鯖棒亭日乗(下)

日常の記録写真と駄文  sababoutei@gmail.com

ミニひまわり

俺はベランダでミニひまわりを育てている

ツールの期間中にベランダにひまわりが咲いたら良いなという思いから園芸屋で種を買い小さなプランターに植えた

説明書には15センチ以上間隔をあけて3つづつ植えろと書いてあった

しかし15センチルールを守ると3カ所しか植えられないのである

貧乏性な俺は自分の中で勝手にルール改正を行なう事にした

「種を捨てるのなら全部植えてしまえホトトギス」と

そして俺はジグザグに植える事にした

やがて発芽した

3つとも発芽したグループもあれば2つしか芽がでなかったグループもあった

そしてしばらく俺は成長を見届けたのである

やがて奴らはすくすくと育ち葉っぱの数を増やして行った

俺は奴らが成長するたびにワクワクした物だがその一方である事を恐れていたのである

そしてついにその時は来た

間引き

植物が生きる為には間引きという行為が必要なのは分かっている

しかし間引くという事は今現在同じグループで寝食を共にして来たものの中からエリートと落ちこぼれに分けて落ちこぼれを処刑するという行為なのである

植物だって生きている

まだ生きている奴を俺は自らの手で処分しなければならないのである

俺自身間引かれる側の人間である

常に落ちこぼれ街道を歩んで来た人間である

ツライ

罪の無い物を処分しなければならない現実に俺は戸惑っていた

だがそれではツールの季節にベランダでひまわり畑という俺のささやかなドリームが実現しない可能性がある

俺は三日三晩悩んだ末に決心したのである

心を鬼にすると

こんなとき弘法大師こと空海ならどうするのだろうか?

お大師様ならきっと全ての植物を助けて全ての植物を元気に育て上げてしまうのだろうと

しかし俺はただの凡人である

否、凡人以下である

そんな俺にそんな人間ばなれした事は出来ない

なので俺は心を鬼にして間引く事にした

明らかに生長が遅い奴がいるグループなら選定するのも簡単なのだが

全員が同じぐらいの生長具合のグループだと誰を選定すれば良いのか悩んだ

悩んだ末俺は適当に間引く事にした

これも運命だあきらめてくれ

来世では必ずキレイな花を咲かせる事ができるから

今は我慢してくれと

そして俺は奴らを引き抜いた

亡骸はオリーブの鉢へと並べた

そして心の中でそっと般若心経を唱えたのである

 

間引いたとはいえ15センチルールは完全に無視されているのである

ミニひまわりは相変わらず狭いプランターでぎゅうぎゅう詰めで生活しているのである

本来ならもっと間引かなければ行けないのだが

俺にはもうこれ以上奴らを切り捨てることは出来なかった

花が咲かなかった時は俺が責任を取ると

俺は腹をくくったのである

 

そしてミニと言いながら結構でかくなるんだな

と良く調べもせずに植えたひまわりを毎日眺めていた

虫がついていないか?

病気になっていないか?

俺は毎日奴らを丹念に眺めていたのである

そして梅雨である

雨がふり俺はついついベランダから足が遠のいていた

水をやらなくていいからである

そして天気になった時に俺は愕然とした

葉っぱが食べられているのである

俺は慌てて葉っぱの後ろを見た

真っ黒になってるのあれば糸を引いてるのもある

何やら白い虫がいっぱい群がっていたり

俺はパニクった

離脱派が勝利したイギリス国民並みにパニクったのである

俺はネバネバと糸を引いてる部分に小さな青虫を発見した

あっちの葉にもこっちの葉にも

俺はお前らに飯を食わせる為にひまわりを育ててるんじゃないぞと

俺は丹念に一匹づつ奴らを確保して100円ショップの小さなプラケースに入れて

草むらに離してやった

ここがおまえらの生きる場所だと言い聞かせて

そして俺は行きつけのホムセンまで車を走らせオルトランを買った

自宅に帰ると俺はさっそく土の上にオルトランを蒔いたのである

それはまるで季節外れの雪のようであった

 

ツールは始まった

少々葉っぱは穴だらけになったが

間引かれていった奴らの為にも元気な花を咲かせてやらなければ

あともう少し

もう少し

頑張ってくれ

 

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