

まぁ流石に再び人間にはなれないだろうけど

現代人は畜生すら難しいだろうな

そうなると地獄、餓鬼、阿修羅辺りか・・・・

この辺りは地球という物質的な物が無くても存在してそうだしな

 

ここ数日やたらとTVの画面が乱れる

世界中で隕石の目撃情報もある

今日はあと数時間で終わる

果たして無事に明日の朝を迎えられるのか?

空を見る俺

「今日は月がやたらと大きいな」

「ん?」

「なんかどんどん月が迫ってくる感じが・・・」

次第に周りの人達もこの異変に気づく

「あ、あれは月では無い・・・・」

スマホをチェックしてみる

世界中で大騒ぎになっている

「嗚呼、やっぱりロシアの学者の説は本当だったんだな」

「まだ時間はあるかな?」

何故かやたらと冷静でいられる

俺はおもむろに車を近所のスーパーまで走らせた

スーパーも既に無法状態となっている

俺は寿司のコーナーに行き、一つだけ残っていたかんぴょう巻きを手に取り無人のレジの上に120円を置いた

「レジ袋は結構です」

誰もいないレジに向かって言った

外に出た

多くの人が空を見上げている

誰もがこの現実を受け入れることができない

しかし落ちてくる

小惑星WF9は落ちてくる

俺は先ほど購入したかんぴょう巻きをパックから取り出して右手に持ち天高く掲げた

お釈迦様が誕生して7歩歩いた時のように俺は左手で地を差し示して空に向かい叫んだ

 

天上天下唯我独尊!」

 

この世に偶然で起こる物は無い

そして結果にも偶然はない

物事には全て原因があるのだ

 

「カルマ!!」

 

そう叫んだ俺は右手で掲げていた、かんぴょう巻きのかんぴょうを一気に抜き取ったのであった